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繭
それは、小さな水溜まりであった。
ぐるぐると、黒い渦を巻いているそれは、ここ最近快晴続きの道路上では、余りにも異質であった。
しかし不思議と、行き交う人々の目には止まらない。
時には太陽の光を反射し、時には月の柔らかな光を吸収しながら、ただ渦を巻いて、そこにあった。
変わらぬ黒を内に抱えたまま。
そう、しばらくの間は-。
人は、気づけなかった。
水溜まりが少しずつ、ほんの少しずつ大きくなっていることに。
だんだんと、渦が速さを増し、黒がより黒くなっていることに。