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11話



 街に戻った俺はそのまま冒険者ギルドに直行した。目的は採取した野草の鑑定を依頼するのと本来の目的であったクエストを達成したことの報告をするためだ。

 両開きのスイングドアをゆっくりと開けギルドに入る。時間帯が夜のためだろうか、人はまばらで少なかった。



「とりあえずクエスト報告をするかな」



 そう呟いた俺はクエストを受けたカウンターに向かう、そこにいたのは最初にギルドに登録した時に対応してくれた職員の女性だった。

 女性は俺ににこやかに微笑みかけると柔らかな口調で問いかけてきた。



「お帰りなさいませ、ジューゴ様。クエストの報告でしょうか?」


「ああ、受けたクエストを達成してきたので確認してください」


「畏まりました、ではカードの提示をお願いします」



 クエスト受注の時に発行されたカードを女性職員が受け取ると、何やら確認している。

 そして、しばらく沈黙の時間が続いたが長くは続かなかった。

 俺から受け取ったカードを一通り確認した女性はこちらに視線を戻すと結果を説明し始める。



「はい、確かにオラクタリアピッグ三匹の討伐を確認しました。 お疲れさまでした。こちらクエスト報酬の300ウェンになります。」



 職員の女性が丸い釣銭受けに乗せられた、300ウェンを差し出してきた。

 それを受け取ると次の手続きに移った。



「ジューゴ様、今回のクエストで手に入れた素材などがございましたらギルドの方で買い取っておりますがいかがいたしましょう?」


「ではオラクタリアピッグの肉を3個と皮を4枚買い取っていただきたいですね。あとは採取で手に入れた野草の鑑定を依頼したいのですが、お願いできますか?」



 職員の女性は「畏まりました、こちらへどうぞ」というと鑑定の看板が掛けられたカウンターに案内してくれた。

 カウンターで対応していたのは男性職員だったが、どうやら女性職員が並行して対応してくれるようだ。

 そう言えば、俺ってこの人の名前まだ知らないんだっけ? これからお世話になるだろうし、聞いておくかな。



「申し遅れましたが、私はこの冒険者ギルドで職員を務めておりますコレリアンナ・コレットと申します。この先何かとギルドを利用する機会も多くなるでしょうし、お見知りおきくださいませ」



 顔に出ていたのかそれとも偶然かは分からんが、名乗ってくれたのでこちらも一応簡単な自己紹介をした。

 それから鑑定をすることになったのだが、どうやらコレリアンナさんが鑑定の能力を持っているようでそのまま彼女に鑑定をお願いした。

 俺は収納空間から未鑑定の野草二十本を取り出していく、カウンターが突然緑の草だらけになってしまった。

 コレリアンナさんはそれを一つ一つ手に取りながら丁寧に鑑定をしていく。その女性的で優雅な手つきに無意識に見惚れてしまう。



「あの、もしかしたら雑草とか混じってるかもしれないです。鑑定の能力がないのでテキトーに毟って来ただけなので」


「ええ、問題ありません。鑑定能力をお持ちでない他の方も同じようにギルドに持ち込んできますので」



 軽く雑談をしながら一つまた一つと鑑定が進んでいるようで、未鑑定の野草の数が減っていく。

 そして残りがあと数本となった頃、急に彼女の手がピタリと止まった。

 手にしているのは表面がつやつやしたまるでウナギの肌のようにテカっている野草だった。

 あんなの取ったかなと俺が採集の時の記憶を探っていると、急にコレリアンナさんの体が震え出した。



「あの、コレリアンナ……さん?」


「……」


「どうかしたんですか?」


「――たんですか?」


「え?」



 彼女が何か呟くようにこちらに問いかけてきたが、ボソボソとした声だったため思わず聞き返してしまう。

 その時突然彼女が手にした野草を置くとカウンターをよじ登ってこちら側に身を乗り出したと思ったら、俺の胸倉を両手で掴むとそのまま前後に揺らしだした。



「この野草どこで手に入れたんですか!!」


「うぇ、ちょちょっとコレリアンナさん、ゆらさ、揺らさないでください!」



 最初のクールな印象とは裏腹にいきなり感情的に胸倉を掴まれたことに少し驚いたが、何か訳があっての行動だと理解できたためとりあえず彼女を宥めすかす。

 彼女も自分が取った行動が理性的でないことに気付きすぐに手を離してくれたが、自分のしたことが恥ずかしかったのだろう顔を赤くして俯いてしまった。

 大人な女性と思っていたが可愛いところがあるじゃないか、けっこうけっこう。



 なんとか彼女が落ち着いたところで何が起こったのか聞いてみたところどうやらさっきのテカっている野草は【ゲッケイジュ】と呼ばれる薬草の一種でこのFAOの世界においてかなり高価な薬草らしく、その希少性もまた高い。

 一般の市場に出回ることはほとんどなく、出回る頻度としては半年に一度、あるいは一年に一度あるかないかというほど稀らしい。



「という訳でして、ジューゴ様この野草どこで見つけたのですか?」



 まだ興奮冷めやらぬといった表情でこの薬草を入手場所を聞いてきた。

 別段隠すことでもないので正直に話すと彼女は目を見開いて驚いていた。



「西の小高い丘に自生しているなんて信じられません。あの場所は冒険者がかなりの頻度で野草摘みに赴いてる場所ですので、こんな希少な野草が自生しているならもっと見つかってもいいはずですのに」


「たまたま運がよかったとしか言いようがありませんね、はは」



 それから残った野草を鑑定し終えたコレリアンナさんは鑑定の結果を話し始めた。

 ゲッケイジュっていう薬草がどれだけの価値になるかこりゃ楽しみだな。



「まず鑑定の結果ですが、ただの雑草が二十本の内の七本ありました」


「結構多いんですね」


「まあ鑑定なしだとこれくらいは仕方ないと思います。次に残りの十三本の内訳ですが、通常の薬草が七本、解毒効果のある薬草が五本、そして残ったのがゲッケイジュとなります」



 うーん、この結果はどうなのだろうか。

 ゲッケイジュの件は置いておくとして二十本中十三本が薬草という割合的に六十五パーセントくらいか?

 薬草摘みの経験がないから分からないが、これは悪くはない数字だと思う、というか思いたい。

 そんなことを考えているとコレリアンナさんが買い取り金額の提示をしてきた。



「では買い取り金額ですが、通常の薬草が一本辺り30ウェンで計210ウェン。解毒効果のある薬草が一本50ウェンで計250ウェンの合計で460ウェンとなります」



 ほうほう、相場がどれくらいかはわからないけど所持金額210ウェンの俺からすればかなりの儲けと言えるのではないだろうか。そして肝心のゲッケイジュのお値段と言えば。



「ジューゴ様、ゲッケイジュの買い取り金額ですが……50000ウェンでいかがでしょうか?」


「えっ?」



 はい?イマナントイイマシタカ、アナタ?

 桁を言い間違えたのだろうか、いきなり50000ウェンとか言われても困るんですけど。



「……」

 

「ですよね。50000ウェンじゃ不服ですよね。わかりました、75000ウェンでどうでしょうか?」



 いやいやいやいやいや、増えちゃったよ。

 俺の沈黙を買い取り金額に不満があると解釈したのだろうが、それにしたっていきなり額が1.5倍とか。

 あまりのことに俺が何の反応もせずに固まっていると、コレリアンナさんはさらに畳み掛けるように――。



「わかりました、滅多にお目に掛かれないゲッケイジュですからね。ギルドとしても是が非でも欲しいところです。100000ウェンで買い取らせてください」



 えーーーーマジですか、ついに六桁に入っちゃったよ。

 このまま黙ってたらどうなるのかというちょっとした好奇心もあったが、流石に押し黙ったままなのはあまりに不自然なので一応聞いてみることにした。



「この薬草ってそんなに価値があるんですか?」


「そりゃもう、滅多にない超お宝ですよ。この薬草を手に入れるために大手の薬棚が躍起になってますからね」


「でもだからって100000ウェンじゃ採算が合わないんじゃ」


「いえ寧ろ相場です。何でしたらもう少し色を付けさせて――」


「いえいえ、相場で結構です。ハイ!」



 なんかギルド内が騒然となり始めてる感じがしてきたので俺はこの取引を早く終わらせたかった。

 俺とコレリアンナさんのやり取りを聞いていた他のプレイヤーが駆け足でギルドを出て行く姿があった。

 「西の丘に急げ」という言葉を残しながら。

 俺は提示された金額を了承するとコレリアンナさんが袋に入ったお金をどさっとカウンターに置いた。

 それを俺はそそくさと受け取りしまい込む。するとメニュー画面の所持金額が100970ウェンという初期にしては莫大な財産を手に入れたのだった。



 余談だが、このあとオラクタリアピッグの肉と皮も買い取ってもらって肉が一つ20ウェン、皮が一枚15ウェンで合計120ウェンで買い取ってもらいました。

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[気になる点] 相場が10万の素材を5割もぼってるとかギルドの信用ガタ落ちやな [一言] 設定が結構ヤバいよ
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