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38話



 クエックの雛に連れられてたどり着いた空洞でベルデビッグボアなる蛇型のモンスターが現れた。

 なんとか死闘の末撃破することに成功した俺だったがその結果【勇ましき者】という称号を獲得してしまったのだった。



「【勇ましき者】って勇者の事だよな? ただ蛇を倒しただけなのになんで勇者認定食らってんだ俺?」



 全く持って理解ができなかったが、とりあえずこの称号の詳細を確認するため称号一覧にある勇ましき者の部分をクリックする。





 【勇ましき者】



 守るべき者がいるときに真の力を発揮し、いかなる逆境をも覆してしまう力を持つ者に与えられる称号。



 獲得条件:不明  発動効果:全パラメーターが常時10%上昇する。






「はぁ!? な、なんだこのとんでもない称号は!」



 この称号を持っているだけで全てのパラメーターが10%上昇だと。そんなチート級の称号が許されていいのだろうか。

 トラブルというものは何の前触れもなく連続して降りかかってくるのが常だが俺がこの称号の異常さに狼狽えている最中に更なるトラブルが舞い込んで来た。



『ピン、ポン、パン、ポーン。はーい、フリーダムアドベンチャー・オンラインを楽しんでるプレイヤーのみんなーー。今日はみんなに伝えたい重大な事があるんだ、よーく聞いてね』



 突如として出現したウインドウに映し出されていたのは俺が最初に出会ったNPCであるあのナビゲーターだった。

 最初出会った時とは明らかに態度が違う事から今の彼女の態度が素なのだろう。

 それよりも重大な発表の方が気になるため俺にとっては耳障りな声だが耳を傾ける。



『今日から数えて二週間後に始まりの街で開かれるフリーダムアドベンチャー・オンライン最初のイベント【冒険者たちの武闘会】が開催されるよーー』



「“冒険者たちの武闘会”だと。なんだそりゃ?」



『もうすでに始まりの街の中心部に設営されている円形闘技場コロシアムで行われる予定のモンスターと冒険者の戦いが観覧できる娯楽施設が期間限定で解放されるんだー。モンスターとの戦いに勝てばモンスターの強さに見合った珍しいアイテムや強力な武具が手に入ったりするんだよー。腕に自信のある人はじゃんじゃん参加してねー』



 なるほどこの手のゲームによくあるサブミッション的な位置付けのイベントっぽいな。

 メインの目的ではないから参加する必要はないが、参加すれば今後の冒険者活動で役に立つアイテムや装備を獲得することができる。

 俺の場合フリーマーケットや鉄の剣の一件で注目されてるから今回はパスだろうな、うん。



『ああそうそう、ちなみにデモンストレーションとして一番最初にとあるプレイヤーに戦ってもらうからよろしくねー。それじゃあ二週間後のイベント開始まで楽しみに待っててねーじゃあね、ばいばーい』



 伝えたいことを伝え終えた彼女を映し出しているウインドウが消えた。

 なにが“ばいばーい”だ。ナビゲーターならもっと丁寧な言葉で説明しろってんだ。

 そう俺が心の中で悪態を付いていると、とある一件のメッセージが届いた。

 開けてみるとそこには驚愕の内容が書かれていた。



『いつもフリーダムアドベンチャー・オンラインをご利用いただきありがとうございます。この度称号【勇ましき者】を獲得したあなた様が二週間後に行われる最初の武闘会のプレイヤーに選ばれましたことを通知いたします。ルールは当日に詳しくご説明させていただきますが、基本的にはモンスターと戦っている時と変わりありません。尚このイベントでの出場権は辞退することはできず武闘会開始と同時に強制的に会場へと転移されてしまいますのでご注意を。またイベント期間中に故意にログインしなかった場合は然るべきペナルティもございますのであしからず。それでは武闘会開催までもうしばらくお待ちください。P.S. ちなみに今のあなたのレベルではどうあがいても勝てないモンスターですのでこの二週間しっかりと強くなってくださいね。テヘペロ♪』



「だからテヘペロじゃねえよボケがぁあああ!!」



 なんなんだこのナビゲーターは、完全に俺に照準を合わしに来てるじゃないか!

 シルバー装備の件といい今回の件といい俺がアイツに一体何をしたんだ?ああ?



 しばらくの間このゲームでの俺の扱いの酷さに悪態をまき散らしていたがいつまでもそんな子供じみたことをしていても仕方がないので良きところで切り上げる。

 言っておくが俺は奴を許さない。次に会った時は必ずげんこつを頭にプレゼントしてくれるわ。



 俺が妙な言動をしていたせいなのか若干クエック達の態度がよそよそしくなるも元の俺に戻ったことでクエック達の態度も元に戻る。



「クエクエー、クエ」


「クエークエッ」


「クエクークエ」


「クククエ」


「相変わらず何言ってんのかわからんが、どういたしまして」



 言葉の意味はよくわからないものの首をこちらに向け何度も傾けてくるジェスチャーからお辞儀をしてるくらいは読み取れたため助けてくれた礼を言っている事だけは辛うじて理解できた。

 すると親鳥クエックが急に首を天井に向け大きく「クエーー」と叫んだ。

 叫び声は空洞全体を包み込み俺が下りてきた螺旋状のスロープを伝って森全体に響き渡る。

 しばらくすると地鳴りのような轟音と共に数十羽というクエックの群れが空洞へと雪崩れ込んできた。



「な、ななななんでこんなにクエックが来てんだ!」


「「「「「クエエエエエエエエエエ!!」」」」」



 一羽でもかなりの声量なのにもかかわらずこう何十羽というクエックが一斉に鳴けば耳が痛くなる。

 俺は苦痛に顔を歪めながら両の手で両の耳を塞いだ。

 しばらくしたのち鳴き止んだところを見計らって親鳥クエックにある質問を投げかける。



「おい、その仲間を呼ぶやつって俺がベルデビッグボアと戦う前に使えたよな?」


「クエ? ク、ク、クエェ……」


「とぼけてんじゃねえよ、てめぇこら。それ使えば俺が戦う必要なかったよな?」


「クークークー、クーエークークークー」



 親鳥クエックの首に飛びつきもふもふのほっぺに俺の顔をくっつけながら尋問するも適当な鼻歌を歌って誤魔化そうとする。

 まあ仮にあの状況でクエックの群れを呼んだとしても阿鼻叫喚の地獄絵図になっていたかもしれんがな。

 もう少しだけ親鳥クエックを尋問したかったがあまり突っ込むのも大人気ないと思いそれ以上の追及はしないでやった。



「おいクエック、助けてやったんだからなんかお礼の粗品とかないのか?」


「クエー、クエェェェ……クエ!」


「おっ、なんか思いついたのか?」


「クエー、クエクエクエー」



 何か思いついた親鳥クエックがクエックの群れに向き直ると先ほどと同じように「クエー」を叫んだ。

 するとその場にいた大人のクエック達が次々と卵を爆産していった。



「うおー、クエックの卵だらけじゃないかー。これ貰っていいのか?」


「クエー、クエクエー」


「そうか、なら遠慮なくいただくとしよう」



 そう言うと俺はクエックの卵の一つに手を翳す。するとその場にあった全ての卵が消え収納空間へと入っていった。



『クエックの卵×50個を手に入れました』



 50個の卵か……これだけあれば試作品をいろいろと試せるな。

 プレーンオムレツ、目玉焼き、スクランブルエッグ、あとは小麦粉も手に入れているしホットケーキも作れそうだ。

 新たな料理のレパートリーが増えることに俺がウキウキした気分でいるとクエック達が大口を開けたジェスチャーをしてきた。

 この後残ったおにぎりとステーキがクエック達の腹の中に消えていったのは言うまでもないことだった。



「よし、こいつの素材も回収しとかなきゃな」



 そう言いながら先ほどまで元気に動き回っていたベルデビッグボアの死骸に手を翳し素材を回収する。

 手に入れた素材は鱗が6枚に皮が5枚、そして肉が8個だった。

 鱗と皮はいいのだが、肉って食えるのかな?毒攻撃はなかったから大丈夫だとは思うけど……あ、そうだ。



「そういえば四つ目の職業選択がまだだった」



 あれからいろいろあって忘れていたが新たに職業の枠が一つ追加されたんだった。

 選び損ねていたがとりあえず今現在の候補としては二つある。



 一つは【鑑定士】の職業でもう一つは【盗賊】だ。

 鑑定士はその名の通り未鑑定のアイテムを鑑定し詳細を知ることができる職業だ。

 この先俺の知らないアイテムや武具など様々な物が手に入るだろう。

 その時に一体どんなものなのかその場で詳細が分かればとても便利だし、わざわざギルドで鑑定してもらう手間も省ける。



 もう一つの職業である盗賊は罠解除や敵の気配察知あるいはこちらの気配を消す隠密行動などサポート系のスキルを獲得する事ができる職業だ。

 似た職業として忍者という職業もあったが、忍者の場合罠解除はできず俊敏性と投擲技術、そして隠密行動に秀でていたため前者の盗賊がノミネートされた。



 鑑定か敵感知&罠解除かという二択だな、さてどうしたものか……。

 いろいろ悩みどころではあったが、結局俺は戦闘寄りの職業である盗賊を選択することにした。

 鑑定士も捨てがたかったが最悪ギルドで鑑定してもらえるため罠解除と敵感知能力がある盗賊で行くことにする。



「よし、新たな職業に盗賊を追加します」



 職業選択一覧から盗賊を選択すると新たに職業一覧に盗賊が加わる。

 ちなみに遠距離攻撃が欲しくて魔導師や弓師という選択肢もありかとも思ったが、それはまた次の機会という事で選択肢に入れなかった。

 こうして新たに盗賊という職業を追加し更なる高みへとのぼる俺だった。

 武闘会のこともあるし、この二週間でできるだけ強くならなくちゃな……。








  ※今回の活動によるステータスの変化



 【プレイヤー名】ジューゴ・フォレスト



 【取得職業】


 【剣士レベル21】 パラメーター上昇率 体力+138、力+87、物理防御+88、俊敏性+42、命中+35




 【鍛冶職人レベル24】 パラメーター上昇率 体力+151、魔力+45、力+88、命中+24、賢さ+24、精神力+61、運+6




 【料理人レベル22】 パラメーター上昇率 体力+121、魔力+75、力+50、命中+42、精神力+41




 【盗賊レベル1】 パラメーター上昇率 なし


        


 【各パラメーター】            【補正後(10%)】

 HP (体力)   491 → 498      → 548

 MP (魔力)   190       → 209

 STR (力)    231 → 236(+25) → 260(+25)

 VIT (物理防御)  97 → 100(+21) → 110(+21)

 AGI (俊敏性)   49 → 51(+9)   → 56(+9)

 DEX (命中)   107 → 109(+9)  → 120(+9)

 INT (賢さ)    34            → 37

 MND (精神力) 111 → 111      → 122

 LUK (運)     26            → 29


 



 スキル:時間短縮、鍛冶の心得、十文字斬り、身体能力向上、縮地 



 称号:勇ましき者 

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[一言] 運営がひどい 酷い
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