世界に一つだけの指輪<解答編>
とある大富豪の少女は、三十歳になるのを気に、結婚することを決めた。しかし、幼い頃に別れた少年、「ケンタロウ」のことを忘れられないかった。
そこで、少女は「ケンタロウ」と名がつく男性を集め、「世界に一つだけの指輪を持ってきた人と結婚する」と約束した。
少女にとっての世界に一つだけの指輪、果たしてそれは一体何なのだろうか?
カフェオレを持ってかたまっているUを見ながら、Tは残ったコーヒーをすべて飲み干す。
「どうした? ギブアップか?」
ニヤニヤしながら見ているTを見て、Uは持っていたカフェオレを一気に飲み干した。
「あーもうわからん!」
「うむ、じゃあ答え合わせの時間だな……っと、ここじゃあれだから外に出よう」
そう言うと、Tはコートを着て勘定を持ち、立ち上がった。
「お、おごってくれるのか? ラッキー」
「まあ、たまにはな」
Tが会計を済ませると、Uと一緒に喫茶店の外に出た。
相変わらず、外は冷たい風が吹き抜ける。それも構わず、Tはつかつかと歩道を歩いていく。
そして、自動販売機の前で立ち止まった。
「あれ、さっき喫茶店でコーヒー飲んだばっかりだろ? もうのどが渇いたのか?」
Uは不思議そうにTの後ろで立ち止まる。
「まだわからないか? 答えは目の前にあるのだが……」
そう言うと、Tはお金を入れ、適当に缶ジュースを選んだ。そして、出てきた缶ジュースをUに差し出す。
「ほら、これだよ、これ」
「これ、って言われても、指輪になりそうなものは……」
Uは缶をじろじろ見るが、見当が付かないようである。
「ほら、この指をかけるところ」
「え、この缶開けるところ? でもこれ指入らないじゃないか?」
そう言うと、Uは缶の開け口に付いているリングに指を掛けようとした。
「こういう、缶きりとかを使わずに缶を開けられるものをイージーオープンエンドって言って、特に一部だけを開けるものをパーシャルオープンエンドって言うんだ。パーシャルオープンエンドの物にも二種類あって、今はこの缶ジュースのように、リングを起こして飲み口を開けるタイプ……ステイオンタブ式っていうのが主流なのさ」
そう言うと、Tはリングを起こして缶を開けた。
「ふぅん、で、これがどうやったら指輪になるのさ?」
「そう、今はこれが主流だけど、昔はこのリングを引っ張って開けるのが主流だったのさ。プルタブ式って言うんだけど、聞いたこと無いか?」
「プルタブ……ああ、そういえば昔はそんなんだったな」
「そう、プルタブ式の缶は、開けやすいようにタブのリングが大きめなんだ。だから指にもはめられる。タブは缶から外れちゃうから、これを集めた懸賞もやってたわけ」
「なるほどねぇ、確かに昔ならいっぱいあっただろうし、指輪みたいにして遊んでいた子もいるだろうなぁ」
そう言うと、UはTから缶ジュースを奪って一口飲んだ。
「そういえば、このプルタブを集めたら、車いすがもらえるっていう話を聞いたことがあるんだが」
Uの質問に対し、Tは首を振った。
「昔は、プルタブが缶から離れていたから、それを散らかさないように集めるためにそういうチャリティーがあったんだ。でも、今はわざわざ外して集めるメリットはないし、缶のまま集めた方が効率的だ。今でもプルリングだけ集めている団体があるようだが、リサイクル会社は推奨していない。そういうデマには踊らされないように気を付けないとな」