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まったりのんびりVRMMOをプレイしたいのに他の連中が俺を放っておいてくれない  作者: こばやん2号
第十三章 大災害の始まり、ゴブリン軍との戦い!
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135話



【パーティーリーダーサイド】



 ゴブリンクイーンとの戦いに勝利し、その足で大空洞の外へとやってきたハヤトとレイラの二人は、ダメージが通るようになったジャイアントパワーゴブリンの足止めをするべく、元のパーティーメンバーがいる場所へと向かおうとしていた。



「それにしても、あの鳥のモンスターかなりのスピードだったな」


「ええ、今度あんなタイプのモンスターを相手にしなければならないことを考えれば、一匹くらいは仲間にしておきたいところね」



 別れ際にハヤトがジューゴに同行していたクーコについて話し始める。トッププレイヤーの彼から見ても、クーコの持つ機動力は目を見張るものがあり、能力自体もプレイヤーと比べても遜色がない。それについてはレイラも同意するところであり、彼女の言った仲間にしたいというのは彼女の本音でもある。



「だが、ジューゴの話ではテイムしたわけではなく、あのモンスターの意志で付いてきたらしいぞ」


「あたしもこのゲームをやっていてモンスターのテイムの話は聞かないから、テイマーはいないのかと結論付けていたけど、あれだけプレイヤーに懐くモンスターがいるということはそういた類の要素は少なからずあると見ていいわね」



 彼らも未だこのFAOについての情報をすべて網羅したわけではない。寧ろ、まだ知らないことの方が多く、すべては検証を行っていかなければならないのだ。



 現在もプレイヤーたちの手によって様々な検証が行われており、そういった情報が掲示板では飛び交っている。



「まあ、そういった検証は検証組に頑張ってもらうとしてだ。俺は持ち場に戻る」


「そうね。それじゃあ、お互い頑張りましょ」



 今ここで話し合っていても解決しない問題は他の誰かに丸投げという形にして、二人はそれぞれの戦場へと戻る。そして、ジューゴがゴブリンエンペラーを倒すまでゴブリンたちを大空洞へと近づけさせない仕事に徹するのであった。



 余談だが、勝手に独断で先行した二人のパーティーメンバーたちにお小言を頂戴したのだが、常に先頭を走っているプレイヤーに注目するのは同じプレイヤーとして当然であり、目を離した隙にどんな行動を取るかわからないという強引な理論を展開してメンバーの言葉を黙殺したのは言うまでもない。



 とどのつまり、ハヤトもレイラも常に前を走っているジューゴが今度はどんなことをするのか注目しているのである。人とは、自ら先頭を走るよりも先頭を走る人間を追い掛ける方が気が楽だったりする生き物なのである。






【?????サイド】



「以上が報告の内容となります」


「で、あるか」



 ジューゴがゴブリンエンペラーを撃破された情報は、何者かの耳に伝えられた。



 厳かな空間にぽつりと玉座があり、そこに一組の男と女がいる。ただ、二人が何者であるのかその姿ははっきりとはわからない。だが、報告を受けた男は明らかに眉間に皺を寄せ、その結果が男の期待したものでないことが十分に伝わってくる。



 男は、脚を逆方向に組み替えると、太ももに肘を置きながら顔を支えるようにして拳を当てる。そして、少々場違いな声色で言葉を発する。



「またダメだったか。なかなか上手くいかないもんだな」


「それは仕方ないでしょう。我々が直接手を下してはならないという神からの通達がある以上、少々回りくどいですが、こういった策しか取れないのです」


「だからといって、五百年に一回しか手を出しちゃダメって、明らかにこっちサイドに不利な条件だろう?」


「ですが、それくらいのハンデがなければ、お楽しみが無くなるとかなんとか言って、神との取り決めであなたが言い出したことではありませんか」


「そ、それはそうなのだがっ。ま、まさかここまで人間どもが生き残るとは思っていなかったんだ。仕方なかろう」


「それでも、ご自分の口にされたことには責任を持つべきかと私は思いますが……」


「うぅ、わかっておるわ!」



 女の指摘にバツの悪そうな顔をする男だったが、女の言葉の通り神との間で取り決めた内容に意見を出したのは男自身であり、両者が合意の上で締結された内容であるため、今更取り決めの内容を変更することもできない。



 それがわかってはいる男であったが、想定していた以上に時間が掛かっていることにさすがに気の長い男でも焦りが出てしまっている様子だ。だが、決まってしまったものは決まってしまったものであるため、このまま続けていくしかないのだ。



 それがわかっているにもかかわらず、まるで子供が我が儘を言うかのような男の言動に、女は冷ややかな目を送っている。その視線に男も気付いており、そのことを指摘すればさらに呆れられるため、敢えて好きにさせている。



「とにかくだ。次の計画を進めていくとしよう」


「そう言うと思いまして。すでに配下どもが動いております」


「おお、さすがだ。それで、上手くいきそうなのか?」


「私どもとしても、なにぶん初めての試みですので、今回ばかりはやってみないとわからないというのが正直なところですね」


「で、あるか」



 女の言葉に、男は思案顔で何かを考えている。どうやら、大災害の他にも何か企んでいる様子で、すでに計画が始動しているという女の意味深な言葉もあることから、何か良からぬことがまた起こりそうな予感がしている。



 神との取り決めなどという荘厳的な言葉があること考えれば、男たちがこの世界で絶大な力を有していることが窺える。だが、彼らが表舞台に出てくるのは時期尚早であり、FAOの運営も彼らの存在をプログラムとして組み込んではいるものの、実際にプレイヤーたちの前に姿を現すことはない。少なくとも、現時点では……。



「とりあえず、その計画の出来高次第で神たちが俺たちをどう扱うかが決まってくるだろう。失敗は許されんぞ?」


「わかっております魔王様。これは、我ら魔族がこの世界で表舞台に立てるかどうかという神々に与えられた試練でもあります。必ずや成し遂げてみせましょう」


「うむ、良きに計らえ」



 魔族……それは、人族とは相反する邪悪な存在であり、すべての生きとし生けるものの天敵でもある。その力は圧倒的で、魔族一体で他の種族数万の武力を圧倒するほど強大な力を有している。



 だからこそ、神は魔族の王である魔王とある取り決めを行った。表舞台に出ない代わりに、五百年に一度魔族による間接的な侵攻を認めるというものだ。



 だが、その長い歴史において魔族が人族に何らかの打撃的な被害を与えることはできなかった。そして、そんな世界にある転機が訪れる。外の世界からやってきた冒険者……所謂プレイヤーたちである。



 彼ら彼女らを本能的に脅威とみなした魔王……玉座に座っている男は、神々との協定を破ってある行動に出ようとしていた。尤も、すべてを見通している神々もまた魔王の行動に気付いており、場合によっては魔族をどう扱っていくかが今回の一件で決まるといっても過言ではなかった。



 かくして、大災害を退けたプレイヤーたちであったが、それは新たな騒乱の幕開けとなる出来事に過ぎなかったということに気付かされることになるのである。

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