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005 白のトラップ

 とある三島に写メ撮られた翌日。GW(ゴールデンウィーク)の月曜日。


 今日は朝から大荷物を持った三島が特攻しかけてきた。もちろん比喩である。

 その特攻野郎はでかい段ボールと紙袋をぼくの前に置いた。ガーネットちゃんの前には紙袋だけなのに。


「おい三島、これ何?」

「服」

「は?」

「クラスメイトに頼んでいらない服もらった」

「え」


 くらすめいと?


「ちょ、どういうこと」

「昨日の写メみんなに回して今の青木、えっとるなちゃんに合いそうな服もらってきた」

「え? あれ? まって」

「ん?」


 わざとらしく首を(かし)げる三島。腹立つんだけど。


「もしかして、クラス全員もうぼくの事……」

「あ、うん。クラスにはオレが教えた」


 どやぁ、と言わんばかりの笑顔。凄く腹立つんだけど。


「という訳で、この服はるなちゃんのものです。あ、紙袋の方は下着ね」

「え、あ、え」

「さぁ、れっつ着替え!」

「ふっざけんなあぁあぁ!!」

「るなちゃんるなちゃん、ここ病院だからお静かに」

「うぎぎぎぎ」


 こいつに正論説かれるとかもう屈辱でしかない。

 しかし、今着ている服はサイズが合ってないのも事実。不本意ながら、カーテンかけて着替えることにしてみた。

 ……袋開けたらかぼちゃパンツが沢山ってどういうことなの。とりあえずくまさんを選択。

 それから、猫の足跡の描かれたトレーナーと、下はスカートしかないので青いのを適当に。靴下はいて完成。

 ……なんでサイズピッタリなんだろうね?


 カーテンを開けると、三島が踊っていた。両手を広げて、腰を左右に揺らす。いったい何がしたいんだ。


「るなちゃん似合ってるよ」


 今のお前に呼ばれたくない。っていうかなんなんだるなちゃんって。

 そしてそのまま向う――ガーネットちゃんのベッドのカーテンが中から開いて、


「お兄キモい」

「ぐはぁ」

 がらっ


 三島を撃墜した。ガーネットちゃんマジGJ。――だが、それと同時に扉が開いた。

 入ってきたのは普人(ヒューマン)の女性が二人。金髪の人と黒髪の人。どちらも髪は腰ぐらい。黒い方は足怪我してるっぽい?

 金色の方はどことなく見知った雰囲気があるんだけど……。


「おじゃましまーす。えーと、これがるなちゃん?」


 ぼくの方を指さして言う金髪。

 誰ですかアナタっ! なんでおれ(ぼく)の名前をっ!


「ふはははは、誰かがおれのダンスに感想を入れたら入ってくるように示し合わせていたのだ」


 いつの間にか復活(リザレクション)していた三島が、驚愕というほどでもない事実を告げる。

 こんなとき、どんな風に表情筋動かせばいいかわからないの。


「わけがわからない」


 これがぼくの素直な感想である。


「まあまあ、とりあえず紹介するよ?

 部長、このベッドの妖精さんがクラスメイトの青木翔、改め青木るな、だよね? で、るなちゃん、こっちの足怪我してる人が玄冬高校のテニス部部長の鈴村(はるか)さん」

「いや、その前にあなたは誰ですか」


 なんだかぼくを知ってる風な金髪さんに突っこんでみる。つーかクラスメイトに金髪なんていねぇ。そしてその答えとして、


「ひどーい。って言いたいけど学校じゃウィッグ(かつら)つけて無いしるなちゃんじゃわかんないか」

「あれ? 熊切さん!?」

「わーい、あててくれたー」


 金色のかつらの下から、黒髪ショートのクラスメイト、熊切刹那さんが現れた。


「なんでそんなの持ってるの」

「これずれたりしないように暴れまわるの大変なんだからねー?」


 そして、熊切さんはかつらを着け直して台詞を続ける。


「まあそれはそれとして。

 ――と、云う訳でここでネタ晴らし。

 昨日そこの三島君からるなちゃんの画像がクラス全員に送られてきて」

「三島てめぇ!」

「るなちゃんここ病院」

「うぎぎ」

「で、そのメールに、『みんなの服るなちゃんに送って転校できなくさせようぜ』と書かれてて」

「え?」

「で、さらに女子からの援護射撃を追加してみた。

 具体的にはその下着」

「この、……かぼちゃパンツに何かあるの?」

「いえす。

 その下着、クラス全員――るなちゃん除く全員のワリカンです。あ、選んだのは女子だけだけどね?

 そして、るなちゃんの両親に頼んで、るなちゃんが玄冬高校から出て行った場合、しばらくお小遣い無し、と」

「脅迫!?」

「いいえ、取引です。人聞きの悪い。……ついでに、転校する(でていく)ならその下着代を払って欲しいなあと。ちなみにレシートはここに」


 懐から白い紙――レシートをだすかつらさん。もとい熊切さん。


「え? 何事? いつの間にか逃げ場無し?」

「そうですね。こんな時だけ頭の回る三島君が大活躍してました」

「あれ? オレ地味にけなされてね?」

「つーかなんで転校がどうのこうの?」

「……るなちゃんは、最初から転校する気はなかったの? それとも、玄高に寮あること忘れてた? えっと、それから、……三島君から逃げ切れると思ってたの?」

「オレ!?」


 すげぇ。漫画の名探偵みたいだ。何故犯人がぼくなのか。


「……玄高の寮ってなんて言ったっけ?」


 本気で忘れてました。


「水蓮寮。ほらお見舞いのリンゴあげるから泣かないでちょうだい」


 そう言って鞄から林檎を取り出す熊切さん。そんなんで誤魔化され、誤魔化され……ッ



 そんなんで誤魔化される自分が憎い。しゃくしゃく。

誤魔化されるなー

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