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 町屋敷を出て街道に向かう。


 途中、守備隊三十騎と合流して急ぎ王都から出た。


 怪しい商隊がこの街道側に出たとの報告があった。ジェラルド王子がまたも変装しているのだろう。


 ジェラルド王子脱走の報告を受けた時はふわふわの天国から一気に氷の張った湖にでも落とされた気分だった。



 備えておいてよかったというべきか……。ショックで何も指示できなかった。想定してあらかじめ全て采配しておいた自分を褒めたい。杞憂に終わってくれればと願っていたのだが。




 そもそもジェラルド王子が仕立て屋と入れ替わって王宮に入り込む自体考えられないことだった。


 けしてグィネヴィア王女にべたべたして憎らしいからと言うわけではなく、あの王子はそこまで聡くはない。王子だけではそんなこと思い付きもしないしましてや実行などとても無理だ。少なくとも私はそう思っていた。破談になれば王女のことは諦めるだろうと。


 誰か王子を唆して担ぎ上げ協力した者がいる。同じ者が王子を逃したはずだ。何の意図があるのか。



 ……まさか王女?



 思いたくはないが可能性は否定できない。今日わざわざ王宮から私を引き離したのも王女なのだ。王宮の構造を知り尽くしている彼女なら簡単に手引きできただろう。


 警備が手薄になったりはしないが、咄嗟の判断に欠けてむざむざ取り逃がしたのは私が居なかったせいだ。



 今日のあの素直な愛らしい振る舞いは私を欺くためのものだったのか……



 いや、先程なにか……


 今夜から夫婦、とか……ちょっとあれなんの話だったんだろう?


 顔を隠していたが耳や首まで真っ赤だったぞ?演技?

 ちらっと見えた瞳がうるうるしていた。


 可愛かったなぁ……




 わ、わかった。色仕掛けで、私を足止めしようとしたの、かもしれない。夫婦とか、そんなこと言えば私が舞い上がって王女にベッタリくっついて離れないとか考えた……のか?


 ジェラルド王子が追っ手から逃れられるように?



 あれ、あの潤んだ瞳をもう少しでも見ていたらやばかった。ばっちり騙されて骨抜きにされてた。


 シャルロッテが入って来なかったら多分ベッドに直行して今夜どころか日暮れを迎える前に夫婦になってただろう。ジェラルドなんて国王に怒られようが放置。



 そうなったらどうするつもりだったんだグィネヴィア王女は……はぁ…無防備すぎて心配だ。今日はいったいどれだけ誘惑してくるんだろう。必要があってのことでも抱き上げるのだって心を引き締めて掛からないと危険なんだ。私が。


 あんなに細くて華奢で柔らかくて猫のように軽くて、なのに女性らしくたわわな……どこを触ったら大丈夫なのやら本当に悩ましい。



 世界一の美姫と名高いのだから自身の魅力に自覚がないなんて言わせないがどれだけ破壊力があるのかは全くわかってないと思う。



 疑惑と嫉妬とでぐちゃぐちゃなところを、可愛すぎる衝撃にくらくらしてグィネヴィア王女に何も言えなかった。説明足らずだったことは反省してる。



 緊急用にシャルロッテに王女の部屋を用意してもらっててよかった。母上は領地に王女を迎え入れる準備で、あいにく女主人が不在だ。客を迎えることができる人間がいない。


 侯爵邸の勝手知ったるシャルロッテなら安心して任せられる。警護はしやすいが殺伐とした塔の中が、あんな綺麗な部屋になってるなんて驚いた。シャルロッテが手を尽くしてくれたのだろう。きっと王女も過ごしやすいはずだ。


 まだ王女には内密だがシャルロッテとは今後のためにも仲良くしてもらったほうが良いことだし…。


 王宮では人の出入りが多過ぎてとても王女を守りきれない。前回のように突然拐われるのは真っ平だ。私の花嫁になってくれると浮かれているときに…。あの時は心臓が抜かれたかと…。


 今頃シャルロッテが色々と説明してくれているだろうか。おとなしく塔で待っていてくれればよいのだが。







 街道を走ると次の宿場街の灯りが見えてくる。そんな目立つところで休んでいるはずはない。



 そう思いつつその手前の、藪があり視界の狭いあたりで違和感を感じる。

 山鳩が啼いていない。貯水地が多いこのあたりは、この時期蛙がうるさいくらいのはず。




 しまった……



「一旦止まれ!」


「うわぁ!」

 先頭の馬が数頭嘶いて横転する。遅かった。






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