作成
まだ主人公の名前は出ません
タツと手合わせしてみてわかったことがある
刀を十全に扱うだけの技はまだない。が、それは発展途上ということ
つまり、今のタツに合う最高の刀を用意出来れば化ける可能性があるということ
それはつまり
「私が作ればタツを強くさせるだけ、か」
そんなことはわかってる、がこの街でそれは自傷行為に近い
ただでさえ周りが強くてこれ以上ランクを上げるのが辛いこの状況なら尚更だよね
「いや、違う。タツが強くなれば私も楽しめるんじゃない?」
ならやるしかないね―――私の為にも
やると決めたからには最高の作品を作る
それは私自身が決めたコトだ、貫かないわけがない!
作業場である工房に入り、炉の前で『理想の刀』を想像する
私の能力は想像したものを作るための道標が見えるというものだ
今回のように理想を想像するとそれに必要な材料が浮かんでくる
それを用意し、また想像すると今度は工程が浮かんでくる
真っ赤になった熱くなった鉄を叩いて延ばして一度割る
これで良い鉄とかがわかるものだが私には必要ない
割れたものから必要分を取りてこ棒に積み上げ、炉に入れて溶かす
この時に粘土などを先に鉄にかけておく。すると形を保ったまま溶けるのだ
それを叩いて伸ばして半分切れ目入れて折りたたむということを20回ほど繰り返す
これに規定回数とかはない。今回はそうしたらいいだけ
途中で性質の違う鉄を入れたりしながらやれば更にいいものが出来る
そうして出来た物を刀の形に整えればおおよそは出来上がりだ
ここからは斬れる刀を作るなら必ずやることだ
焼刃土と呼ばれる粘土っぽい粉を刀身に塗れば、皆知ってると思う波紋が浮かび上げるようになる
厚く塗ったところと薄いところで温度差が生まれるが、研ぐとその温度差で波紋が浮かび上がるというものだ
このあとは焼き入れだ
刀身を熱して水につけて冷やすだけ、と思いがちだがここが凄く重要なところだ
刀身の温度が低ければ焼きが入らないし、高ければヒビが入る
職人が自分の目と感覚だけを頼りに繰り返すこの工程は神経が異常に磨り減っていくんだよ
その工程を過ぎればあとは刀の形を整えて、あとは銘を入れれば完成
「この作品の名前は何にしようかな…」
タツにあげるものだし、タツっぽい方がいいよね
じゃぁ『ファラク』にしよっと
タツ=竜って安直だけどいいよね、確かイスラムの竜の名前だったと思う
さて、タツに完成報告しよっと
探したら簡単に見つかった。ていうか家の居間にいた
なんかめっちゃ寛いでるんだけど…まぁいいんだけどね、いつものことだし
「タツお待たせ、完成したよ」
「お、待ってました!」
はよ見せな、と催促してきたけど
「先に言っときたいことあるんだ」
刀を差し出しながらそう言ったら「なんだ?」と受け取ろうとした手を止めた
「この作品を壊したら次は作ってあげない。その覚悟をしといて」
「つまりバカすんなってコトだろ?わかってるよ」
「そうだよ、今日みたいなことあったらもう二度と作らない」
私が本気だということがわかったのか少し考えて「わかった」って答えた
本当にわかったのかな…少し不安だけど、あげることにした
「うっひょー!良い感じのフォルムだな!あ、そうだこいつの名前は?」
「ファラクだよ」
「そうかファラクか…よろしくな!」
そこまで喜んでくれると作った身として嬉しいな
あ、そうだ
「タツの戦った相手のこと詳しく教えてくれない?」
「は?なんで」
そりゃもう決まってるじゃない
「タツにリベンジしてもらう為だよ!」
せっかく新しい刀をあげたんだから勝って欲しい、ただそれだけ
言ってしまえば私のわがままだけどね
「まぁいいけどさ、知ってることなんてたかが知れてるぞ?」
それから話してくれたのは、名前がミヒトで13歳くらいの男の子でゴーレム使いだということだけだった
でも、重要なことも少しはあった
そのミヒトってさ、ゴーレム何体出せるんだろうね。もし戦ったときと同じ2体までだったら戦いようはあると思うんだよね
更に1日に出せる限界数もわかれば勝率はグッと上がるしね
そう話してみたら「もしかして俺勝てる?」と乗り気になってくれた
戦う気があるなら作戦くらい練ってあげるよ
それから私達はミヒトの仮想弱点と攻略法、そしてその道順を話し合った――――といってもほとんど私が話してただけだけど…
でも作戦が出来たおかげか『勝てる?』から『勝てる!』に変わった
勝つビジョンが頭の中に出来上がったみたいだし、あとはタツ次第だね
「見つけたぞミヒト!この間は負けたけど今日は負けねぇぞ!俺と勝負しやがれ!!」
「…別にいいけど、あんたにボクを倒せるの?」
「この前は油断と慢心で負けただけだ!今日は必ず勝つ!!」
刀作りを少し詳しく書いてみました
次話は戦闘です
主人公と立てた作戦とはいかに!?
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