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「いらっしゃいませー。分かってると思うけど、ここは合鍵屋だよ。君はどこの合鍵を作りにきたの?」

「・・・あなたが店長?」

 それにしては、随分と子供っぽい容姿をしている。中学生ぐらいだろうか。

「・・・え?わたし店長なのかって・・・?ほんと、失礼なこときくね~。わたしはこの店のれっきとした店長!見た目はこんなんで確かに頼りなさそうに見えるけど、どんな合鍵でもすぐに作れるから、余計な心配はしないでね」

「・・・」

「君の名前は  っていうんだ。ちなみに私は、コカゲ。まぁ・・・歳も近そうだし・・・気軽に店にきてね」

「・・・なんで私の名前、知ってるの?」

「さっき自分で名乗ったの忘れたの?」

 コカゲはクスクスと笑う。

(私、自分の名前なんて名乗ったけ・・・)


その後、数分話し込む。


「えっ・・・あの子がどう思ってるのかしりたいの?あー・・・そんなことは無理に決まってるよー・・っていうのは嘘。わたしなら、君の願い、叶えられるよ」

「ほんとうに?」

 私は眉をひそめる。

「最初に言ったよね?わたしはどんな合鍵でもつくることができるって。もちろん、わたしにならあの子の心の合鍵も作ることができる。・・・人はみんな心に扉を持っていて、それは絶対に他の人には開くことができないの。その開かずの扉の中に入れるのは、扉の持ち主だけ・・・・・。

でも、わたしになら、その心の扉の合鍵を作ることができるんだ。そして、あの子の心の扉を開ければ簡単に・・・」

「・・・・・・・」

「もしかして、信じられない?」

 コカゲはガッカリしたように、小さく溜息をつく。

「・・・分かったよ。今回は特別に無料で作ってあげる」



 掌を胸の前にかざし、人差し指と親指で輪っかをつくるコカゲ。

 そこから、淡い光が放たれたかと思うと、その指の輪っかには金色の鍵がかかっていた。

「君の心を分析して、あの子の心の扉に合いそうな合鍵を作ってみたよ。・・・多分これで・・・いや、絶対にこの鍵で開けられると思うから。

 あの子の近くに行って試してみてね」

 そして、コカゲは金色の鍵を手渡した。それと同時に、彼女は驚いたように目を見開く。

「うそっ・・・。あんなところに、トビラがでてる!」

 私はコカゲの視線の先を追ってみたが、そこには扉らしきものは何もない。

「どこに扉なんてあるの?」

 私が問いかけると、

「君には見えないの?そこに異世界に続くトビラがあるんだよ。

・・・この世界にはいろいろな異世界に続くトビラがたくさん存在してるの。

でも、普通の人には見えないし、仮に見えたとしても、鍵がかかってるから、開けられないんだけどね」

 小さな笑みを浮かべながら、コカゲはそう言った。

「今回はどんな世界かな~?」

 今度は、青色の鍵の手に持ち、扉を開けるような仕草をする。そして、「じゃーまた」と手を振ると、コカゲはどこかへと消えてしまった。


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