002 妖精の目覚め
暖かい。唐突にそう思った。
もう少しこの暖かさに包まれていたい。
ふと、どこかから音が聞こえた。
この暖かさが奪われる、そんな風に感じた。
「う、ん……後5ねん……」
「長っ!」
驚いて目が覚めた。
目が覚めたら、直ぐそばにお母さんが居た。っていうか近い。なんで顔を覗き込むの。
「翔? 翔なの?」
「え? 何言ってるのお母さん」
そんな当たり前のことを。
と、ここで起き上がり、あたりを見回して気が付いた。
「病院……?」
そう、病院。お母さんの後ろにお父さんと看護師と……緑色の服を着た2人組。幾つかのベッドのある白い部屋。その内ぼく以外に2つの人の塊がある。
と、お母さんが口を開いた。
「……昨日、翔が風呂に入らなかったから、気になって部屋に入ったのよ。 そしたら中であなたが倒れれて……」
「いや、何いって……」
そう言って、お母さんに手を伸ばそうとして、気付いた。手がいつもより小さい。
「え?」
そうして見れば、身体自体が小さい。シーツで見えないとはいえ、そのシーツの盛り上がりの範囲が小さすぎる。それに気配に、匂いが今まで以上に感じられる。
「え?」
そこで、看護師から手鏡を渡された。
「どうぞ、自分の顔を見てください」
小さくなった手で、言葉に従って鏡を覗き込む。
そこには、黒い前髪をすぱっと切った、青いグラデーションの瞳のちびっこが居た。
ほっぺたをつねってみた。鏡の中のちびっこもほっぺたをつねってる。
どうやら夢ではないようだ。
手を放して隣を見る。お母さんとお父さんと看護師さんがぼくを見てる。
「どういうことなの」
「そういうことです」
わかんないよ……!
かくして、“死神”は目覚めた。
って書くとグロっぽく見える不思議。