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鬼斬り かぐや  作者: はるかわちかぜ
51/406

12.眠れる森の罠 ◇4

「三日月っ!」

「“鬼爪・天回”っ…」

「“水月”っ!」

「“鬼口”っ」

「クっ…!」

 何を放っても互角以上の力で返してくる白鬼・オーロラに、輝矢が少し表情をしかめた。

「技が感情に呑まれて先走っているわよ…?退治屋さん…」

 オーロラは余裕の笑みで輝矢を見下ろす。

「冷静さを忘れてはいけないわ…」

「大きなお世話ですっ」

 まるで助言でもするかのように言うオーロラに、強く言い放った輝矢が再び三日月を構える。

「……っ!」

 三日月を構え、勢いよくオーロラへと飛び込んでいく輝矢。

「三日月っ!」

 輝矢がオーロラの懐へと入り、三日月を振り切る。

「うっ…!」

 空を切る三日月に、輝矢が目を開く。

「そうやって…安易に敵の懐に飛び込む…」

「……っ!」

 いつの間にか輝矢の後方へと立っているオーロラ。

「“月器・十六っ…!」

「“鬼爪”…」

「ううっ…!!」

 輝矢が三日月を十六夜へと変形させる前に、オーロラの爪が輝矢の背中を切り裂いた。

「うあっ…!ううっ…」

 血を流した輝矢が、力なく床に倒れ込む。

「……。」

 それを見ていたオーロラが白鬼の姿からまた人間の姿となり、倒れている輝矢へと歩み寄った。

「ほらっ…だから言ったでしょう…?」

「……っ」

 すぐ傍に立ち微笑みかけるオーロラを、輝矢が痛みをこらえながら睨み上げる。

「そうだっ…貴女も鬼にしてあげましょうかっ?」

「……っ」

 オーロラの言葉に、眉をひそめる輝矢。

「そうすれば…ここで私に殺されることもない…永遠に生きることができるのよ…?」

「……冗談じゃありませんっ…」

「……っ」

 すぐさま答える輝矢に、オーロラの表情が曇る。

「鬼となって永遠に生きるぐらいならっ…ここでアナタに殺された方がずっとマシですっ」

「……。」

 強い瞳で言い放つ輝矢を見て、オーロラが表情から笑みを消す。

「まぁ私はアナタなどに負けたりしっ…」

「……それは…貴女が長く生きることを許された命を持っているからよっ…」

「えっ…?」

 少しトーンを落としたオーロラの言葉に、輝矢が少し眉をひそめる。

「でもね…人間の命なんて…いつかは必ず尽きるもの…」

 どこか遠い目を見せるオーロラ。

「貴女も…目の前に死が迫ったら…きっと言うわっ…“鬼になってでも生きたい”って…」

「……っ」

 妙に気持ちのこもったそのオーロラの言葉に、輝矢は怪訝そうに顔をしかめた。

「だって…みんな、喜んだものっ!鬼人になれてっ…これで死ぬことはないんだって…喜んだものっ!」

「……。」

 必死に言い放つオーロラを、輝矢はどこか悲しげに見つめる。

「人でなくなるだけでっ…死ななくて済むのよっ…!?だったらその方がずっとずっといいじゃないっ!」

「オーロラ…アナタ、まさかっ…」

「私はっ…私は死なないっ…!私は永遠に生き続けるのっ…!!」

「……。」

 まるで自分の方が追い詰められているかのように、必死に叫ぶオーロラ。そんなオーロラをまっすぐに見つめていた輝矢であったが、やがてどこか諦めたかのように視線を逸らし、俯いた。

「オーロラ…」

「……っ?」

 再び三日月を強く握り、傷ついた体を立ち上がらせる輝矢。

「もし…私の命が明日には尽きるほどのものだったとしても…」

 痛みをこらえて立ち上がった輝矢が、ゆっくりと顔を上げ、オーロラを見つめる。

「私は…決して鬼として生きる道は選びませんっ」

「……っ」

 輝矢の答えに、少し眉をひそめるオーロラ。

「最期まで人として生き、そして死にますっ」

 曇りのない表情と堂々とした態度で言い切る輝矢。

「でもまぁ正直、まだ死にたくはないので…」

 少し笑みをこぼす輝矢。

「私はアナタを倒しますっ…!」

「……。」

 そう言って三日月を構えた輝矢を見て、オーロラがどこか暗い表情で下を向く。

「……そう…じゃあっ…!」

 再び白鬼の姿と変わるオーロラ。

「望み通りっ…人として死なせてあげるわっ…!」

「……竹取輝矢っ…」

 鋭い瞳となって、鬼と化したオーロラを見上げる輝矢。

「鬼退治…いたしますっ…!」

「アアアアァッ!!」

 同時に飛び込んでいく輝矢とオーロラ。

『……っ!』

 輝矢の三日月とオーロラの鬼爪が激しくぶつかり合う。

「貴女にっ…貴女に何がわかるのっ…!?」

「……っ?」

 輝矢に鬼爪を向けながら、どこか悲しげな声で問いかけるオーロラ。

「生まれながらに死に逝く命を持った人間のっ…何がわかるっていうのっ…!!」

「ううっ…!」

 オーロラの激しい攻撃に、輝矢が持っていた三日月を弾き飛ばされる。

「クっ…」

「ハァっ…!ハァっ…!ハァっ…!」

 丸腰となった輝矢の前に立ちはだかり、肩で大きく息をするオーロラ。

「貴女にっ…貴女に…何がっ…」

「確かに…私にはわかりません…」

「……っ」

 その言葉を繰り返していたオーロラが、三日月を失い、ただ立ち尽くしているだけの輝矢の声に顔を上げる。

「でもっ…わかってくれた人はいたのではないですかっ…?」

「……っ!」

 突き上げるようにまっすぐに見つめる輝矢に、ハッとした表情を見せるオーロラ。


――可哀想に…オーロラ…わしがっ…わしが代わりに死にたいっ…――

――ああっ…どうしてあなただけが…不治の病になどっ…オーロラっ…――


「……っ」

 思い出される映像を、オーロラが必死に振り払うかのように首を振る。

「鬼になることで帰る場所すら亡くしてっ…それで永遠に生きて、本当に幸せですかっ?」

「私っ…私はっ…!」

「アナタは永遠の命を得る代わりに、たくさんのものを亡くしたんですっ!」

「違うっ!!」

 輝矢の言葉を、頭を抱えて大きな声で否定するオーロラ。

「違うっ…!違うっ!違うっ!私はっ…!!私はぁっ!!」

「……っ!」

 三日月のない輝矢へと、オーロラが勢いよく爪を振り下ろす。

「……っ!!」

 オーロラの爪が輝矢の体を切り裂いた途端に、輝矢の体が水となって弾け飛ぶ。

「水の分身っ…!?うあああああっ!!」

 弾け飛んだ水が刃となり、驚いているオーロラに向かって一斉に飛び出していく。

「うううっ…!」

 全身に水の刃を受け、思わずよろけるオーロラ。

「……っ」

「うっ…!!」

 そんなオーロラの目の前に現れる、三日月を構えた鋭い目つきの輝矢。

「これでっ…終わりですっ…!」

「クっ…!」

 三日月を突き出す輝矢と、険しい表情を見せるオーロラ。

「……っ三日月っ!」


――………………っ!


「うっ…!ううっ…」

 輝矢の突き出した三日月が、オーロラの胸を貫いた。

「いっ…嫌ねっ…」

 胸から紫色の血を流していた白鬼が、やがて赤い血を流す人間の女の姿へと変わっていく。

「永遠にっ…生きられるっ…はず…だったのにっ…」

「……。」

 輝矢が三日月を引くと、オーロラは力なくその場にしゃがみ込んだ。


「輝矢っ!」

「竹取っ!!」

 そこへ桜時とゴンが駆けつける。

『……っ!』

 部屋の中にいる輝矢とオーロラの姿を見て、思わず目を見開く桜時とゴン。


「オーロラ…」

 壁にもたれかかるようにしてしゃがみ込んでいるオーロラを、少し細めた目で見つめる輝矢。

「アナタ…やはり人げっ…」

「昔ね…」

「……っ」

 弱々しい声で話しを始めるオーロラに、輝矢が言葉を止める。

「昔…生まれつき、不治の病を患った子供がいたの…」

「……。」

 オーロラを、輝矢はただまっすぐに見つめる。

「不治の病っ…?」


――娘が…いましてね…――


「あっ…」

 輝矢とオーロラのやり取りを見ていた桜時が、何か思い当たったかのような表情を見せる。

「生まれながらに死ぬことを宣告されたその子供を…両親はひどく哀れんだ…」


――可哀想に…わしがっ…わしが代わりに死にたいっ…――

――ああっ…どうしてあなただけが…不治の病になどっ…――


「両親は…毎日言ったわっ…“可哀想な子、可哀想な子”って…」

「……っ」

 そっと俯く輝矢。

「子供は思ったわ…“私は可哀想なんかじゃない”…“もっと…もっと生きたい”…」

 オーロラがどこか悲しげに笑う。

「“永遠の時を…生きたい”って…」

「……。」

 遠い瞳を見せるオーロラを見て、輝矢はそっと目を細めた。

「んっ…!ううっ…!」

 痛みが走ったのか、急に顔をしかめるオーロラ。その体が足元から徐々に砂と化していっている。

「どうやら…本当に終わりが来たみたいね…」

 砂となりゆく自分の体を見て、オーロラが笑う。

「アナタを…アナタを鬼人へと変えたのは…?」

 死に逝くオーロラに、輝矢が最後の疑問を投げかける。

「……あの方は偉大な方よ…」

「あの方…?」

 オーロラの言葉に眉をひそめる輝矢。

「あの方も間もなく動き出す…そうなれば…世界は鬼に満ち、やがて滅びの一途を辿るわ…」

「そのあの方っつーのっ…!あの方っつーのは誰だっ!?」

「ゴンっ」

 輝矢の横から顔を出し、必死の勢いでオーロラに問いかけるゴン。

「ウフフっ…」


――パァァァァァァンっ!


「……っ!」

 名を明かさぬまま、オーロラは砂となって崩れ落ちていった。

「……。」

 風に吹かれ、消えていく砂を、輝矢は神妙な面持ちで見つめていた。





 御伽界・とある山奥。

「オーロラの反応が消えました…」

 崖の上に立ち、そう言うのは、色素の薄い灰色の髪に、あまり光を感じない紫色の瞳の、まだ若い男。首筋に何やら黒い紋様のようなものが入っている。

「シルク様…」

「……そう」

 崖の先に座っているのは、長い白髪の人物。背中しか見えないが、その華奢な体に高く響くその声は、恐らく女性であろう。シルクと呼ばれた女性は、男の言葉に素っ気ない返事をする。

「やっぱりどこまで行っても人間は人間だったわねぇ…」

「オーロラの抜けた穴はどうなさいますか?」

「穴…?」

 男の言葉を不思議そうに問い返すシルク。

「どこに穴があいたというの…?諸刃もろは…」

「えっ…?」

 諸刃が少し戸惑うような表情を見せる。

「捨て駒を一つ失くしただけよ…私には何の影響もないわ…」

「……っ」

 そのシルクの言葉に、諸刃はあまりない表情でそっと眉をひそめた。

「すべては…私の計画通り…」

 シルクが座ったまま、その白く細い手を高々と空へと伸ばす。

「やがてこの美しい世界を…醜い鬼が埋め尽くす…」

 伸ばした手が、シルクを照らす太陽を隠す。

「フフフっ…アハハハハっ…アハハハハハっ…」

 高々とした笑い声が、太陽の在る空へと響いた。





 翌日。眠りの森。オーロラの古城付近。

「……。」

 オトポリの制服を着た多くの警官が古城内や周囲を調査する中、輝矢は古城から少しはずれたところに作られた、小さな墓の前に立っていた。

「良かったのか…?」

「……っ」

 そんな輝矢の横へと現れたのはハチ。

「六べぇさんとおハナさんに…オーロラのこと伝えなくてっ…」

「……。」

 ハチの問いかけに、そっと目を落とす輝矢。

「良かったんですよ…」

 輝矢が悲しげに微笑む。

「二人の娘は…三十年前にこの森で死んだ…それで…いいんです…」

「……そっか…」

 輝矢の言葉に、ハチが小さく頷く。

「……“瞬花”…」

「……っ」

 ハチが瞬花で花を出し、その花を墓へと手向ける。

「かぁ~っ!墓なんて作ってんじゃねぇーよっ!辛気くせぇーなぁっ!」

「ゴンっ」

 いつも通りの不機嫌面でその場へと現れたのはゴンであった。何とも煩わしそうに墓を見るゴン。

「おいっ!ハチ公っ!お前もなぁ~に花なんか供えてんだぁ~っ?辛気くせぇっ!!」

「何って…」

「情緒の欠片もないキツネですねぇ」

 墓や花がとても気に食わない様子のゴンに、輝矢とハチが少し呆れた表情を向ける。

「だいたい俺は花っつーものが昔っから嫌いなんだよっ!」

「それはハチへの侮辱と受け取って、蹴り倒してもいいんですか?」

「何っでだよっ!!」

 かなり勝手な解釈をする輝矢に、ゴンが大きく突っ込みを入れる。

「あっ…そういえばっ…」

『……っ?』

 何かを思い出したように声を出すハチに、言い争いをしていた輝矢とゴンが振り向く。

「誰に言われたのか忘れたけどっ…こんなこと言われたなぁ~」

「……?何です?」

「うん…“永遠に咲く花を、人は誰も美しいとは思わない”」

「……っ」


――私は永遠に生きるのっ…!――


「……。」

 ハチの言葉にオーロラのことを思い出し、そっと俯く輝矢。

「“じゃあどうして、散り逝く花は美しいのか”…」

 墓をまっすぐに見つめるハチ。

「“人が…花はいつか散るものだと知っているから美しく見える…そうじゃない”…」

 穏やかな笑顔で言葉を続けるハチ。

「“花自身が…いつか散ることを知りながら…それでも一生懸命咲くから美しいんだ”ってっ」

「……っ!」

 そう言って笑顔を見せるハチに、輝矢が少し衝撃が走ったかのように口を押さえる。

「でぇも誰に言われたんだっけなぁ?」

「……っ」

 考え込み、首を捻るハチの横で、小さく笑顔をこぼす輝矢。

「さっ、ここはオトポリに任せて、私たちはそろそろ行きますかっ」

「へっ?」

「サルぅ~っ!キジぃ~っ!どこですぅ~っ?」

 目を丸くするハチを墓の前に残して、足早に古城の方へと向かい、モンキとユキジを探す輝矢。

「何だぁ?アイツ…」

「やっぱすげぇーよっ、お前っ」

「へっ?」

 首を捻っていたハチが、ゴンの言葉に振り向く。

「あっ…」

「……っ?」

 ゴンの顔を正面から見た途端に、昨日のクロトとシロキとの戦いが思い出され、気まずそうに俯くハチ。そんなハチを見て、ゴンが眉をひそめる。

「ゴン…そのっ…昨日は悪っ…」

「良かったよっ。お前に殺させなくてっ」

「えっ…?」

 ゴンの言葉にハチが戸惑うように顔を上げると、ゴンは穏やかな笑みを浮べていた。

「お前はこれから…たくさんのものを背負うアイツを…支えていかなきゃいけねぇーんだもんなっ…」

 そう言ってゴンが、モンキやユキジと合流する輝矢を見つめる。

「それってどうゆうっ…」

「まぁ一言で言うと、良き旦那になれってことだっ!」

「だんっ…」

 ゴンの笑顔に、固まるハチ。

「って、なるかぁぁ!!」

「アッハッハっ!」

「ハチ~っ!行きますよぉ~っ?」

 思い切り怒鳴り返すハチを見て、楽しげに笑うゴン。そんなハチを古城の方から輝矢が呼ぶ。

「ゴンと何の話をしてたんです?」

「何でもねぇーよっ」

 やって来たハチに輝矢が問いかけるが、ハチは素っ気なく答える。

「怪しいなぁ~」

「桜時、ゴンゴンに何か脅迫されてんじゃなぁ~いっ?」

「誰がじゃっ!!」

 疑いの目を向けてくるユキジに、ゴンが力強く怒鳴りつける。

「おおぉ~いっ!かっぐやさぁ~んっ!!」

『……っ?』

 そこへ古城の調査を行っていた金汰がやって来た。

「いっやぁ~っ!ここにおったとですかぁ~っ!」

「金汰さんっ、調査終わったんですか?」

「んんっ?」


――ボォォォ~ンッ!


「ああっ…粗方なっ」

「渋っ!」

「ずっと人でいりゃいいのにぃ~っ」

 ゴンの問いかけに、人化してカッコよく答える金汰に、モンキとユキジが少し呆れた表情を見せる。

「それで輝矢さん」

「はいっ?」

 真剣な表情で輝矢の方を見る金汰。

「今回の件、本部に知らせたら、緊急会議が開かれることになった。オトポリ全員に召集かかっている」

「えっ?俺もですかぁ?」

「まぁ一応なっ」

「一応って…」

 金汰の微妙なニュアンスの答えに、顔をしかめるゴン。

「まぁゴンさんがいない方が会議はスムーズに進むと思うっスけどねぇ~っ!」

「……っ」


――バギコォォーンッ!


「うううっ…」

 現れた途端に要らぬ口を叩いた羊スケに、ゴンの鉄拳が降り注いだ。

「危うく鬼人にされるところだった可愛い部下になんたる仕打ちっ…」

「あ~あ。鬼人にされときゃあ容赦なく燃やしてやったのによぉっ」

「ヒドいっスよぉ~っ!ゴンさぁ~んっ!」

 羊スケが泣きそうな顔で訴える。危うく鬼人にされそうだったわりには元気そうである。

「んんっ?羊スケっ、お前が目覚めたということは鉄もっ…」

「ああっ、さっき起きたっスよっ?」

「何ぃっ!?」

 羊スケの答えを聞き、大きなリアクションをとる金汰。


――ボォォォォ~ンッ!


「待ってるだべぇ~っ!鉄ちゃぁ~んっ!兄ちゃんが今すぐ行くだぁ~っ!」

『……。』

 再び熊化した金汰が、物凄いスピードで再び古城の方へと走り去っていってしまう。

「結局…何言おうとしてたんだ…?あのクマ…」

「さぁ?」

 呆れた表情で問いかけるハチに、首をかしげる輝矢。

「まぁ要は~会議があるなら情報収集できるし、輝矢さんも来たらどうっ?ってことじゃないっスかぁ?」

『なるほどっ』

 代わりに言う羊スケに、ハチたちが納得したように手を叩く。

「そういえばさぁ~オトポリの本部ってどこにあんのっ?」

「“龍国”だ」

 ユキジの問いかけに、真面目な表情で答えるゴン。

「龍国…?」

「ああっ…四大国が一、御伽界・最古にして最大の国…」

「どうするんだ?輝矢」

「うぅ~んっ…」

 ハチの問いかけに、考え込むように首を捻る輝矢。

「そうですねっ、じゃあ行きましょうかっ」

「おうっ!」

「私も久々に里帰りしたいですしっ」

「おうっ!って…へっ?」

 勢いよく返事をしたハチが、何やらおかしいと思い、首をかしげる。

『へっ?へっ?』

 モンキやユキジらと目を合わせ、首をかしげ合う三匹。

『ええええっ!?』

 三匹の大きな声が響き渡った。

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