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私の家出の話。  作者: ユヤン
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「あっつい…」

 私の住んでいた国、ランスを出てから2日がたった。食料は、ギリギリ足りている。

 今まで使っていたきれいな言葉を直すためにぶつくさと思ったことを口に出して馬に乗っていた。

 よく下町には出掛けていたため、平民の方たちのしゃべり方はわかる。けれど、男のようにしゃべるのが難しい。

「うっかり女言葉が出ないようにしないと…」

 練習をかねて口に出して言う。気を抜いたら、~ですわ。だとか、~して下さりますか。などの綺麗なしゃべり方が口から出てきそうだった。育ちがいいとばれたら、変だと思われる。


 馬を休ませるために大きな木の下で休

んだ。

 そっと、腰に差しているレイピアをさわる。

 何でもできた方がいいと思って、10歳の頃から剣を学んだ。馬術を学んだ。魔法も学んだ。

「こんなことで役にたつなんて…」

 こんなことになるとは思わなかった自分に苦笑する。


 進む方向に目をやると隣国、テグリアスが見える。 

 テグリアスには、ランスとは違い獣人が多く住んでいるらしい。

 いや、ランスが獣人に対する制度があまり整っていないためだろう。それゆえ、ランスに住む獣人は少ない。

 関わることが少なかったため、どのような種族なのかすごく気になる。


「あともう少しだから、もうちょっと頑張って」

 と、馬に声をかけて《水よ》と詠唱をして小さな池を作り水を飲ませた。

 

 テグリアスの、ギルドで登録できるかと、少し心配になる。ギルドで登録すると、カードがもらえる。カードは身分証にもなる便利なものだ。ギルドに登録する人は旅人が多い。ちゃんとした家を持っていないために自分が誰かを証明するものになる。普通に暮らす人々はあまり必要としない。

 すべて本で読んだ情報のためちゃんと登録できるのか心配になる。


 あれこれと悩んでいるうちに国境が近くなった。

 大きな塀に囲まれ、入り口には、獣人の兵が両脇に立っていた。

 その入り口には、商人や、旅人が次々と並んでいくのを見て、自分も馬を降りて、入国の列に並んだ。

 入国する際には大きな水晶に手をかざさなければならない。

 何か悪事を働こうと企んでいるならば水晶はすぐさま曇る。

 列は滞りもなく進み、無事に入国を果たした。


 今日泊まる宿を探しながら晩御飯を探していた。

 ランスの料理とは違う強い香辛料の匂いが、空っぽなお腹を刺激した。

 ジューッと、お肉が焼けるいい音に釣られて1つの屋台の前で立ち止まった。

「おじさん、1つください」と、美味しそうなお肉を注文した。

「はいよ!」とおじさんは気持ちよく返事をして、ちょっと待ってな、とお肉を大きなつやつやとした葉っぱに包んでくれた。

 近くのベンチに座って、包みを開けると、暖かい湯気と、美味しそうな匂いが顔を包んだ。

 

 おじさんが串を付けてくれて、一口サイズにお肉を切ってくれたため、お肉を串で刺して口に運ぶ。

 口に入れた瞬間に肉汁がブワッと溢れだす。その次に香辛料のピリッとした辛さが口のなかを襲った。

 食べたことのない辛さがとても美味しいと感じた。

 晴れた空のしたで食べる食事は、幼い頃の楽しかったピクニックを思い出した。


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