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 ジェラルドの部屋は客間から程近いところにある。この辺り一帯の棟が末の王子の宮なのだろう。部屋の中はシンプルで飾り気のないものだ。ジェラルドの見た目からは意外な感じがする。



 ダーマッドとアリーと一緒に訪れるとすでにゾエ将軍が数人の青揃隊と来ていた。ダーマッドの姿に青揃隊が満面の笑みだ。ほんと男にモテる。ゾエ将軍はダーマッドを見るといつもの微妙な顔だ。




「国内にいらっしゃる可能性の方が高いですね」



 甘いマスクのイケメンが恭しく手を胸に当てて報告する。彼が全く頭の上がらない相手、ダーマッドに。


 ダーマッドは今日もヤスミンに身支度されて麗しい貴公子として人々の注目を集める姿をしている。深い青のドレスシャツが淡い茶色の髪に合っていてこれまた凛々しい。


 一昨日のブーツがカッコいい!とヤスミンに伝えたら今日も履かせてくれていた。うん、素敵すぎてつい何度も頭から足の先まで見てしまう。


 タマル女帝の侍女たちがダーマッドの専属になりたい、と言っていた理由がわかってきた。彼女たちが身支度してくれるダーマッドはとても麗しい。ヤスミンがそろそろ妬まれるから他の侍女と交代になると残念そうに言っていた。



 自国では将軍の息子でしかないダーマッドが、まるで王子のように隣国の将軍を従えてる光景は不思議だが、見惚れるほど格好いい。




「どうしてそう思うの?」


「第二王子が国外に出てるのに、連れ出されてる近衛がおりません」


 ゾエ将軍はどの騎士が今現在どこに配置されているか全て調べたようだ。本当に将軍をしているのだな、と変な感心をしてしまう。


「ジェラルドみたいに全く近衛を連れずに出ることはないの?」


「僕が近衛を付けずに出るのはダーマッドの国へ行くときだけだよ。先に護衛を寄越してくれるからね」



 うちの国ではジェラルドのために護衛を用意していた。専属の護衛だが、それは今も変更がない。ジェラルドは婚約破棄されてもまるでうちの王子かのような扱いをされている。後ろ楯となっているようにしか見えない。

 第一王子にはそれも気に入らないのだろう。



「王宮から出ていない方向でも捜索しております」


 ダーマッドがこくりと頷く。


 この国の王城は巨大だ。もともとある数百年は前の土台の城塞に増築がされて、まるで大きな山のような見た目。


 あちこちに(やぐら)や塔があり、その上は美しい濃い青のとんがり屋根になっていた。どこも同じ青の屋根が葺かれているためか無計画な増改築が逆に優雅に見える。お伽噺の挿絵のような佇まい。絵葉書の図柄にしても映える美しい城だ。


 その内部は毎日登城している者でも迷子になりそうな複雑な構造。ジェラルドや近衛の案内なしではわたくしも迷いそう。



「ジェラルドは心当たりないの?」


「どこかに監禁されているなら、ありすぎて……うーん」


 地下にも改築が数百年に渡ってされているため近衛の所持している城内の見取り図にも把握されていない場所がかなりあるらしい。ゾエ将軍が手にしている図面のあちこちを指差しながら抜け道や地下室の存在を付け足していく。


「生まれた時からここにいる僕でも全部把握出来てるわけじゃないだろうけどね。城の地下から大聖堂や王都、個人の邸宅に繋がる通路もあるし」


「城の捜索を勘づかれたら移動させられることもあるかもね」


 ダーマッドとジェラルドがやり取りしているとゾエ将軍がもうひとつ、と付け足す。


「第一王子が参加する直近の夜会は明後日です。ヘケザ侯爵のところですな。ジェラルド王子殿下にも招待状が届いているのでは?」


「来てたかな?僕めったに自分の国にいないからね。なくても大歓迎されるだろうけど。じゃあこの日でシナリオ立てようか。ダーマッド」


 ジェラルドがとても嬉しそうににんまりするとダーマッドが嫌そうに眉をしかめた。





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