3 俺はナナシのナナちゃん
俺がおにゃのこになったと知って数ヶ月が経過した。
たった今倒した魔物の肉を頬張りながら、今のステータスを見て目標まであと少しまで来ていることに喜んでいる。
俺のステータスは現在、こんな感じだ。
名前/無し
種族/子犬(亜成体)
性別/♀
年齢/生後三ヶ月
体力/66
パワー/73
スピード/90
タフネス/50
魔力/49
レベル/20
経験値/90
スキル
ポケットディメンション レベル1
ステータス閲覧 レベル2
解説
解説
どこにでもいる子犬型の魔物。
経験値が100になると魔物『オオカミ』に進化する。
ペットや使い魔として人間人気が高いが、戦闘力はそれなり。
レベルはRPGでよくあるように、上がっていくほど上がりにくくなったけどそれでも結構強くなったし、経験値ももうすぐ100に届く。
そういえば、今までレベリングばっか考えてて気にしてなかったけど、スキルの解説だけなんでレベル表示が無いんだろ。
『解説はいわゆるパッシブスキルに分類されており、パッシブスキルにはレベルが存在しません』
へーそうなんだー。
それで、スキルのレベルはどうやったら上げられるんですか?
『スキルレベルはスキルを使い続ける、経験値を還元するなどの方法でレベルが上がります』
使い続けることで成長するのはゲームとかでも常識だけど、それはともかく、経験値を使っても成長するなんて、なんて便利なのかしら。
それで、レベルは上がるとどうなるんですか?
『そのスキルの性能が上がり、できることが増えます』
できることが増えるって言ったって、そもそも今できることがあんまり分かんないんだけどな。
ポケットディメンションが四次元袋なのは分かってるんだけど。
因みに、それはポケットディメンションならどうなるんですか?
『現在のレベルでは解説できません』
やってみてのお楽しみってわけか。
『違います』
解説さんが冷たい。
でも、ポケットディメンションって武器にする水や石とかを運んでる時以外はあんまり使わないからいいんだけどさ。
非常食仕舞うのにも便利だけど、放っておくと中で腐りそうな気がする。
「さーて飯食うかー」ってなってしまっておいた肉を出したら腐ってたとか嫌だし。
そもそも、 飯は倒した魔物をその場で食ってるから。味はしないけども。
『非常食をしまっておく場合、防腐処理をしておかなければポケット内で腐敗します』
ほらやっぱり腐るんじゃん。
ポケットディメンションを冷蔵庫代わりに使うのは止めとこう。
腹の中に腐った食べ物を入れるのもさすがに精神的に辛いから。
じゃあ質問タイムは一旦切り上げて、腹も膨れたし一狩り行くか。
大ナメクジ が あらわれた!
フォレストスネーク が あらわれた!
ポイズンスパイダー が あらわれた!
リトルベアー が あらわれた!
歩けば出るわ、魔物の群れ。
因みに全員まとめて、ポケットディメンションの濁流で押し流してやったぞ。
今回のは石もつけて地味に殺傷力と勢いが増してるぞ!
今ので四体分の経験値が入り、ようやく100まで届いただろうな。
解説さーん!経験値だけ見せて!
経験値/109
『進化に必要なエネルギーが貯まりました。魔物「オオカミ」に進化しますか?』
『YES/NO』
もちろん、イエスだ!
『では、これより魔物「オオカミ」に進化します』
手足が光り、体が熱くなってきた。
多分体全体が膨大なエネルギーで発光してるんだろう。
ポケットのモンスターも進化するときこんな感じなんだろうか。
まあ、あれゲームだけど。
これから新しく、少しだけ強い自分になれるかと思うとワクワクする。
ダンスィはいくつになっても強くなることが好きなんですー!
光が収まると、俺は目線が少し高くなっていることに気づいた。
地面とほぼほぼ同じ位置だった目線が少しだけ地面から離れてる。手足は長く、力強くなっているのが分かる。
体高は高くなり、体が大きくなっている。
俺は今の俺の姿を鏡で見てみたいが、それよりもステータスがどうなってるのか気になる。
「ワン!(解説さん!ステータス閲覧お願い!)」
名前/無し
種族/オオカミ
性別/♀
年齢/生後三ヶ月
体力/66→80
パワー/73→90
スピード/90→120
タフネス/50→60
魔力/49→55
レベル/20→1
経験値/109→9
スキル
ポケットディメンション レベル1
ステータス閲覧 レベル2
解説
解説
オオカミ型の魔物。基本的に群れで行動する魔物で、集団で狩りをする。
戦い慣れた固体は魔法を使うこともある。
進化しただけでこんなに強くなれた。すげえな進化。
『進化は経験値という形で莫大なエネルギーを消費しますが、肉体そのものの構造が作り替えられ、強化されています』
体の構造自体が変わって、戦闘向けに作り変わってるのね。
『そのとおりです』
でも、いつまでも名前が無いままなのは不便だな。
まあ、そのうちいい感じの名前を考えるか。
リアルの人間の俺の名前を着けるよりも、魔物としての新しい名前を着けたい。
どうせここは明晰夢の世界なんだし。
なら、リアルのことは一切合切忘れちまってこの世界を謳歌したい。
「ワン!(解説さん!いい感じの名前とかない?)」
『ご自分でお考えください』
そこまで協力はしてくれないのね。
ママン、この人冷たいよ……。
『気持ち悪いですよ』
ひどいっ!
まあ、いっか。
速攻で立ち直った俺は、名前を考える。
なににしようかな。
今の俺は名前/なし、だ。ななしの権兵衛くんだよ。
いや、女の子だからななしちゃんか。
ん?ななし?
その時俺に電流走るっ!
ナナシのナナ。
最高にクールでかわいい名前だな!
ママー、僕、これがいいー!俺は、ナナシオオカミのナナちゃんだ。
いいじゃんこれ。二つ名はナナシのナナな。
「ワン!(解説さん!どう思う?)」
『返答しかねます』
いけずー!