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 ヘケザ侯爵家の屋敷は今時流行りの建築だ。大きな柱が連なる玄関ホールから広いゆったりとした階段の登って二階に舞踏会が開かれる窓が大きく広いバルコニーを備えたホールがある。



 わたくしはここにジェラルドにエスコートされて来ている。


 ダーマッドとは別行動。何やら作戦があるらしいのだが秘密にされている。ちょっとイライラとしたけれどジェラルドが楽しみにしていて、とこっそりと耳打ちしてくれた。わたくしが喜ぶことなのかしら?



 ジェラルドとホールに出ると会場の人々全員がこちらを振り向いた。キャーとかほぅっとかうぉぉぉとか様々なざわめきが立つ。


 まぁわたくしとジェラルドではとても目立つでしょうね。


 元婚約者同士という不思議さもある。



 第一王子のジャスティンは先に来ていた。こちらを訝しそうに、睨むように見ている。余程ジェラルドが気に入らないようだ。この前のダーマッドと一緒の時のように近寄っては来ない。


 次々に招待客が入場してくる。わたくしとジェラルドは招待客ではないがヘケザ侯爵に申し出たところ二つ返事で歓迎された。意外とジェラルドは人気があるのだろうか?


 ジェラルドにエスコートされるのは慣れているので安心できる。こういう場面ではこの王子は卒がない。ダーマッドにわたくしに触らないようきつく言われていたが「エスコートするのに触るなとか無理ゆうなって感じだよね~」と愉しそうにしている。勿論普通に手を取って腰に手を回している。ダーマッドは気にしてるけど、ジェラルドに触られるのは兄にそうされるのと変わらない。



 最後の招待客が入ってくるとふたたび場内がざわめく。

 ゾエ将軍がご令嬢を連れて来た。




 なんと美しいご令嬢か……





 あ、あれはたしかディアンヌ!


 タマル女帝が、わたくしと同じくらいの美女と言っていたのは彼女のことだったのか。



 同じくらいどころかわたくしよりもずっと美しいと思う。わたくしのとても好きな、ふんわり柔和な麗しいご令嬢。男性陣がぽぇーと間抜けな顔で彼女を見つめていた。


 ゾエ将軍の遠縁と紹介されている。彼女は大貴族ドルシア家のご令嬢ということ?


 こちらに向かって来る。ジェラルドが両腕を広げて彼女を抱き締めようとしたが恥じらっている。なんと愛らしい……。やはり何も話さないが優雅にお辞儀をしてくれる。


「ディアンヌ久し振りだね。今宵の君のなんと美しいことだろう。最初のダンスは僕と踊ってくださいね?」


 恥ずかしそうに頷く。ジェラルドはたしか恋人になってほしいと言っていたな。憧れの君だと。


 ぽーっと彼女に見惚れていたわたくしの方をじっと見つめるとやはり恥ずかしそうに微笑んでくれた。




 ……しまった、キュンとした。


 女性相手にこんな、心臓がドキドキとするものだろうか?いけない、好みど真ん中なせいだ……。

 数度お見掛けしただけだが泣きそうな、悲痛な表情ばかりが印象に残っている。微笑む顔のなんと愛らしいこと。





 ディアンヌとジェラルドがホールの中央に出て踊り始めると周りの人々は踊りやお喋りを辞めてふたりを見守った。


 美しいふたりのダンスに会場にいる全員が見惚れていた。



 ひとり、楽しくなさそうな様子のジャスティン王子も、その目はディアンヌをじっとりと追っていた。



 わたくしを見ていたあの気持ち悪い眼差しがディアンヌに移ると思うとそれはそれで腹立たしい。あの可憐な、清らかな女性相手にやめてほしい。









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