バナナの売り方
まだ夏休みも始まってないというのに、冬休みのことをもう考え始めているのはきっと俺ら位だろう。バナナをいかに売りさばくかという商業的な冬休み。それが俺らにとっての学生生活最後の冬休みとなる。ていうか卒業論文だ。
経済学部に所属するごくごく普通の俺らは、これまで色々な経済関係の勉強をさせられてきた。だがしかしコレといって何も記憶には残っていない。毎日学校に来ては雑談に追われ、無駄に過ごしてきた大学4年間。もちろんまだ仕事も決まっていない。卒業したらきっとニートだろう。そんな風に思っていた。
転機が訪れたのはそれから数日後。友達4人と、今日も食堂で雑談に明け暮れていると、ゼミの先生と偶然出会った。彼は俺らに卒業論文について”相談”を持ちかけてきたのだ。彼のメンツのためにもどうにかして書かなければならない。最悪4人で一緒に書けばいいからと言われた俺らは、とりあえずテーマ作りから始めた。
経済学部だから経済関係じゃないといけないと、これでも考えた俺は、とりあえず手に持っているバナナをどう売りさばくかにしようと提案。とりあえずパラパラと教科書をめくり、適当に見つけた理論にしたがって売りさばいてみようということにした。
マーケティングといえば需要と供給。これは中学か高校で習ったような気がする。高かったら買わないし安くても品質が悪いと買わない。逆に高くても品質が良ければ買う。これを利用して、ひとふさのバナナを大量に同じ値段で売るのではなく、それぞれをランク付けし、それぞれにいくつかの分野にわけたグラフをシールとして貼り、それを売る。レジには通しにくいような売り方だが、一番売る方も買う方も喜びそうな気がするということで全員納得し、それを夏休みに行い、冬休みまでにまとめることにした。
だがここでいくつか問題点が浮かんできた。夏休み、俺らはほぼ毎日バイトをしなければならない。全員が揃うということはまず無い。それに、そもそも売るための資格か何かがいるのであればそれがない。路上でバナナを売っている人を今までに見たことがない。最後に就活。ただでさえ遅れているのに夏休みを無駄には出来ない。面接時に「卒論でバナナを売っています!」と言うのは果たしてアピールになるのだろうか。
そうしているうちに、さまざまな不安を抱えたままついに夏休みに突入した俺ら。結局何も進まず、夏休みは机上の空論だけで4人で何とか書ききった。だがもちろんゼミの先生はこれを通してくれず。商業的な冬休みに突入することになってしまった。
ていうかこれ経営学じゃんって思ったのは、冬休みが始まってすぐの補講の時間だった。