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 貴婦人たちが、先に宴の間に来ていたジェラルドをちらちらと振り返る。あぁ、と言った様子でジェラルドがわたくしとダーマッドの方へ来た。にんまりと、とても嬉しそうな顔をしている。……何で?「次はグィネヴィアの番か」てなになに聞こえない、なんて言ったの?



「我が国を美しく彩る華の貴婦人方、こちらはお隣の国のガラン侯爵子息ダーマッドとその奥方のグィネヴィア、僕の大切な友人たちだ。此度は新婚旅行でこの国にきている。ひときわ素敵なもてなしを皆の者、よろしく頼む」


 ご結婚おめでとうございます!とか、なんと素敵なご夫婦なのでしょう、とか口々に祝辞や歓迎の意を示してくれる。が、それ以上に熱のこもった様子にわたくしたちは動揺を隠せない。何が起きているのだろうか。悲鳴と溜息とが押し寄せてくる。泣いてしまっている若いご令嬢もいる。


 ダーマッドはポカーンと口を半開きに、その異様な光景を眺めていた。



 ふと見渡すと若い青年貴族たちも貴婦人方に遅れてこの人だかりの輪を一層膨らませていた。彼らも頬を染めたりぽーっと立ち尽くしたりと……この反応は見たことがある。わたくしを初めて見る男性は大抵そうなる。


 しかし、貴婦人たちの……そうだ、ジェラルドが来たときの我が国の貴婦人たちの反応に似ている。え?まさか、ダーマッドに?女性にモテないダーマッドにキャーキャー言っているの?なんで?ジェラルドにじゃなくて?


 ジェラルドが慌ててわたくしの肩を支えると、ぼーっとしていたダーマッドが我に帰ったようにわたくしを腕の中に取り返す。どうして支えられたのかしら?



「あのように麗しい殿方がいらっしゃるなんて……」

「ジェラルド王子殿下や陛下とは全く違う美しさですわね。見てあの白い肌……うなじとか見るだけでゾクゾクいたしますわ」

「……無理」

「あのように、殿下が仲良くぴったりとくっついてらして、尊い」

「奥様も美し過ぎますわ。あの並び、目の保養のレベル値が壊れてませんこと?」

「かっこいい、可愛い、綺麗、美しい……どれ?全部?とりあえず涙が止まらないわ」


 やっと、キャーと溜息以外を溢し始めた貴婦人方のこの言動……頭が、理解が追いつかない。疑問符が止まらないわたくしとダーマッドをジェラルドがぐいぐいと国王陛下の方へ押して行った。






「おや、ダーマッド殿は、さっきも可愛らしかったがずいぶんとおめかししてきてくれたのだな。なんと美しい。グィネヴィアの美しさは散々ジェラルドからと噂とで伝え聞いていたが、隣国にこのように麗しい青年がいたとは知らなかった」


 太陽神のような眩い笑顔でジェラルドの父王が嬉しそうにわたくしたちを迎えてくれる。


 ダーマッドはさらにポカーンとして言葉を発することも出来ないが、全く気にする様子もなく国王はダーマッドを抱き締めた。さすがジェラルドの父だ。息子とやることがよく似ている。後ろから一際大きな「キャー」が聴こえる。





ダーマッドがしっかと抱き締められている隙に、国王の横へするりと第一王子、ジャスティンが出てくるとわたくしに向かって手を差し出した。


「今宵最初のダンスは私と踊るがよい。グィネヴィア王女」


 にっこりと微笑みを浮かべてわたくしを誘う。え、昼にはあんなにわたくしを睨むように見つめていたのに急に、なに。






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