元クラスメイト⑤
「集まったのはこんだけか」
琥珀の何度目かわからない告白をスルーして教室を見渡す。
変わらない教室の風景に、懐かしさが胸に込み上げてくる。
「あのねぇ、遅れて悪かったとかは無いわけ?私たちは十分前にはいたのだけど?」
「流石会長だな、十分前行動は当たり前か」
「社会人として当たり前なのよ!」
愛理の最もな言い分に肩を疎めて返答とする。そんな姿に額に青筋を浮かべながら更にいい募ろうとするが、それは理子によって遮られる。
「シュウ君久しぶり、元気にしてた?」
「ああ、見ての通りだ、ちょっと刺激が足らないがな、それももう慣れた」
「そっかそれなら良かったかな」
何とも分かりずらいシュウの返しに、満足そうに頷く理子。
そんな二人の雰囲気に水を差すのはこの女。
「な・ん・で、二人して私を無視してそんないい雰囲気を作るかな!」
琥珀は理子とシュウの雰囲気を勘違いして二人の間に割り込む。
その言葉を聞いて二人は顔を会わせて苦笑い。
「む~~~なんだいなんだい!その分かりあったような目は!もしかして、二人は付き合ってるの!?」
その言葉で理子は困った顔をして、シュウは何か思い付いたと言わんばかりに口角を吊り上げる。
そして理子の方に歩み寄ろうとして一歩踏み出したのだが、当然そこには琥珀に投げ捨てられた賢士の頭。
「ぐぺっ」
「あっわりぃ」
素で忘れていたのだろう、結構な強さで踏まれたようである。
軽く謝って理子の方に歩み寄ると、その肩を抱いてさも悪かったと言わんばかりの顔をして言った。
「実はそうなんだよ、二年前から付き合いだして来年結婚式も挙げるんだ」
「えっ」
シュウの告白に琥珀は唖然、教室の男女は始まったと言いたげな顔をして、愛理に至っては手で顔を覆い頭を上げる。
「そ、そんな、え、だって」
「悪いな琥珀、そういうわけだからお前の気持ちには答えられない」
動揺して頭を伏せる琥珀を尻目に、悪戯成功!と言わんばかりにニヤニヤしているシュウ、この後に面倒臭い後始末をしなければならなくなった愛理は盛大にため息を溢すのだった。
「う、嘘、だよね、だ、騙されないもん!そうやっていっつも逃げるんだから!」
「嘘だと思うなら理子に聞いてみろ、答えてくれるぞ?」
そう、いつもシュウは断るときに彼女が出来たから、結婚するんだ、等と言っていたのである。
実際に彼女が出来たときもあったのだが。
なので今回もそうだと思っているので、騙されないぞ!みたいな顔で理子をみる。
だが今回は相手が悪い。
片やシュウの冗談を言うときの癖を見抜いており、片やその冗談に引っ掛かりまくっているのだ。
そして理子はSである。
「もぅ、恥ずかしいよシュウ君」
琥珀と目があった瞬間に顔を伏せて、如何にも恥ずかしいです!みたいな雰囲気を見せて言葉を発する。
しかし顔を伏せた理子の口元は三日月のように避けていた。
そのあとからは愛理の仕事である。
「そんなの嘘だー!」と、叫んで出ていった琥珀を追いかけて愛理も出ていった。
戻ってきたときには何事も無かったかのような顔をしている理子にお小言をこぼし、シュウにはお説教。
将太たちはそんな光景を笑いながら見ており、賢士の元には女性が一人賢士の頬をつついている。
そんな賑やかな教室の扉の前で微笑んでいる人、相坂美紀先生である。
「相変わらず賑やかですね」
「せんせ~聞いてくださいよー、さっきシュウに」
にこやかな笑みで一歩二歩と教室に入る。
そんな美紀に琥珀はさっきの出来事を言おうとしたのだが
[ミツケタ]
全員が聞いたその声に、何事かと辺りを見渡す。
愛理に至っては、震えながらキョロキョロと忙しなく首を動かしており、シュウ、将太は鋭い目付きで警戒している。
賢士も跳ね起きて、近くにいた女性を驚かせ尻餅を付かせた。
瞬間、足元から目を焼くほどの光が上がり教室にいた男女を包み込む。
光が収まった後には、机が荒らされた教室だけだった。