表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/40

第39節:ラストバトル


 もう幾度となく繰り返された死闘。

 その最後の一戦は、お互いに無傷のままに長く繰り広げられた。


 【黒の兵士(シェルアシスト)】二代目隊長であったトウガにとって。

 知に優れた鯉幟(こいのぼり)を参謀とするならば。

 武の面で右腕とも呼べる存在だったのが、井塚カズキだ。


 己の潜在能力(ポテンシャル)にカズキの戦闘技術を加えたマザーの力は。

 人類の極限とも言える達人が、装殻を纏った存在である、参式(ザ・サード)……真の戦闘能力を解放したトウガにすら、拮抗する程の領域に達していた。


「〈犀角乱打(ライノスビット)〉」


 マザーの放つ、出力解放によるスラスターブレードの遠隔乱撃を。


限界機動(ブレイクアップ)

実行(レディ)


 参式が、超加速と洗練された体捌き、そしてナイフによる迎撃によって躱し。

 そのまま、接近してからの至近射撃を放てば。


「読めている」


 こちらも先読みと超加速の合わせ技で射線から退いて、逆にその爪を勢いのついた参式の体に突き立てようと振るう。

 その一撃を拳銃の銃身でいなして逸らし、戦況が動いた。


「出力解放 The Secondーーー〈黒の天蓋(キャノピースフィア)〉」

遮断(インタラプト)


 動きを制限される代わりに、絶対に近い不可視障壁の防御を展開する技。

 それを……マザーの周囲を覆うように参式が展開した。


「ぬっ……」


 動きを堰き止められた状態で、二人が超加速領域から離脱する。


「喰らえ」


 障壁の展開は一瞬。

 それでも、参式が、数発の銃弾をゼロ距離射撃によってマザーの体に叩き込むには十分な時間稼ぎだった。


「交換だ」


 しかしマザーも同時に、飛ばしていた一対のスラスターブレードで参式の両足に追加展開されていた大型機動補助機構(メガ・コンバット・スラスター)を破壊していた。

 即座にデッドウェイトとなったスラスターを脱殻(パージ)して、参式がナイフを振るう。


 マザーの背にあった最後のフェザースラスターを一基破壊し。

 これも同時に振るわれたマザーの爪が参式のフルフェイスの一部を破壊する。


 二人は共に姿勢を崩し、踏ん張り、次撃を放つ。


 マザーが、残ったフェザースラスターを手に取って居合の一閃。

 参式が引き抜いたナイフで迎え撃つと、二つ共に砕け散った。


出力解放(アビリティオーダー)……Lv5!」

実行(レディ)連続励起(ストリーク)


 参式が、壊れた拳銃とナイフを打ち捨てて自身の最強兵装を起動させる。


出力解放(ナチュラルオーダー)

認証(インストール)


 マザーも、右腕を角の如く変異させてそれに応じた。


 あくまでも静かに。

 お互いに全ての技量をぶつけ合うようだった戦闘の終焉は……。


 呆気なく、唐突に訪れた。


限界機動(ブレイクアップ)


 参式の出力供給線(ホワイトライン)と紅い出力増幅核(ブーストコア)が輝き、周囲を紅白に染め上げる。


 強纏身、限界機動状態での出力解放。

 〈紅の爆撃(ディメンジョン・バースト)〉で放つエネルギーを、全て拳のただ一点に込めて。


「〈衝角(ライノ)ーーー」


 マザーが、その一撃を解き放つ前に。


「カズキ……馬鹿野郎……!」


 己の想いを。

 今まで得てきたもの、失ってきたもの。

 その、渾身を込めて。


「〈紅の一撃(ヴォイド・フルバースト)〉……ッ!」


 参式の拳が、マザーの心核(コア)を、貫いた。


※※※


「ぐっ……」


 血液に似た液体を紅葉のように全身に咲かせ。


「私は……滅びぬ……!」


 マザーが、最後の力を振り絞って、参式の両肩を掴む。


「トウガァ……! 貴様の体を乗っ取り……今度は貴様自身を人類殲滅の尖兵としてやるぞ……!」

「花立!」

「来るなッ!」


 駆け寄ろうとした黒の一号を制して、参式は肩を捕まれたまま、引き摺るようにマザーを収納されたドームの側まで連れて来る。


「貴様……まさか」

「お前は、この世に残さん……たとえここで、俺が滅ぼうとも……!」

「理解不能……何故己でもない者達の為に、そこまでしてあがく。大人しく……喰われろ!」

「ぐうぅ……」


 一際強く放たれたマザーの意思に呼応して、参式の侵食が早まった。


装殻解除(シェルアウト)


 後一歩のところで参式の足が止まり、心核(コア)エネルギーが切れた参式装殻が解除される。


「終わりだ、花立トウガ。このまま……!」

『そら、許されへんわ』


 マザーが会心の笑みを浮かべるのと、その声が響いたのは同時だった。


『オメーは、ここで俺と一緒にくたばるんや。往生際悪いで』


 マザーから響いてくるその声に、トウガが目を見開く。


「カズキ……!?」

『おう。信じとったで、トウガ。オメーなら、マザーをきっちり追い込むやろ、ってな』


 マザーの左目だけが形を変え、トウガを見た。


「井塚カズキ……何故貴様が……!?」

『ああん? 俺が何年、オメーの侵食と戦りあっとったと思ってんねん。死んだフリくらいは出来るわ』


 井塚の目が、得意気に細くなる。


『マザー。オメーはここで俺と死ぬんや。ミツキが住むこの世界に、オメーみてぇなけったいな石コロを……残す訳にゃいかんのじゃ!』


 どん、とマザーの腕がトウガを突き飛ばし。


『じゃーな、トウガ。また会ったら、呑もや。オメー弱ぇけどや』

「カズキッ!』

「に、人間如きがぁああ! 私が滅んでも、対人破壊知性体(オーファンウィルス)はまだ……ッ!」


 地面を軽く蹴って、マザーの体を操る井塚が背後の収納ドームに体を預け。


接触確認(ウェイクアップ)補食(プレデイション)


 条件行動(オートプログラム)により、黒いドーム型装殻が瞬時に口を開いてマザーを呑み込んだ。

 人類を脅かした襲来体母体(マザー)は。


 こうして、ひどく呆気ない最後を迎えた。


 そして、呆然と立ち尽くすトウガの肩を、装殻を解除したハジメが近づいて叩く。


「戻ろう。……終わったんだ、花立」

「終わった……?」


 まだ実感がないのか、ぼんやりと花立が繰り返し。


「終わっただと……!」


 歯を剥いて、怒りを浮かべながら、トウガが叫ぶ。


「ふざけるなよカズキッ! 一人で格好つけやがって! 何が信じてただ!? 言えよ! 何で相談しねぇんだよ! 俺はそんなに頼りねぇか!?」

「花立……」

「どいつもこいつも、俺を残して勝手に死ぬんじゃねぇよ! 何の為に戦ってると思ってんだよ! お前らに平和に暮らして欲しかったんだよ、俺はよぉ!」


 何も答えない黒いドームに、花立は言葉をぶつける。

 ハジメには、月光に照らされる花立が、涙を流さずに泣いているように見えた。


「英雄になれない? じゃあお前のその行動はなんなんだ!? 他人の為に自分を犠牲に出来る奴を、英雄っつーんだよ、馬鹿野郎! でもなぁ!」


 荒く肩で息をしながら、もう二度と手が届かない戦友に、言葉だけでも届けようとするかのように。


「ミツキだって……お前が英雄になるよりも! 例え離れてても、お前が生きてる方が、良かったに決まってんだろうがッ! この、 大馬鹿野郎がァーーーッ!」


 まるで、花立の叫びに呼応するように、残っていた大阪隕石が震え。

 コアを失って力を失った為か、表面から砂となって崩れていく。


 やがて、その場にあった痕跡すら残さずに隕石が消え失せ。


 夜の闇は一人の男の死と共に、全ての真相を覆い隠した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ