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これまでの私の苦労は何だったの?!

作者: Ash

あー、ここ、乙女ゲーム『シズナル学園の恋愛革命』、略して『シズレボ』の世界だ。


良かったことに、今はまだ吊るし上げを喰らう段階じゃなかった。

ありがとう、神様。

不信心者で寄付なんかお金の無駄だと思っていた私にすら寛容なあなたをこれからは信じます。


私はタンジー・ララクレマ。一応、男爵令嬢をやっています。

乙女ゲームの男爵令嬢と言えばヒロインかそのサポートキャラだと決まっているけど、『シズレボ』では私は悪役令嬢。


攻略対象の婚約者でもない、ごく普通のモブのような存在ないのに、何故か悪役令嬢。

悪役令嬢に仕立て上げるゲームじゃないのよ。

私は攻略対象に一方的に熱を上げているキャラでもない。

それなのに悪役令嬢。

何故なら、私はファッションリーダーだったから。


苛めたなんて大嘘吐かれたのも、お金のない特待生だってそれなりの格好をしているのにヒロインがお金を使うのは攻略対象と言う名のヒモだけで――


え?

攻略対象がヒモなのがおかしい?

全員がそうじゃなくて、ある特定の人物がそうなのよ。

それはヒロインのせいで怪我の後遺症のある腹黒キャラ。

ヒロインに傍にいて欲しいからと呼び出すから、責任を感じているヒロインが貢いでしまって、代わりに他の攻略対象がヒロインに貢ぎまくるの。


おかげでファッションリーダーの私は一度袖を通した服は着ないからと、ヒロインに新品同然の服を上げるんだけどそれを嫌がらせや嫌味だと受け取られるわけ。


家業の手伝いとして顧客層のいる場所ではマネキンのように新商品の宣伝を兼ねた格好をしているから、有り余っている服を上げているだけなのに、この扱いはないでしょう?


攻略対象の一人が我が家のライバルのデザイナーだから、私の断罪で実家も没落してしまうし、詰んでいるわよね・・・。



さて、ここまで思い出してしまったからには在籍しているシズナル学園を去っても誰も責めないと思う。

だいたい、シズナル学園は貴族の子女が通う結婚相手探しの場も兼ねた教育機関だから、家を継がない私が通う必要はなかったのよ。

でも、そこは家業をやっていく為に必要な人脈を作る場所だからと叔父に言われて通っているの。

確かに人脈は作れるけど、我が家の金目当てで近付いてくるのやら、体目当てのゲスも多いから気分良くはないわね。

そこを我慢しているのに、乙女ゲームの世界だから没落しますってわかったらどうする?


あなただって没落確定しているゲーム舞台から自主的に退場するでしょう?

え?

迎え撃って返り討ちにしてやればいい?

ごめん!

そんなことできない!

無茶言い過ぎ!


それをするには悪魔のような狡猾さと狡賢さと冷血さが必要だわ。――簡単に言えば、抜かりのない計画とそれを実行できる冷酷さが必要ってこと。

私だって商売人の端くれだからある程度はできるけど、そこまで恐ろしいことができるだけの能力はないわよ。



そうとわかったら、早速、叔父のところに行って退学の手続きをとってもらわなくっちゃ。


え?

どうして、父親じゃなくて叔父のところかって?


待って! お父様は存命中だから!

両親ともに健在だから、お願いだから勝手にお父様を殺さないで!


え?

重病?!

違う、違う!

病床に着いて早、何年ってわけでもないから!

今日も元気に2ヘクタールの畑仕事をしているくらいよ!

だから勝手に病人にしないで!


お父様はお人好しというか、騙されやすいというか、当主としてはかなり駄目駄目な人なの。

何をやってもうまくいかず、結局、細々とした我が家を没落に導いた人。

幼心に押しかけて来た金貸しを見て、私がなんとかしないといけないと思ったくらい。

そこで私は訪ねてきた叔父に頼み込んで、お父様を隠居させてララクレマ男爵家の実権を握ったの。

勿論、叔父の後見を受けてね。


叔父も自分の実家が傾いていくことを憂慮して、父から奪い取ろうとまで考えていたくらいだったから、表向きは病気療養ということで私が当主代行の座に就いたことには文句なかったわ。

ただ、従兄弟との婚約はさせられたけど、仕方ないわよね。

その後、弟が生まれて私は跡取りではなくなったけど、あのお父様に実権を戻すことだけはできないから、私と叔父が今もララクレマ男爵家を支えているのよ。


と、まあ、こんな事情なので、お父様は畑仕事に従事するようになったので、ピンピンしているわけ。


え?

私?

転生したチートやら、前世の知識を使ったんじゃないかって?


そんなもん何もないわよ!

全部、自力よ!

転生したことだって、今、思い出したばかりよ!


今までのその努力を乙女ゲームだか何だか知らないけど、滅茶苦茶にされて堪るもんですか!


あ、こうしてはいられないわ。

早く、叔父のところに行って、退学手続きしなきゃ。


さよなら、シズナル学園。

不快な思い出しかないシズナル学園とこれでおサラバよ!


私、タンジー・ララクレマは商売人としてしっかり儲けるから、その成功を見守っていてね、シズナル学園!


さよなら、没落!

タンジー・ララクレマはシズナル学園ではなく、商いの世界で頑張るから!

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