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 家が決めた結婚でもこの伯母と伯父のように仲睦まじい夫婦になれるのか……なんだかちょっと希望が持てる。わたくしとダーマッドもいつか……なんて、ふふ。


 ついにやにやしてしまう。しまった、ダーマッドが真顔でわたくしを見てるわ。そんなに変な顔してたかしら。それでなくてもこんなに近くにダーマッドがいて口がゆるゆるなのに。


 あー、ダーマッドが隣にいる!なんだか嬉しすぎて叫びたくなってくる。


 いけないいけない、なんか話題を変えないと。あ、



「そういえば、あのディアンヌ様とおっしゃるご令嬢は、どういうお方なんですの?今はどちらに?」



 …………





 あれ?


 誰も反応してくれない。




「ジェラルドとずいぶん仲良さそうだったけど、恋人とか……?」

 ガタッ、

 ダーマッドがテーブルに膝頭をぶつけてる。痛そう。足が長いのも大変ね……て、え?


 とてもこわい顔してる。足が痛いの?あれ?怒ってる?ダーマッドを見上げるとプイッとあっちを向いてしまった。


 ……拗ねてる?え?なんで?




「あ、そうだわ、青揃隊の皆さんに出立の準備させないといけないわ。ゾエ将軍が来ることもお伝えしとかないと。では私はちょっと失礼しますね」


 そそくさとリュシラ伯母とローンファル伯父がサロンから出て行く。え、ちょっと伯母さま?このタイミングで?



「ねぇ、ジェラルド?」


「いや、恋人ではないんだけど。まぁ憧れの君というかなんというか。大好きなひとだよ。僕は恋人になって欲しいんだけどね」


 はにかんでいる?嬉しそうだけど、どこのどなたかは聞いてはいけない空気のようだ。うーん気になる。


 タマル女帝は黙ってとても楽しそうににっこりとしている。ダーマッドはジェラルドをこわい顔で睨み付けている。なんで?



「憧れるのはわかるわ。とても美しいご令嬢でしたもの」

 ガタッ、

 あら、ダーマッド?わ、痛そう……今日は落ち着きないのね……え、わたくしの顔を凝視して、今度はどうしたのだろう?恥ずかし……。


「そうだろう、すごい美人だったろう?」


 ジェラルドがとても嬉しそうだ。よっぽど彼女が好きなのね。タマル女帝はクッションに顔をうずめている。なんで?

 そんな王子をダーマッドが睨んでる、だからなんで?


「ええ、あんな美しい方初めて見たわ。ぜひお友達になれたらな、て。ジェラルドの恋人ではないのね。どういう関係なの?」


「うーん、まぁ……ほっぺにキスくらいの関係かな?」

 ガタッ!

「ふ、ふざけるな!」


 ……わ、ダーマッドどうしたの?

 すっごい怒ってる。そんな怒鳴り声初めて聞いたかも……


「いや、ちょっと寝顔があまりにも可愛くてつい……ごめんごめん」


「ごめんですむか!二度とするなこの変態!」


「ごめんてばぁ、怒らないでぇ。ほら、愛しのグィネヴィアが怖がってるよぉ」



 つまり、ジェラルドはご令嬢に憧れている。それでご令嬢のほっぺにキスした。それをダーマッドがとても怒っている……えーと、



 ダーマッドもご令嬢のことが、好き?



 あり得る。ディアンヌはとても美しかった。わたくしも一目見てときめいたくらい。男なら惚れたっておかしくない……ダーマッドだって彼女と一緒にいたはずよね?


「申し訳ありません。グィネヴィア王女殿下。つい、あの、大きな声を……」



 ……謝るのはそこなのね。まぁ、謝られても、だけど。


 はぁ。ディアンヌ相手にはなんだか嫉妬も出来ないわ。あの清らかな美貌……とても敵わない。


 ああいう心が洗われるような、ふんわり柔らかな佇まいの美しい人を見ると世間で美人だと言われてるはずのわたくしやジェラルドの顔って賑やかで煩いだけのような気がしてくる。


 なんというかつい、助けて守って差し上げたくなる、そういう雰囲気をお持ちだった。


 リュシラ伯母も大事な人だと言っていたし実際とても大切そうになさってたし。庇護欲をそそる、というのだろうか?


 守ってもらう立場の、王女のわたくしがそう思うのだから、王子や騎士なら尚更そう感じるにちがいない……。





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