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「いつか うたで、聞いたことがあるの。
高い高い空の上。虹の向こうがわの、どこかの話。
青く澄んだそこは、どんな夢も叶えられる場所なんだ、って」
「星にねがいをかけたら、かなうかしら。
ある日目を覚ましたら、雲がかなたにあることに気付いて。
悩みごとなんて レモンドロップみたいに溶けてしまって。
煙突の天辺よりずっとずっと上にあるその場所に、届くかしら」
「ほら、虹の向こうがわには 青い鳥が飛んでいる。
私だって飛べるはず――鳥たちが 虹を超えて飛んで行けるのなら。
しあわせの青い小鳥たちが、其処にたどり着いているのなら。」
Over The Rainbow 意訳 (原詩:Arlen-Harburg)
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何処へも行けない自分に、苛立ちを覚えたことはあるだろうか。
このまま無為に成長してしまう自分に、不安を覚えたことはあるだろうか。
空が有限に広がる世界に、寂しさを覚えたことはあるだろうか。
主人公は仔猫を「同じ存在」と思う。
けれど、彼女はまだ知らない。自分が仔猫と違い、成長し続けなければならない意味を。
どうか彼女に対して、同意や哀れみではなく、厳しい目をもって突き放して欲しい。
聡いために持ってしまった憤り、不安、恐れを、どうか否定してほしい。
孤独とは、エゴの痛みとは、彼女は何も知らないだけなのだ。
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読んでくださったすべての方へ。
心から御礼申し上げます。あなたにも、かぎりあるものの意味が届きますように。
2007.1 沙堂 瑠々亞