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アフターサラマンダー  作者: ぬるいコンポタ
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プロローグ

子供の頃、僕は異世界に憧れていた。

空を飛び交うドラゴン、人間以外の種族達、王の気高い側近騎士、そして魔法を巧みに扱う魔法使い。

僕はその魔法使いに憧れて何度も空想遊びをした。

しかし、それらは全て夢物語。

現実なんて在り来たりで退屈な日々だ。

それでも満足はしていた。


でもまさかこんな事になるとは思っていなかった。


「こちら第一探索隊。現在緑園の森にてガルザルド帝国と交戦中!繰り返す!」


樹木が覆い茂森の中、鎧を着込んだ人達が巨体で筋肉が発達したオークと呼ばれる種族と戦いを繰り広げられていた。

足を切られその場で崩れるオーク、オークの棍棒によって吹っ飛ばされる兵士達。まさに戦場だ。


僕と言うと、初の探索任務で交戦が始まった事により臆して倒木の裏に隠れていた。

普段通りに呼吸をしている筈なのに吐いた息は震えており瞬きをするのも忘れていた。


「よっ!もしかして初の出撃か?」


そう聞いてきたのは今回の任務で隊長を務めるジュディアスさんだった。


「は、はい!簡単な探索任務って聞いていたので雰囲気を掴む為にも」


普段通りに返事したものの浮かべた笑顔は堅苦しい物になっているに違いない。


「そうか、実は俺もなんだ。先輩方は嬉々として先程オークに立ち向かって踏み潰されていったしな。どうした物か……」


ジュディアスの言葉に釣られ僕はそっと倒木から顔を出し先輩方の行方を捜した。


その姿を見つけると、僕は凍りついた。

半開きの口、目を見開いてこちらを見ている様はまるで僕の順番を暗示しているように思えた。


「さて、どうやら俺とお前だけ残った見たいだ魔法使い。俺は隊長としてのケジメをつける為にオーク達に立ち向かう。お前は逃げてしまっても構わない。誰も責めやしないさ」


ジュディアスさんがそう言うと立ち上がり倒木を飛び越えた。

僕はあまりにも現実離れしたこの状況で緊張とは違う感情が心の奥に灯るのを感じた。


それは興奮だ。今まで憧れはしたものの夢物語として諦めていた世界に自分はこうして生きている。

きっとジュディアスさんも似た気持ちだったんだろう。立ち上がった時、彼は笑っていた。



「僕は……僕は!いずれ炎魔と呼ばれる魔法使い!サラマンダーだッ!!」



自分を奮い立たせふ為に心の奥から叫んだ。

倒木の向こうからはジュディアスの叫び声が聞こえた。


「ジュディアスさんに続くんだ!」


最後の一人になった僕は立ち上がり倒木を乗り越えオークへ立ち向かった。


「おん?なんだー、まだ居たのか」


しかしそんな勇気も虚しく、のんびりとした口調のオークの一薙ぎで僕は絶命した。

暫くすると倒れていた先輩方の一人がムクッと立ち上がった。先程僕が目を合わせた人だ。



「えー、こちらは全滅の為捕虜や勧誘は無し。これよりここ一帯はガルザルド帝国の領土とする。これでいいか?」



先輩がそう言うと他の絶命した我が隊の兵士達も立ち上がる。


「おん、それで構わねぇよ。じゃあ旗を立てておきますね。あ!規定によりここ一帯は一時間の侵略が禁止だね。ではいい試合でした」


オークがそう言い終えると先輩と握手を交わした。

すると森のどこからかアナウンスが流れる。



『えー、緑園の森にてシュラード王国とガルザルド帝国による交戦が現時刻を持ってガルザルド帝国の勝利に終えました。これより、緑園の森は一時間休憩所とします。別国の友人とお話しを楽しんだり、ガルザルド帝国を称えたり等、自由に場所をお使い下さい。では良きLARPGを。以上Another運営でした』



異世界は結局は未だに夢物語だ。だけど人間の想像力と場所があればそれを擬似的に再現する事は可能である。

ライブアクションロールプレイングゲーム、略してLARPG。



一時だけ現実を忘れ、夢の住人に成れる大人の空想ごっこだ。


異世界物も良いがLARPGと言うものが存在する事をより多くの人に知って欲しいと思って出来た作品です。


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