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結局ダーマッドを見つけられなかった。
「姫様、辺境伯の所へ先回りしますか?」
アリーがわたくしを気遣って指示を伺う。
「……ええ。予定通り」
ダーマッドを奪い返してしまえるならゾエ将軍は必要ないが、このまま見つけることができなければ捕まえて置く必要がある。
ジェラルドがわたくしが忍び込んだことをばらしてしまっているだろうか。
あと少しで結婚式だというのに何もかもめちゃくちゃだ。
大好きなダーマッドの花嫁に、なりたい。
執着すると上手くいかない、と昔誰かに言われたことを思い出す。はぁ。落ち着こう。冷静になろう。
今、辺境伯の所に囚われている青揃隊はゾエ将軍の子飼いの精鋭揃い。逃げ切れず捕まった38名がいる。
ゾエ将軍は必ず彼らを救出に向かうだろう。
隣国での彼の立場を考えても時機を見極めて、とかではなく今すぐ実行するはずだ。拘束を微妙に緩くしておいたら案の定脱走した。影からの知らせでは辺境伯領の方向へ着実に進んでいる。
「姫様、帝国側もゾエ将軍を追っています。おそらく銀獅子隊、帝国の精鋭です。それが約28名」
「まあそうでしょうね。捕まえたいわよね。かち合わないように気を付けてくれるかしら?」
「畏まりました」
帝国の、女帝の隠れ家で見つけた美人。
ジェラルドが守っていた所を見ると、彼の新しい恋人?いや、脱走してまだ日が浅い。でもあれほどの美人なら一目惚れもあり得るからなんとも言えない。
とても好みの美人だった。世界で一番好きな顔はダーマッドだ。彼女は女性なら確実にダントツのいちばんだ。わたくしはダーマッドやあのご令嬢のようなふんわり柔和な美しいひとに弱いようだ。
この騒ぎが落ち着いたらジェラルドに誰なのか聞いて、ぜひ友達になりたいものだ。あの美しさ、ずーっと見つめても飽きないと思う。
「姫様、先程の盗賊たちですが」
「わかった?」
「は、二番手の男が隣国と接触した形跡があります」
「わかったわ、引き続き調べて」
隣国は王家の跡目争いが臣下の対立にも如実に現れている。どの派閥のものだろうか。なんにせよ第三王子のジェラルドはあまり関係なさそうなのだが。




