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「あ、ジェラルド来た」


「お邪魔するよー、て、えー……」


 ジェラルドが客間に入ってくる。ベッドのカーテンが引かれてわたくしからは姿が見えない。


「グィネヴィア~!大丈夫かーい?」


「気遣いありがとう。大丈夫よジェラルド~」


 見えないだろうけど手を振ってるっぽいのでカーテンの隙間から手を振り返す。



「いいからそっちは!覗くなよ!」


 ダーマッドがベッドの前に立ちはだかるのがわかる。


「……拗れヘタレ束縛男」


 ぽそっとジェラルドが何か呟いたが、聞こえない。アリーのくすりと笑う声が聞こえる。




「ジャスティンが贈ってきたのって、これ?グィネヴィア宛って」


 贈り物は封を解かずにジェラルドを待っていた。あの第一王子からの物はなんだか気持ちが悪い。ダーマッドはそのまま捨ててしまえと言っていたが、それもさすがに気まずい。


 どういう意味の贈り物かを同じ国の人間であるジェラルドに確認してもらう。



 ジェラルドが包みをバリバリと開けている。


「あーネックレスだね、これは……」


「ほら捨てろ」


「ちょっと待て」


 ダーマッドとジェラルドがバタバタしている。そっとカーテンの隙間から覗くと箱の取り合いをしていた。猫がじゃれあってるみたい。


「落ち着けダーマッド。捨てるのはまずい。母上が生前付けていたものだ。おそらくアレだ……」


「王妃が付ける的な?」


 アリーが言うなりダーマッドが箱をぺしーんと投げたらしい。がしゃんと壁に当たってる。



「国宝級ジュエリーなんだから大切にしろよ~」


 アリーとジェラルドが拾いに行く。




「どういうつもりなんだあの第一王子は!」


 ダーマッドが怒ってる!めちゃくちゃ怒ってる!珍しい!見たい!



 そっと覗くとぷんすかと顔を真っ赤にしてる!か、可愛い!


 あれだよね?嫉妬、してくれるのよね?くふふふ~




 しかし、本当にあのジャスティン王子の考えていることがわからない。



「前にもダーマッドに言ったと思うけど、ほらうちの国は恋愛に情熱的なんだよね。ストレートなんだ」


 国王と王妃のためにあんな甘々スペースがあるくらいですものね。ジェラルドも婚約中はずっと激甘セリフを耳に押し込んでくれてたし。


「あんまり、既婚とか、関係ないんだ。不倫はさすがに駄目だけど本気で惚れれば真っ当に略奪するのは当たり前というか」


 つまり、結婚していようと魅力的な異性がいれば口説くのは当然。むしろ恋心を抱いているのにそうしないのはあり得ない、ということらしい。


「ジェラルド、今後グィネヴィアの三メートル以内に入るな」


「大丈夫だよ!グィネヴィアは可愛いけどダーマッドのことも愛してるから。君を悲しませることはしないよ」


「ジャスティン王子がわたくしを口説いてるってこと?」


 このふたりだとじゃれあって会話が進まないので口を挟む。あとちょっと嫉妬も、ある。仲良しすぎだこのふたり。


「うん」ジェラルドが残念そうにため息をつく。「ジャスティンは美女に弱いし理想がめちゃくちゃ高い。世界一美しいと言われてるグィネヴィアと婚約した時から妬まれてるんだよね。グィネヴィアの釣書を自室に持って帰ってたし好みなんだと思う」


「ちょっとその釣書、取り返してこないと」


 ダーマッド、釣書でも嫉妬してくれるのね。可愛い。


 妬まれてたからジェラルドはしょっちゅううちの国にいたのか。刺客を隣国まで送り込んでくるような兄の妬みって。命の危険にずっと晒されてたのだろう。


 知らなくてごめんジェラルド。呑気なだけの王子だと思ってた。



 もしかして、わたくしを誘拐したわりに、婚約だって破談したのにお父様もお母様もジェラルドを相変わらず可愛がっていたけど守ってた、ということなのかしら?お父様たちは全部知ってたの?


 王宮で捕らえていたのも守るためだったのかもしれない。ダーマッド誘拐のあと戻ってきたジェラルドをお父様たちは大切そうに抱き締めてた。とても心配したのだぞと言いながら。





「本物のグィネヴィアを目の当たりにしたら抑えがきかなくなったんだろうね。このネックレスがあるってことは宰相が財務相も取り込んでジャスティンを後押ししてる。予想以上にしつこいかもしれないな」


 どうしよう、と思案しているのか三人とも黙りこんだ。


 続きの部屋からヤスミンが失礼します、と入ってくる。



「あの、すみませんお話聞こえてしまってたんですけど」


「あぁ、タマル様にも相談してみようか」


「……余計こんがらがりそうだ」


 ダーマッドが低い声で嫌そうに言った。低い声も、いい。


「すぐにいらっしゃいます。タマル様もその事を考慮されて、実はすでにご用意をされています」


「「用意?」」



 扉をコンコンと叩く音と同時に数人入ってくる。侍女を連れているのだろう。


「おぉダーマッド!今日も麗しいな!ジェラルドもごきげんよう!見えないがグィネヴィア、加減はどうじゃ?回復にいい薬草茶を持ってきたぞ。ふふ」


「タマル様、すでに用意があるというのは?」


 ダーマッドが率直に聞く。


「あぁ、あのしつこそうなアレの対策じゃろう?簡単じゃ。グィネヴィアと同等の、目の覚めるような美女を用意しよう!」


「……そんなのいるわけないだろう」


 ダーマッド、ちょっとそれ本気で??ふふ、嬉しい!



「あっ、そうか。いるわひとり。グィネヴィアレベルの美女」


「は?」


「じゃろう?さすがジェラルド察しがよいのう。ダーマッド、ほら!これじゃ!」


「!ふざけんな!!!」


 タマル女帝がダーマッドに何か見せてるけど、なんだろう?ここからでは見えない。ダーマッドは何を怒ってるのかしら?




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