原色エレメンタリー
ここは精霊の里。
色素の精霊たちの里。
藤色、桜色、若草色、金色。
その一角に輝きと個性をひときわ放つ、原色たちがいた。
青、緑、赤、藍、紫、黄、白、黒。
これは、彼らの日常である。
☆ ☆ ☆
こんにちは。僕の名前は青。
水に類似した力と全ての青を支配する力をあわせ持つ、青の精霊です。
僕はいつも、「シアン」という猫だか人間だかよく分からない生物に宿っていますが、いまは里帰りしています。
何故かと言えば、今日から年始末休みだからです!
ほら、むこうから歩いている……いえ、走ってくる白と黒も僕らの仲間である、色素の精霊です。
「おい青!見てないで手伝え!!」
「ちょっと青!見てないで助けてよ!!」
ありゃ?今日は珍しく黒が白を追いかけてるみたいですね。
え?何もしないのか、だって?
そんな厄介事に巻き込まれたくないから傍観しますよ。面倒臭いですもん。
「ヨーッス!ひさしぶり!!」
「やあ、青」
今、声をかけてきたのは黄と紫です。
「うん、おはよ」
正直言って、僕は黄があまり好きではありません。
賑やかでやかましくて、うるさくて子供っぽくて。
僕の性には合いません。
対して、紫は物知りの優等生タイプです。
紫は、なんで黄とうまくやってけるんだろう、と不思議になります。
実は、隠れ熱血なのかもしれません。
あ、あそこで誰かと話してるのはもしかして緑!?
もっと近づいてみよう……やっぱり緑だ!
わ〜いわ〜い!!
…あれっ。
そばにいるのは藍…なのかな…?
藍は色素の精霊のなかでは変わり種で、大七元素の精霊に類似した力を全て使えるんです。
僕と仲の良い、水の精霊も大七元素の精霊の1人です。
だから僕は1つしか力を使えません。
それにしても、どうして緑と藍が一緒にいるんだろう。
あの2人はキョーレツに仲が悪いのに…。
羨ましい…ハッ!
と、ともかく!
緑と藍は、10メートル先で相手を見た瞬間に、2人とも身を翻して来た道を帰っていったこともあるぐらい、仲が悪いんです。
「青〜」
ろ、緑が手を振ってくれてる!行かなくちゃ!!
「おいでおいd((ぐぼは」
僕の大好きな緑に体当たりする不届き者発見!
「へへ〜ん!どうだ青」
……どうやら、僕にケンカを売ってるみたいですね…。
よし、そのケンカ買ったる!
ってよくみたら、赤!?
前言撤回!回れ右!!
「逃げんな!」
うわ、追ってきた!?
う、嘘!逃げられな――。
どかーん!
な…何が…起こ……。
薄目で様子を窺うと…、赤と白と黒が倒れてて、もちろん僕も倒れてました。
「青、大丈夫か?」
「赤……そうゆう馬鹿なことはするなよ…無事で良かったけど」
「う、ぅ〜ん…あれ? 白?」
「う゛ー。頭痛い〜」
え、状況が全然分かんないよ。
確か…赤の使った炎が僕の逃げ道を塞いで、黒い影が横切って、物凄い音がして…。
「赤に捕まった青と、走ってきた白と黒が衝突したんだよ」
「え、そうだったの!?」
「んなのはすぐ分かるだろ」
「藍てめえ、顔貸せや」
「殺れるもんならな」
「安心しろ、殺してやる」
「藍の言う通りだよ青!ったく、青はいつも緑とイチャイチャして!!」
「赤は俺とイチャイチャしたいよな?」
「あ……ぅん? え、ちょっと待ってってば! 藍!!」
「い……いちゃいちゃしてやがる……」
「何? 羨ましいの? なんなら僕が黒を襲ってあげようか?」
「ちっが……!! 先手必勝! 逃げる!」
「あはは〜まてまて〜!」
しょっちゅう攻受逆転する白黒は慌ただしく去っていきます。
これが、僕らの日常です。
余談だけれども、色素の精霊は全員男なんです。
そのなかでカップリングなのは白と黒のみだと、女神様は言ってました。
おかしいよね?
僕と緑はこんなにも両想いなのに。
「ねぇ、緑?」
「ん?」
大好きだよ。
緑×青、藍×赤が確立していない訳は、青×赤、赤×青が成立する可能性があるからです。
ちなみに緑×藍もあって、これは緑がヤンデレなルートです。