2.ヒツジが1匹、キツネも1匹? ◇3
そして、その日・夜更け。
「んん~っ……」
羊スイに教えてもらった、怪しげな料理長・ゴンの自室の前を、壁に隠れながら見張っているハチ。時計も十二時を回り、重くなってくる瞼を何とか持ち上げながら、目を光らせている。
「んっ?」
――キィっ……
「……。」
「あれはっ……」
扉を音を立てないように静かに開けて、部屋の中から現れたのはゴンである。厨房の時の白いコック姿とは違い、全身黒い服を身に纏っているところがいかにも怪しい。ゴンは辺りに人がいないかを用心深く確認してから、ゆっくりと部屋を出る。
「おっ……おいっ、ついにアイツ、動き出したぞっ……って……」
ハチの振り向いた先にいるのは、ただの木。
「いねぇっ!あっ、あわわわわっ」
一緒に見張っていたはずの輝矢の姿がなくなっており、思わず叫ぶハチであったが、ゴンに悟られてしまうので慌てて口を塞いだ。
「……っ」
ゴンはどうやらハチの声には気づかなかった様子で、辺りを警戒しながらどこかへと歩き出していく。
「仕方ねぇっ……こうなったら俺だけでっ……」
輝矢を探していて見失っては元も子もないと、ハチが静かにゴンの後をつけ始める。
「ったく、こんな肝心な時にどこいったんだよっ、アイツぅ~っ」
輝矢への文句を呟きながら、悟られないように適度に距離を離してゴンを追っていくハチ。ゴンは人気のいない廊下を進み、裏口から庭へと出る。
「外っ……?国主が狙いじゃねぇーのかっ……?」
眉をひそめながら、ハチも続いて庭へと出る。
「あっ、ゴンさんっ!こっちこっちっ!」
「バッカヤローっ!でっかい声出すんじゃねぇーよっ!気づかれんだろーがぁっ!」
「いえっ……ゴンさんのんが十分でかいっス……」
「……っ?」
ハチが裏口へと続く扉の陰に隠れながら、庭に出たゴンの様子を覗う。庭の木の陰に隠れていたらしき人物が姿を現し、どこか親しげにゴンに声をかけた。
「仲間……?なっ……!?」
その姿を見せた人物に、思わず目を見開くハチ。
「羊スイっ……!?」
そう、それはハチたちを案内してくれた、あの羊スイであった。しかし夕方に顔を合わせた時のゴンと羊スイの雰囲気とはどこか違う。
「どうっス?そっちの様子はっ」
「ああ、ついにシッポを見せやがったっ」
「へっ?」
問いかけた羊スイに得意げに話すゴン。
「お前らグルだったんだなっ!」
「まんまとおびき出されやがったなっ!」
同時に言いながら、扉の陰から飛び出していくハチと振り返るゴン。
『観念しろっ!!鬼人めっ!!』
――…………。
『って……ええっ!?』
同じタイミングで同じ台詞を言い放ち、これまた同じタイミングで驚くハチとゴン。
「ハチ……くん……?」
出てきたハチを見て、羊スイが首をかしげる。
「バッカ言ってんなよっ!てめぇーが鬼人だろーがぁっ!」
「ふざけんなっ!お前こそ鬼人だろっ!」
「鬼人でなけりゃあ、何でイヌがヒツジの国にいんだよっ!?」
「お前こそ、ヒツジだってんなら何でそんなにツリ目なんだよっ!?」
「ああっ!?」
段々、くだらない言い争いになってくるハチとゴンの会話。
「あっのぉ~っ……」
『ああっ!?』
「ひえぃっ!」
遠慮がちに話しかける羊スイであったが、ハチとゴンに一遍に睨まれて、背筋を震え上がらせる。
「すみません、俺、帰るっス」
「帰んなっ!言いたいことがあんならとっとと言えっ!!羊スケっ!」
「はっはいっス!」
「羊スケ?」
ゴンに強く言われた羊スイが、帰るのを思い留まる。ゴンが呼んだ羊スイの名に首をかしげるハチ。
「ハチくんは鬼人じゃないと思うっスよぉ?」
「何でだよっ?」
「だってぇハチくん、雀の朱実一族だしぃ~」
「朱実っ!?」
羊スイの言葉に、この上なく驚くゴン。
「マジかっ!?」
「マジだよっ」
ゴンの問いかけに、ハチがどこか不機嫌面で答える。
「おいっ!羊スケっ!何っで、んな大事なこと、とっとと言わねぇーんだよっ!?」
「あれっ?言ってなかったっスかぁ~?すんませぇ~ん、あははぁ~っ」
「……っ」
羊スイの謝っているかどうかもよくわからない軽い笑いに、顔の血管を浮き出させるゴン。
――バッコォォォーンッ!
「ううっ……」
「……。」
怒ったゴンに思い切り殴られ倒れこんだ羊スイを見て、少し呆然とするハチ。
「んでぇっ!?他に言いたいことはっ!?」
「はっ……はいっ……実はっ……羊の国の近隣の聞き込みを行っていた第二捜査班から報告が入ってっ……」
「聞き込み?捜査班?」
羊スイの言葉に、どんどん首を傾けていくハチ。
「何だっ!?」
「実はっ……この国の近くの村である男が発見されまして……」
『……っ?』
同刻。屋敷内、芽里の自室。
――キィッ……
静かに開く扉。扉の外には、門番らしき武装ヒツジが何頭か、気を失って倒れこんでいた。
「……。」
ゆっくりと部屋へと入ってきたその者が、まっすぐに部屋の奥にある寝台へと向かっていく。寝台のすぐ横へと立つその者。寝台は恐らく芽里が眠っているのであろう、掛け布団が大きく膨らんでいる。
「……っ」
高々と右手を上げるその者。
「死ねっ……!!」
その者が、寝台へと手を振り下ろす。
「あっれぇ~?」
「……っ!!」
背後から聞こえてくる声に、その者の手が止まる。
「こぉ~んな時間に、国主様のお部屋に何の御用ですかぁ~?」
「……っ」
その者が振り返った先にいたのは、芽里の部屋のソファーにゆったりと腰を掛け、笑顔を浮かべている輝矢。
「ねぇっ……?」
輝矢が鋭くその者を見つめる。
「メェ蔵サンっ……」
「……っ」
輝矢の見つめた先に立っていたのは、メェ蔵であった。
「メェ蔵っ!?メェ蔵だとっ!?」
羊スイの報告を聞き、驚いた表情を見せるのはゴン。
「そうっス。病気にかかって、一ヶ月ほど前から故郷であるその村で療養してたそうっス」
驚いているゴンを前に、報告を続ける羊スイ。
「第二班が聞いたところによると、ちゃんと休暇届は出してきたとっ……」
「一ヶ月だとっ?俺が潜入した二週間前には、アイツはちゃんといたぞっ……!」
「どっ……どういうことだよっ!?じゃあもしかしてメェ蔵さんがっ……!……っ!」
ゴンと羊スイの話に混乱していたハチであったが、何やら嫌な予感が頭の中を駆け、思わず言葉を止める。
「まさかアイツっ……」
ハチの頭を過ぎる、輝矢の顔。
「……っ!」
「あっ……!おいっ!ワン公っっ!!」
ゴンの制止も聞かず、ハチはその場を走り出していった。
「なっ……何をしているかですって?」
妙に焦ったような表情を見せながら、鋭い輝矢の視線から目を逸らし、笑顔を浮かべるメェ蔵。
「わっ……わたくしは、肩凝りがひどくて眠れないと言うメリー様のために、肩揉みをしに来ただけでっ……!」
「へぇ~門番を倒してわざわざっ?」
「……っ」
輝矢の問いかけに、表情を引きつるメェ蔵。
「そっ……それはっ……!」
「ああ、それとっ、国主様なら隣のお部屋でぐっすりお眠りになられてますよぉ~?」
「何じゃとっ!?……っ!」
輝矢の言葉に、メェ蔵が寝台の掛け布団を払い取る。
「んなっ……!?」
そこに寝ていたのは、芽里ではなく巨大なヒツジのぬいぐるみ。
「図ったかっ……」
「さぁ、懺悔の時間ですよ」
輝矢がメェ蔵に笑みを向ける。
「子羊さんっ……」
「……っ」
今まで見せてきていた穏やかな表情を消し、ゆっくりと輝矢の方を振り返るメェ蔵。
「そうだな……消え逝く貴様の命に祈りでも捧げようかっ……!!」
「……っ」
――バァァァーンッ!
黒いスーツが引き千切られ、白い肌が赤色の皮膚へと変わり、メェ蔵が天井を突き破るほどに巨大化していく。金色に輝く一本の角を持った、赤色の鬼が姿を見せる。
「赤鬼……」
「まずは貴様から血祭りにしてやろうっ!」
「やれやれ……」
輝矢が面倒臭そうに呟きながら、ゆっくりと右耳のピアスに手をかける。
「“月器・三日月”っ」
――パァァァァーンッ!
輝矢が右耳のピアスを弾き、巨大化した三日月を剣のように構える。
「うおおおおっ!!」
「竹取輝矢っ……鬼退治いたしますっ……!」
迫り来るメェ蔵に、輝矢が三日月を構えて飛び出していく。
「“鬼爪・天回”っ!!」
「……っ三日月っ!!」
メェ蔵が飛ばした十本の鬼爪を、輝矢が三日月を振るって十本すべて叩き落す。
「まだまだぁっ!!」
「……っ」
叩き落した鬼爪がメェ蔵の操作で、輝矢へと再び向かってくる。
「もう二度と足に穴をあける気はありませんよっ」
飛び出してくる鬼爪をすべて素早く避ける輝矢。前回の緑鬼・太鷲との戦いが、輝矢の中で教訓となっていた。
「何度避けても無駄だっ!鬼爪は延々、貴様を追っていくっ!」
「……っ」
「何っ?」
そのメェ蔵の言葉を聞き、少し考えるような表情を見せた輝矢が、急に避けることをやめ、メェ蔵へ向かって走り出していく。
「チっ……!ギリギリで避けて俺に当てる気かっ……!」
「……っ?」
輝矢の作戦を読んだメェ蔵が、輝矢を追ってきていた鬼爪を自分の手元へ素早く戻す。
「行くぞっ!!」
戻った鬼爪を輝矢へと振り下ろすメェ蔵。
「うおおおおっ!!」
「……っ!」
――………………っ!!
激しくぶつかり合う、輝矢の三日月とメェ蔵の鬼爪。
「フハハハハっ!!かかったなっ!!」
「……っ?」
輝矢と向き合った途端に笑い声を漏らすメェ蔵に、輝矢が戸惑うように顔を上げる。
「鬼爪の攻撃も貴様を接近させるためっ……!」
「えっ……?」
「死ねぃっ!!」
「……っ」
輝矢へ向けて、大口を開けるメェ蔵。
「“鬼口”ですかっ」
「悪いな、威力は“鬼口”の三倍だっ」
「えっ?」
「はああああっ!!」
「……っ!」
メェ蔵の口の中で巻き上がっていく、赤々とした炎。輝矢が目を見開く。
「“鬼炎”っ!!」
「クっ……!」
――バァァァァーンッ!
「……っ!何だっ!?」
巨大な衝撃音に、庭を駆けていたハチが勢いよく顔を上げる。
「って……」
見上げた空から、勢いよく落ちてくる瓦礫の数々。
「どぅわあああっ!!」
ハチが焦って叫びまくる。
「クっ……!」
――ボォォ~~ンッ!
白い煙に包まれ、人化して桜時の姿となるハチ。
「“瞬花”っ!」
桜時が両手を掲げると、降り注いできた瓦礫がすべて桜の花びらとなって、美しく桜時に降り散った。
「今の瓦礫はっ……どっからっ……!?」
瓦礫の落ちてきた方を見上げる桜時。
「あれはっ……芽里の部屋っ……?」
屋敷の三階部分の庭側の部屋の壁がなく、部屋の中が露見している。その光景に桜時が眉をひそめる。
「まさかアイツっ……!もう鬼人とっ……?」
桜時の頭を過ぎる予感。
「輝矢っ……!」
「はいっ?」
「だあっ!!」
思わず身を乗り出して叫んだ桜時であったが、輝矢はいつの間にか桜時のすぐ前に座り込んでおり、すぐさま返ってくる返事に桜時がバランスを崩してその場に腰をついた。
「おっ……お前、いつの間に……」
「瓦礫と一緒に落ちてきたんですよぉ~」
輝矢が桜時へ笑顔を向ける。
「それよりハチ、今、何か言いませんでした?」
「へっ?」
「か○やとか何とか……」
「ういっ……!?」
焦ったあまり輝矢の名を大声でしかも呼び捨てで叫んでしまったことを思い出した桜時が、顔を赤くして思わず口を押さえ込む。
「あっ……!あれは家具屋っつったんだっ!家具屋ってっ!ほぉ~ら壁が崩れてきてたからさぁ~っ!」
「へぇ~」
「ううっ……!」
慌てながらも何とか誤魔化そうとする桜時に対し、悪戯っぽい笑みを浮かべながらゆっくりと桜時に接近していく輝矢。接近してくる輝矢に、桜時が顔色を青くする。
「ちょっ……!待っ……!俺の半径一メートル以内に近づくんじゃないっつってっ……!!」
「もう一度呼んでくれたら気が済みそうな気がするんですけどねぇ~」
「なっ……!何言ってっ……!!」
嫌がる桜時を嘲笑うかのように、どんどん桜時に迫っていく輝矢。
「とりあえず離れっ……!……っ!」
「ぐああああっ!!」
「鬼人っ!?」
瓦礫の落ちてきた芽里の部屋から飛び降りてきて、輝矢の背後から二人の元へと駆け込んできている赤鬼・メェ蔵の姿を確認し、目を見開く桜時。
「来てるっ!来てるっ!!後ろぉ!!」
「このまま死ぬのと名前呼ぶのと、どっちがいいです?」
「んな選択肢作んなぁ!!」
「はああああっ!!」
「ぎゃあああっ!!」
恐ろしい形相で駆け込んでくるメェ蔵の姿に、悲鳴をあげる桜時。最早、名前を呼ぶどころの騒ぎではない。
「ちょぉっと待ったぁぁっ!!」
『……っ?』
何とも大きな声に、輝矢たちやメェ蔵が振り向く。
「やぁっと見つけたぜぇっ!鬼人ヤローっ!」
「アイツっ……」
二人に迫り来ていたメェ蔵の後方から高々と強気に言い放って現れたのは、あの怪しいツリ目男のゴンであった。その横には羊スイの姿もある。
「貴様の相手はっ!このっ!俺だぁっ!!」
「何です?あれっ」
「さぁ……?とりあえず鬼人ではなかったみたいだぞ……」
とにかく大きな声でメェ蔵に宣戦布告するゴンを見て、呆れた表情で会話をする輝矢と桜時。
「退治屋のガキどもっ!てめぇーらはそこでイチャついてでもいながら、俺様の戦いっぷりを見てろっ!」
「誰がイチャついてなんかっ……!」
「わかりました、そうします」
「すんなっ!!」
ゴンの言葉に素直に頷く輝矢に、桜時が激しく突っ込みを入れる。
「貴様は確か料理長の……」
「まっさかてめぇーが鬼人だったとはなぁ?メェ蔵っ……まぁ今となっちゃメェ蔵だったのかもわからんがっ」
振り向いたメェ蔵に、ゴンが鋭い瞳を向ける。
「てめぇーの悪事もここまでだぜっ!!」
――ボォォ~~ンッ!
『……っ』
ゴンの体を白い煙が包むと、次の瞬間、煙の中から一匹の黄金色のキツネが姿を現した。可愛らしい体にふさふさの尾を持っているが、妙に目つきが悪い。
「“孤人”っ……?」
「どうりでツリ目なはずですねぇ」
「そんな理由っ!?」
妙に納得している輝矢に、リアクション大きく驚く桜時。
「行くぜっ!!」
キツネとなったゴンがメェ蔵に向かって、高々と飛び上がる。
「“狐火・一髪”っ!」
「“火力”っ……?」
「マズいですねぇ……」
「えっ?」
上空からメェ蔵へ向けて、火の玉を放つゴン。そんなゴンを見て眉をひそめる輝矢に、桜時が首をかしげる。
「ふわぁーっはっはっはっはっ!何だぁっ?これはっ!炎のつもりかぁ!?」
「んだと!?」
高らかと笑うメェ蔵に、顔をしかめるゴン。
「炎というのはっ……こういうのを言うのだっ!!“鬼炎”っ!!」
「……っ!!」
メェ蔵が大きく口を開き、先ほど輝矢に向けた時と同様に、口から赤々とした炎を放つ。
「んなっ……!?」
一瞬でゴンの放った炎を飲み込んでしまう鬼炎。
「うっぎゃああああっ!!」
ゴンが炎をもろに喰らって、力なく地面へと落下していく。
「うわあっ!!キツネがぁぁっ!!」
「偉そうなこと言ってたわりに弱いですねぇ~」
焦る桜時に対し、顔色一つ変えない輝矢。
「ゴンさんっ!」
炎に焼かれ落下したゴンの元へ、羊スイが慌てて駆け寄る。
「うっ……ううっ……熱ちぃっ……」
全身に火傷を負いながらも、丈夫に起き上がるゴン。
「ああ~いいニオイっ!いっそこのまま油揚げになったらどうっスかぁ~?」
「てめぇー、殺すぞ?」
「冗談っスよっ!冗談っ!」
特に心配した様子なく笑顔を浮かべている羊スイに、ゴンは本気の睨みをきかせた。羊スイの笑顔が苦笑いへと変わる。
「にしてもあの鬼人、炎使っちゃったりなんかしてビックリっスねぇ~」
「ありゃあレベル三の赤鬼だ。鬼爪や鬼口以外に“火力”も持ってやがるっ」
「へぇ~そこまでわかってて“火力”で攻撃したんスねっ」
「うっ……」
羊スイの鋭い一言に、顔を引きつるゴン。
「まっ!元々ゴンさんには“火力”以外の攻撃なんてできっこなっ……!」
――バッコォォーーンッ!
「ううっ……」
「てめぇーはしゃべってばっかいないで、とっとと俺の怪我の手当てをしろっ」
何の悪びれもなく鋭いことばかりを指摘していた羊スイに、ついにゴンの鉄拳が降り注ぎ、羊スイは笑顔から急激に泣き顔へと変わった。
「“火力”かぁ……じゃあ俺の花も燃やされるだけだなぁ~」
その頃、同じように赤鬼の能力を輝矢から聞き、険しい表情を見せているのは桜時。
「んん~どうしたらっ……」
「さてとっ」
「へっ?」
気合いを入れたような声を出し、ふいに立ち上がった輝矢を、桜時が不思議そうに見上げる。
「おっ……!おいおいっ!どうする気だよっ!?」
「倒しますよ?フツーに」
「普通にってお前っ!相手はレベル三だぞっ!?この前、戦ったレベル一の緑鬼とは比べ物になんなっ……!」
「大丈夫ですよっ」
不安げに止める桜時に、輝矢は余裕の笑みを向ける。
「私は“桃タロー”の弟子ですからっ」
「……っ」
その自信に満ち溢れた表情に、桜時はそれ以上、言葉を続けることができなかった。輝矢が桜時に背を向け、再びメェ蔵と向き合う。
「竹取輝矢……鬼退治いたしますっ」
「来いっ!小娘っ!!」
「……っ」
三日月を構え、メェ蔵へと飛び出していく輝矢。メェ蔵も鬼爪を光らせ、輝矢へと駆けていく。
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