20 テンプレ勇者ってよく考えてみたら誘拐と同じな件
マナちゃんさんに、まるで彼氏のように紹介されたクウガ・タケルは、俺を見て目を輝かせて喜んでいる。
少し戸惑ったが、今の俺は控え目にいっても美少女なんだ。
男なら当然、見惚れる。女でも見惚れる。
白髪巨乳のケモミミケモ尻尾娘はお前も好きか?
「おお~スッゲー!本物の犬耳っ娘だ」
クウガ・タケルは小声で言ったつもりだが、俺にはハッキリと聞こえたぞ。
お前も好きか。俺もだよ同士。ファンタジー小説や漫画ではいつもケモミミキャラが好きだったしな、俺。
ケモミミ娘そのものになれた今は最高に幸せだ。
だが、マナちゃんさんの彼氏面してることは許されないぞ(※してません)
自分語りは置いといて、それよりも解説さん、クウガ・タケルくんのステータスを見せてください。
『了解』
名前/空牙武
種族/人間
性別/男
年齢/17
職業/勇者
体力/120/120
パワー/100/100
スピード/130/130
タフネス/120/120
魔力/150/150
経験値/0
レベル/1/95
スキル
剣術 レベル1
魔導防壁 レベル1
解説
異世界の東の国から召喚された勇者の少年。
バルログ帝国の魔王バルログ6世を倒す使命と力を与えられている。
性格は善良で明るいがへたれ。学校では弄られキャラだったらしい。
名前カッコいいじゃん。バイク乗りみたいで。
『忠告しておきますが、彼はそのネタでかなりからかわれていたようですので、本人の前では言わない方がよろしいかと』
ステータス高いじゃん。スキルの魔導防壁が何なのか分からない。
あの宇宙戦艦の波○防壁みたいなもんかな?
『魔導防壁は通常の魔力の障壁と違い、大気中に存在する魔力、防壁に衝突したエネルギーを吸収して作動します。敵の攻撃が強力になればなるほど、防壁の出力、持続時間は上昇します』
敵の攻撃がエネルギー……か。まるで将棋だな。
「あの?大丈夫かい、君?具合でも悪いの?」
脳内で解説さんと会話することに夢中になって、現実の俺は黙りこくっていたために、勇者タケルに心配された。
マナちゃんさんの彼ピッピみたいに紹介されたお前なんかに心配される謂れはねえんだよ!
お前は俺の同士だけど、敵でもあるんだ。
異世界暮らしの先輩として、ビシバシ鍛えてやるからそのつもりでな!まずは解説さんみたく、冷たい態度だ!喰らえ!
「別に。平気だぞ」
「あっ、そうですか、はい」
素っ気ない態度に困惑している勇者タケル。いいぞ、もっと困れ。
マナちゃんさんが見かねたのか、本題の話を切り出してきた。
「ナナちゃん。大事な話なんだけどね、私、タケルくんと一緒に魔王バルログを倒すことになったんだ。ナナちゃんとハルカも一緒だよ」
………おっと、聞いてなかった。なんて?
「え?なんて?」
マナちゃんさんを奪おうとする奴と俺が組むわけないだろ?なあ、解説さん。
『私からすれば、あなたも彼も、彼女には相応しくないように見えますが?』
辛辣っっ!!相変わらず冷たくて辛口だ。まるでハバネロのアイスクリームだ。そんなの無いけど。
マナちゃんさんは、俺の心の準備が整うまで待っててくれた。
そして、再び衝撃的な言葉が飛び出してくる。
「バルログを倒すまで、私、ナナちゃん、ハルカ、タケルくんの4人で組むことになったの」
「ええぇぇーーー!!」
俺の絶叫が王宮に響いた。
『これでは勇者のハーレムグループですね』
そのハーレムに俺が女として加わるとか、嫌なんですけどぉぉ!!
『諦 め な さ い』
嫌だー!
内心嫌がってるのが顔に出てしまっているのか、タケルとマナちゃんさんの表情も渋い。
「神樹の森で穏やかに暮らしてたナナちゃんには、辛い戦いになるかもしれないけど、頑張ろうねっ!」
両手をガッツポーズにして頑張れコールを送ってくるマナちゃんさん。
この笑顔だけであと10年は戦える。
前言撤回だ。俺は魔王バルログを殺るぞ!
「頑張ろうな!ナナちゃん!タケル!」
「あ、うん、そうだね」
「お、おう……」
2人は急に俺がテンション上げてビビってる。
ドン引きされるのはキツいわ。
『単純バカですね。本能と反射で生きているのではないですか?昆虫並みの頭じゃないですか』
隙有らばボロクソに貶してくるスタイル嫌いじゃないぜ。
俺は笑って済ませるけど、俺以外にはやらないでよ?
『あなた程度に言われなくても、やりませんよ。当然じゃないですか』
解説さんはやっぱりツンツンだ。
ブックマークは少しずつ増えてるけど、肝心な本編が書き上げると、書きたいものとは全然違うものに仕上がる……。
修行が足りないのかも……。




