元クラスメイト②
「まだ具合悪い、頭くらくらするんだけど」
「お前、最近いつもじゃねーか、もうちょっとだから我慢しろ」
三人は今住宅街を歩いて、中学校を目指していた。
何故25にもなって学校なのか?と思うかもしれないが、同窓会の集合場所がそこなのである。
「んー、もう集まってるみたいよ?俺らで最後だってさー」
「おら、もうちょいだ、ってめ!吐くなよ!」
「うっぷ、ダイジョブ、っっっく」
将太がスマホ片手に歩きながら言っているあいだ、シュウは賢士に肩を貸しながら、吐きそうになっている賢士に必死になって止めている。
何とかこらえたのか「大丈夫」といってシュウにもたれ掛かりながら歩き出す。
「おー見えた見えた、ひっさしぶりだなー」
「見えたからな、踏ん張れよ」
のんきにそんなことを宣う将太を無視して、いつ吐くか気が気でないシュウは賢士にエールをおくる。
そうして校舎に着いた三人は先に職員室に立ち寄る。
その途中、「も、もぅ無理」と言ってトイレに駆け出していった賢士をあきれた顔で見送り二人だけで挨拶に行った。
職員室のドアをノックして「失礼します」と挨拶をして入るシュウとは対称に、辺りを見渡しながら「変わらないね~」と能天気に入ってくる将太。
そんな二人を驚いた表情で見てくる教師を無視して、目的の人物の前まで行く。
「お久し振りです先生」
「あっはー、変わんないねミーちゃん先生」
「久しぶりですね朝月君、藤林君は相変わらずです」
目の前の女性に挨拶をする二人。
一見少女でも通りそうな見た目だがシュウたちが在学中22歳であったことを考えると、30を超えているのだがとてもそうは見えない女性、相坂美紀先生。
生徒達からは"ミーちゃん先生"と愛称で呼ばれているれっきとした先生である。
シュウ達が在学中に起こした問題行動等に東奔西走し、何度も助けてくれた人である。
その中でもシュウにとっては大恩人で、今のシュウがあるのはこの女性のお陰である、と断言できるくらいだ。
「同窓会でしたね、校長先生には言ってあるので先に教室に行っていてください」
「えー、ミーちゃん先生も一緒に行こうぜー」
美紀の言葉に将太が駄々っ子のように腕を掴んで立たせようとする。
それに困った顔をしながらシュウを見ると、分かっていると言いたげに頷いた。
「ほら困ってんだろ、後で来るっていってんだから駄々こねんな」
「だってシュウはどうせあそこ行くんだろー、俺一人じゃん」
「そういえば、今日は二人だけですか?」
思い出したように聞く美紀に首を振るシュウ。
美紀にとって、目の前の二人と賢士、それとあと一人はワンセットなのである。
「賢士は二日酔いです、今はトイレで戦ってますよ」
苦笑いしながら答え返すシュウに、美紀も笑い返しながら「飲みすぎに注意してあげてください」と言って見送るのだった。