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まったりのんびりVRMMOをプレイしたいのに他の連中が俺を放っておいてくれない  作者: こばやん2号
第十三章 大災害の始まり、ゴブリン軍との戦い!
133/151

120話

いよいよ、戦いが始まる……



 00:01:00……



 00:00:59……



 00:00:58……



 00:00:57……



   ・

   ・

   ・

   ・

   ・



 00:00:04……



 00:00:03……



 00:00:02……



 00:00:01……



 00:00:00……




 【Quest start!!】



 クエスト開始までのタイマーが零になり、待ちに待った戦いの火蓋が切って落とされる。人によっては“とうとう”という者もいれば、“ようやく”という者もいてその感想は千差万別であるが、全てのプレイヤーに言えることがあるとすればその戦いを楽しみにしていたということだろう。



『GYAAAAAAAAAA!!!!!!』



 数千、数万、否、それよりもさらに多くのゴブリンの咆哮が平原に響き渡る。その咆哮をきっかけに十数万といううねりが押し寄せてくる光景が目に飛び込んでくる。それはまるで自分だけが非現実の中にいるような錯覚を五感全てに伝えてくるが、一人のプレイヤーの号令によってそんな妄想から引き戻された。



「弓隊、矢を番え! いい、よーく引き付けて……っ、放てー!!」



 彼女、レイラの号令によって、弓をメイン武器としているプレイヤーたちの矢が一斉に放たれる。放たれた矢の一本一本の殺傷能力自体はそれほど高くはなく、精々が牽制程度にしか使えない。だがしかし、それが数万人という規模の人間が一斉に放った矢であれば話は別だ。



「グガッ」


「ゲビョッ」


「グギィ」



 前衛の頭の上を弧を描くようにして飛来する矢は、差し詰め矢の雨である。数万本という矢が、避けることを許さないとばかりに降り注ぐ光景は仮想現実といえども圧巻の一言に尽きる。そういった光景はテレビやアニメなどでよく描写されてはいるが、実際にその目で見てみるとやはり迫力が段違いだ。



 永遠に続くのではないかと思えるほどの長い間、矢の雨に晒されたゴブリンたちの末路といえば……その骸を大地に横たえるだけだろう。



「ち、さすがにこの数のゴブリンじゃ弓では倒しきれないわね」


「おいおい、それができたら苦労はないぜ」



 レイラの舌打ちとともに吐き捨てた言葉にハヤトが反応を示す。彼女とて、十数万という大群を数万本とはいえ殺傷能力に欠ける矢で一掃することは不可能だと理解している。しかしながら、初手で放った矢で与えた敵軍の被害は決して多くはなかった。たかだか数千匹のゴブリンがやられたとて、後方にはまだまだ後詰めが控えているのだ。



「今度はこっちの番だな。魔導隊、砲撃準備……発射!!」



 今度はこちらの番だとばかりに、ハヤトの号令が戦場に響き渡る。彼の号令によって魔法を使えるプレイヤーたちがそれぞれ得意な魔法を放っていく。先ほどの矢による攻撃と同じく、平原に魔法の雨が降り注いだ。



 彼らが放った魔法の多くが、単体にダメージを与える類の魔法ではなく広範囲に渡って被害をもたらす魔法が使われている。こういった大軍対大軍の戦いにおいて重要なのは、いかに多くの敵軍に被害を与えられるかに掛かっている。



 様々な属性の広範囲魔法が宙に舞い、敵軍に着弾し確実に被害を広げていく。その効果は弓矢の比ではない。だがしかし、それでも数の暴力というものは恐ろしいものでゴブリン軍に対し有効打とはなり得てはいなかった。



 幾万もの矢と魔法が敵陣へと降り注ぎ確実に被害を拡大させていくものの、大した戦果は上げていない。しかしながら、矢と魔法の雨により17万という膨大な数の大軍にも少なくない被害が出ている。



「ジューゴ、もうそろそろ敵の遠距離攻撃の射程内に入る頃だ」


「てことで、最後の号令よろしくね」


「……解せぬ」



 初手の攻撃を終え次の戦況に移ろうとした時、役目を終えたハヤトとレイラが俺にバトンを手渡してくる。ぶっちゃけたところ、これほどまでに受け取ることを拒否したいバトンもないのだが、状況的にそうも言っていられないので俺は俺の役目とやらを果たすことにした。……この戦いが終わったら、絶対まったりのほほんとしてやるからな!!



「クーコ、デカくなってくれ」


「クエッ」



 未だに肩で寛いでいたクーコに声を掛け、元の騎乗できる大きさにまで戻ってもらう。それを見たプレイヤーたちが何事かと騒めきが起きるが、それを黙殺しクーコに跨ると腰に下げた剣を抜き天へと掲げる。



「聞け、勇敢なる冒険者諸君! いよいよ、ゴブリン軍本隊との全面対決である。難しいことは言わない、死力を尽くして戦え! これより我ら修羅に入る!!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』



 俺の宣言により今まで以上の雄叫びが響き渡る。士気もかなり高くなっており、血走った目で今か今かと構えているプレイヤーも少なくない。



 ゴブリンの軍勢がもう目と鼻のすぐそばへと迫ろうとした刹那、俺はあらん限りの大音量で叫んだ。



「全軍、突撃ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」



 そう叫ぶと同時に、俺はクーコの胴体側面部を足で叩き突撃の合図を出す。それを受け取ったクーコが「クエエエエエエ!!」という気合の咆哮と共に尋常でないスピードで疾走して行く。



 後方のプレイヤーたちを置いて一人突出する形となってしまったが、クーコの走行速度をあらかじめ想定している俺にとっては何も問題ない。むしろかえって好都合なくらいだった。



「これなら、誰も巻き込まずに済みそうだ。赤きマグマよ、全てを飲み込め! 【ラヴァウェーブ】!!」



 火属性魔法の中でも上位と評される超広範囲殲滅魔法、その名もラヴァウェーブ。数千度という高温のマグマがまるで津波のように敵を押し流す強力なもので、説明を聞くだけでそれの威力がどれほどのものであるかは想像に難くはない。



 骨すらも残らないほどの大波は、瞬く間にゴブリンたちを飲み込みその体を灰へと変えていく。そんな強力な魔法ではあるが、その範囲も一人のプレイヤーが放った魔法としては広くはなく、攻撃範囲は精々三十メートル程度だ。



「だが、別の効果はあったようだな」



 俺が放った魔法で倒したゴブリンの数は三百匹程度だったが、圧倒的な力を持つ見ただけでも強力なマグマという存在にゴブリンたちの進軍が一瞬緩んだ。



「ならば、お次はこいつだ。青き氷よ、全てを凍結させろ! 【アイシクルブリザード】!!」



 絶対零度と呼ぶべき凍てつく氷がゴブリンたちに襲い掛かる。その範囲はラヴァウェーブよりも広くの五十メートルという広範囲だ。何物をも凍らせる氷は、立ちどころに相手を氷漬けにしてしまう。



 そして、氷漬けになった対象は周囲の温度差によって元の形を維持できず崩壊し粉々になっていく。この魔法により、さらに五百匹のゴブリンが戦場からリタイアすることになった。



「クエ!」


「わかってる。はあっ! こっから上位種になってくるか」



 クーコの警告に剣を振るう。そして、地面に折れた敵の矢が落ちた。ゴブリンアーチャーと呼ばれる通常のゴブリンよりも強力な上位種の一体による攻撃だ。



 現時点でのゴブリン軍の被害は二万匹強にまで膨れ上がっており、そのうちの九割九分が通常のゴブリンである。しかし、裏を返せばまだ上位種はほとんど健在でありここからが正念場といっても過言ではない。



 現に俺の周囲を取り囲んでいるゴブリンたちは、ゴブリンウォーリアーやゴブリンメイジ、そして先の矢での攻撃をしてきたゴブリンアーチャーがほとんどだ。



「さて、クーコここから気を引き締めて行くぞ」


「クエッ」


「……ボクもジューゴのためにがんばる」



 クーコに注意を促したその時、そこにいないはずの人間が声を上げた。声のした方に目を向けると、そこにいたのはゴブリンを切り伏せているルインの姿だった。

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