138話
久々の更新。
感覚で書いてるので、あとで過去の投稿を見て帳尻を合わせねば……( ̄д ̄)。
【ユウトサイド】
「で? なんだって?」
気だるげに足を組んで椅子に座っていると、突然“バン”という机を叩く音が響き渡る。その音を生み出した元凶に視線を向けると、鼻息荒い見知った顔が飛び込んでくる。
「ジューゴ・フォレストです!」
「彼がなんだっていうんだ?」
「あのプレイヤーには、チート行為の疑いがあります。早急に調査すべきかと」
なにを言い出すのかと思えば、あの人がチート? はっ、面白い冗談だが、その前にだ……。
「矢崎部長。それは、僕が作った【VRコンソール】に欠陥があると言いたいのか?(ギロッ)」
「い、いえっ! 決してそのようなことは……」
「だが、君は彼がなにかのチート行為を行ったと疑っている。それは【VRコンソール】に致命的な欠陥があると言っていることと同義だと思うんだけど?」
「うっ」
そう突っ込まれて途端に言葉を詰まらせる矢崎。冗談じゃない。僕が作り出したものに欠陥などあるはずがない。
僕、赤羽悠斗が作り出した【VRコンソール】は、僕が持てるすべての力を総動員して生み出した今世紀最高といっても過言ではない傑作だ。
特に自信があるのは外部からの干渉……つまりはハッキングに対しての対策は完璧であり、そのあまりの緻密なプログラミングは、日本政府の国防システムにも模倣されている。
それほどまでの強固なプログラミングを紐解き、新たなプログラムを書き込むなど不可能に等しい。だが、この男。それでもあの人がなにかのチートを使ったと疑っている様子だ。
「でも、おかしいじゃないですか! ログインID77777の不正取得を行い、その特典であるシルバー装備を入手。初期のフィールドでの出現率がたった0・025%しかない【ゲッケイジュ】を不正に入手しています。そして、その後これまた出現率がゲロ低い【魔結晶】を獲得……」
「ゲ、ゲロって」
矢崎の表現方法が奇抜過ぎて話の内容が入ってこないが、確かに客観的に見ると、あの人がやってきたことはかなりチート染みてはいる。だが、それでも彼がチート行為を行っていると断言はしない。
なぜならば、不正プログラムを使ってチート行為を行っている可能性と超々低確率の出来事を連続で引き当てている可能性を天秤にかけた場合、前者よりも後者の可能性の方が高いからである。
それほどまでに己の作ったものに自信があるということであり、それが破られることは万に一つ……否、億に一つもない。
では、もしあの人の周りで起きている数々の奇跡がチートによる不正でないとするなら、彼の周りで一体なにが起こっているのだろうか?
そんなことを考えていると、突然奇怪な音が部屋に響き渡る。
――クチャッ、クチャッ。
それはなにかを咀嚼するような音であり、そんな音を良くまき散らしている人物に心当たりがあった。案の定というべきか、それは僕の大学時代からの後輩だった結城響華である。
相も変わらず気だるげな表情を浮かべており、それがなんとも腹立たしくあるが、本人は優秀な人材であり、無下にすることもできないという“やる気のない有能”である。
「さっきから聞いてたけど、ざっきーの言ってることっておかしくないっすか?」
「誰がざっきーだ! 私の名前は矢崎だ!! お前が妙なあだ名をつけるせいで、イライザがそれを真似して私がざっきーと呼ばれるようになったんだぞ!!」
「そんなことはどうでもいいのだよっ! そんなことは! 重要なのは、さっきざっきーが言ってたことっす。あの言い方だと、先輩が作ったものに欠陥があるって言っているようなものだってわかってるっすよね?」
「……」
響華の追及にバツの悪そうな顔を浮かべつつ、矢崎は押し黙る。矢崎本人も、自分が口にしたことがそういう意味を多分に含んでいるということに気づいており、だからこそ彼女の言い分に反論できないのだろう。
そして、彼が反論できないことをいいことに、ここぞとばかりに彼女は言いたいことを口にする。
「そりゃあ、先輩だって完全無敵の超人じゃない。学生の頃はよく寝坊して授業に遅刻してきたし、数学の授業なのに間違えて物理の教科書を持ってくるし、あたしのことを女として見てくれないし、足も臭いし屁も臭い」
「おいっ」
最後まで黙って聞いていれば、言いたいことを言ってくれる。ここは他の人間に勘違いされては堪らないので、反論をしておくとする。
「なに嘘ばかり言っている。遅刻してきたのも、教科書を間違えたのも、足も屁も臭いのも、全部お前のことだろう。唯一合ってるのは、お前のことを女として見てないということだけだ」
「むきぃー」
そう指摘すると、まるで猿の如き奇声を上げるような反応を響華が見せる。僕と彼女の信用度は天と地ほどの差がある。どちらの言を信用するかは言うまでもなく、響華に白い目が集まっていった。
味方がいないことを悟った彼女は、まるで先ほどのことをなかったこととして話題を変えた。
「とにかく、そこまでざっきーが疑うのなら、調べてみればいいんじゃないっすか?」
「なに?」
「だって、現時点で例のプレイヤーがチート行為をしていないっていう明確な証拠ってないじゃないっすか。強いて言えば、先輩の作ったプログラムが完璧っていうものだけであって、実際にチート行為を確認したわけじゃないっすよね?」
「そ、それは」
響華の言葉に矢崎が言葉を詰まらせる。彼女の言は正しく、確かにあの人が起こした内容はチートを疑うに足り得る内容ばかりだが、実際にそれがチートを使って引き起こされたという証拠を掴んだわけではない。
確率とは収束するものだ。サイコロを振って一が五回連続で出続けることもあれば、それ以外の出目が出続け、一がまったく出ないということもあり得る。彼のチート染みた内容もそれと同じことだと僕は考えている。ただちょっとだけ……否、かなり運が良いだけなのだ。
「そうだな。矢崎部長の言葉にも響華の言葉にも一理ある。であれば、しばらく彼のプレイを監視して、彼が本当にチート行為を行っていないか調べてみてはどうだ? そうすれば、彼が本当にチート行為を行っていないことを嫌でも理解させられるだろう」
「わかりました。そうさせていただきます」
「ということで、響華。おまえも矢崎部長の下に入って手伝うように」
「ちょ! な、なんであたしもなんすか!? 言い出したのはざっきーなんすから、ざっきー一人でやらせればいいでしょう?」
「矢崎だ!!」
一人のプレイヤーだけに集中できるとはいえ、常にチート行為を監視し続けることは矢崎一人では限界がある。それに管理職である彼にそれだけをやらせるのはあまりに非効率的であり、当然普段の業務も行ってもらうことになる。どのみち手足となって動く部下が必要なのだ。
「おまえ、僕に借りがあったよな?」
「……な、なんのことっすか?」
「20XX年六月二十二日、午後十七時三十六分。しつこいナンパ男から恋人と偽って救い出してやった」
「うっ」
「20XX年七月十九日、午前十時三十一分。大学のレポートが提出されてなかったことによる補講授業の参加に必要な教材をわざわざ大学に届けてやった。その授業に出れなかったら、単位を落としていたな」
「……」
「20XX年三月三日。午後十四時二十三分。ひな祭りの最中、五人囃子の真ん中の人形の首が取れて、このままだと親に怒られると泣きついてきた。僕が即席の裁縫で人形を修繕して事なきを得た。まだまだあるが、全部言おうか? それとも、矢崎部長の手伝いをするか?」
「……手伝います」
僕の言葉に、バツが悪そうな顔を浮かべつつ、響華がそう答える。普段から僕に迷惑をかけていることは本人も理解しており、今まで散々世話になってきたし、してきたつもりだ。そのうちの一つを使って僕のために一肌脱いでも罰は当たるまい。
具体的な日付と時間を覚えているのは、少々狂気染みているが、具体的に言わなかったとき「何時何分何秒、地球が何回回った時?」という今時の小学生ですら口にしないようなことを言い出した過去があったため、それ以降は覚えている限りだが、詳細を伝える癖がついてしまったのだ。
「じゃあ、これからのイベントを乗り切るため、各々頑張ってくれ」
これで話は終わりとばかりに周囲にそう声をかけた僕は、部屋をあとにした。部屋を出て行く背後から、矢崎と響華が喧嘩している声が聞こえてきた。だが、どうせくだらないことだろうと結論付け、僕はそのまま部屋を出て行った。
さて、彼が本当にチート行為をしていないかどうか、結果を楽しみに待とう。
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