004 赤面する妖精
看護師さんと自衛隊が部屋から出て行った後。
残されたのは妖精が三人とその取り巻き。
そして微妙な空気。
しかし、
「いやー、にしても青木が妖精郷やってるとはうすうす知ってたけど」
空気の読み方を知らない馬鹿が一匹紛れ込んでいた。
「何で知ってんだよ」
「え? お前中学の修学旅行で千葉にあるくせに東京を自称するテーマパーク行ったとき一人だけ手のひら妖精でテンションダダ上がりだったんだろ?」
「何で知ってんだよ!」
お前と会ったの高校からだよ! 何で中学の事知ってんだよ!
「藤田に聞いた。後、玄冬高校に来たのも修学旅行が東京だからってのも聞いた」
うあああ
「もうやだこいつ。夢なら覚めて」
「『夢なら後で笑えばいい。今を楽しむんだ』って今オレが言った」
お前かよ!
「……じゃあ、楽しむためにお前を殴ろう……っ」
「そういう楽しみ方は無しにしようぜ? ……じゃあそういう訳で」
どういう訳かは知らないが、三島は自身の家族の下に行った。
「えーと、翔?」
「何? お母さん」
馬鹿が行って、ぼくも家族と会話する。
「んー、あー、翔は、ゲームしてて、そうなったのね?」
「そうだけど」
……嫌な予感がしてきた。
「翔は、その女の子でゲームしてたの?」
「うん、そう」
うあああ恥ずかしいいい何この親バレえええ
「どうして、って聞いてもいい?」
「いやだって、ずっと画面に映るキャラぐらい自分の好きなのにしたいじゃん! 決して姫とかそんな目的でネカマしてたわけじゃないよ!」
「ねかま?」
え、お父さんの本日第一声がこれとか。
「……中の人が男な女キャラの事」
そして説明する恥ずかしさ。もうさっきからぼくの顔真っ赤になってるはず。
「そうか」
そして訪れる沈黙。周りから声が聞こえるのがまた痛い。
「ああ、翔。 服どうする?」
「服?」
沈黙を破った声に従い、ぼく自身を見る。
ぶかぶかの服、っていうか昨日の夜、来ていた服。
「新しい服必要でしょ? どうしましょう? サイズは病院で測ってもらえるかしら?」
「別に、病院に居る間は今までの服でいいと思うけど」
「そう? じゃあ、後でもってくるわ」
ぴろりん
「――って、何脈絡無く写メってるんだよっ!」
唐突にぼくを撮った三島の言い訳はいかにっ!
「かわいかったから」
「ならしょうがないわね」
「お母さんっ!?」
そしてなぜかお母さんの一言で許される三島。
「じゃあ帰る」
「ちょ、待て、逃げんな! 消せ!」
「おつー」
「あっ」
逃 げ や が っ た 。
昼頃、サイズ測られたりした。
夕方、サイズの合っていない着替えと、桶と石けんとタオルがお母さんから持ち込まれた。
夜には、お湯を持ってきてもらったのでタオルで拭いた。風呂? 看護師さんに許してもらえませんでした。三島の妹さんは行ってたけど。
ところで、へそが無かったり、羽に実体が無かったりするんだけどなんなんだろうかこの妖精は。




