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オオカミ魔物で異世界転生  作者: コインチョコ
27/31

26 魔王には死んでいただきます


「皆、ここはバルログ帝国の魔王バルログのお城だよ!」


え?マジでもう着いたの?

マナちゃんさんは当たり前みたいな顔してて、ロマネスク様は呆れたような、諦めたような何とも言えない表情をしてる。


「本当に着いたのか?」


勇者くんがマナちゃんさんに質問してる。

俺の質問でもあるわ、それ。


「はい、着きましたよ?」


キョトンとした顔でとんでもないこと言い出したぞこのご主人様。


こういう魔王城への旅っていうのは、魔王軍の侵略に苦しむ人たちを助けたり、仲間と喧嘩して仲違いして紆余曲折あってもっと絆が強くなったり、魔王軍の幹部と熱い死闘を繰り広げたり、涙あり笑いありの大冒険の末にたどり着くんじゃないの!?


それがこんな、「転移しました、着きました、終わり」で済んでいいの!?

こんな内容のゲームが発売されたら大炎上間違いなしだよ!


『近道できる方法があるなら、するべきです』


解説さんまともなこと言ってるよ……。


でも異世界に来て、やっとまともに冒険できるとばかり思っていたのに……。なんのために一月も修行したんだよ(※マナにさせられた)


俺の熱い想いは汗に変換されて汁となって目から流れ落ちていた。


「ナナちゃんどうしたの?!どこか痛いの!?」


マナちゃんさんが血相変えて心配してくれているが、痛いのは俺の少年に帰った心だけだ。


まあいいさ、一ヶ月間の修行で強くなったこのナナシのナナの力を見せつけてやるだけだ。


解説さん!俺のステータスを見せてくれ!


『了解』


名前/ナナシのナナ

種族/ハクギンオオカミ

性別/♀

年齢/4ヶ月と3週間

職業/使い魔

体力/360/360

パワー/440/440

スピード/600/600

タフネス/260/260

魔力/390/390

レベル/20/35

経験値/2655

スキル


ポケットディメンション レベル2

ステータス閲覧 レベル3

水流カッター レベル3

魔力光線 レベル2


パッシブスキル

解説



うん、前よりも強くなっているな。これなら魔王とも戦えそうだ(フラグ)


『その能天気さ、見習いたいものです』


ハッハッハ!そうだろ!俺はすごいだろ!


『ほめてはいないです』


「あの、ナナさん、俺もステータス閲覧やってもらっていいかな?」


「あ?あぁ、いいけど?」


解説さんと頭のなかで話してたら、不意に勇者くんに話しかけられてビックリした。けど、俺はクールに乗り切ったぜ。えらい。


『では、彼のステータスを表示します。彼にも特別に見えるようにしましたよ』



名前/空牙武

種族/人間

性別/男

年齢/17

職業/勇者

体力/1200/1200

パワー/350/350

スピード/400/400

タフネス/500/500

魔力/700/700

経験値/3944

レベル/36/95

スキル

剣術 レベル10

魔導防壁 レベル11


こいつ、1月で強くなりすぎだぜ。

たったの一ヶ月間で何倍も強くなってんじゃん。チートでも使ってんのか?勇者補正でもあんのかな。


『勇者という職業には成長速度を上げる効果もあるようです』


そうなんだ。すごいな職業の方の勇者。


「お前、強くなりすぎだろ……。ちょっと引くぞ」


「えぇ!?ナナさんひどくない!?」


「ひどくない」


「ナナちゃん、勇者さま。そろそろ突入の覚悟を決めてください」


「ったく、速くしろよ」


マナちゃんさんとロマネスク様に速く準備するように急かされた。

はい、待たせてすみませんね。


『全く、上司を待たせるなんて、本当に元社会人ですか?』


ピッカピカの一年生だよ!社会のいろはも知らないよ!知ってるけど、使いこなせないだけだけどね!


『落ち着きなさい。彼はすでに覚悟完了状態ですよ?』


「よっし!逝ける!」


自分の顔をバンバン叩いて渇を入れている。


切り替え早っ!行けるの字が違う気がするのは気のせいだろうな。


「それじゃあ、隠蔽魔法もそろそろ効果切れるし、突入するよ!皆!」


「応!やっとか!」


「俺は行けますよ!」


「俺ちゃんはまだ準備が……」


「いっきまーす!」


「聞いてくださいよ!」


素直に心情を吐露するも、マナちゃんさんは聞こえていないのか、事実聞こえてないのだろうね、バッサリ切り捨てた。


魔王の間への扉をロマネスク様がヤクザキックでぶち破る。

金とか貴金属で豪華で美しい愉快な装飾をされた金属の扉が爆発物の直撃を受けたようにへこんで蝶番ごとぶっ飛んだ。


床に転がった扉の厚さを見ると、核シェルターや大手銀行の金庫に使われてるような分厚い金属だった。固そう。


で、赤い炎を纏った巨人が奥の玉座にどっしりと座っていた。

見てるだけで威圧感があり、息が苦しくなりそうな錯覚に襲われる。座っているだけで漂う強者の貫禄。

間違いなく、こいつが魔王だ。


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