1.プロローグ
あるところに、女の子にもてたくてたまらない男の子がおりました。
男の子は、毎日毎日神様にお祈りをしていました。
「おんなのこにモテまくって、わらいがとまらなくなりますように!」
時を経て、彼はギターという道具を手に入れます。
彼は信じていました。
これで自分は、女の子にもてるようになるのだと。
そんな彼が、ビジュアル系バンドを始めた、というお話です。
(※この小説が処女作です。どうぞ、よしなに・・・あと、不定期更新です。ご容赦ください。)
俺の名はウリエル。
破壊を司る天使から名をとった。
人は俺をこう呼ぶ。
--------孤高と退廃のヴォーカリスト
そう。
俺は今、最も美しいビジュアル系バンド「世界樹」のヴォーカルであり、ギターでもある。
冷ややかな眼差しは月の様に女を惑わせ、甘く囁く様な歌声は女の理性を奪う。
俺の彫刻のように整った顔立ちを見るだけで、女どもは色めき立つ。
俺の存在自体が「破壊」であり「退廃」であり、「美」。
おお、神よ、何故、俺はこんなにも罪深いまでに美しいのか。
俺の存在自体が罪・・・っ!!ああ、マーベラス・・・っ!!!!
次の瞬間、俺の携帯から着信音が鳴りひびく。
この着信音。
俺がこの世界で最も愛しているプティ・アンジュが歌っている曲だ。
彼女は無邪気で愛らしくて、ちょっぴり悪戯だ。
そんなところが、堪らなく愛おしい。
地上に舞い降りた最後の天使。
不可侵にして尊い真っ白な存在。
彼女の声が、天界からの祝福のように俺を包み込む。
♪天使のスプーンで すくーったらー♪
♪ほっぺが落ちるよ ミラクルワールド♪
携帯電話で出来るであろう最大音量で、やたら元気なロリ声が歌いだす。
やはり彼女は悪戯な天使だ。
♪かもね かもね ミラクルかもね♪
♪作って ミミカ No.1!(ワンっ!)♪
「わんっ!」
メーターの振り切れた声でイキイキと掛け声をする俺を、他のメンバーは空気であるかのように扱う。
ふっ、下衆な奴らにはわからないんだ。
この高貴にして愛らしい彼女の歌声が!
「いいから早く出ろよ…お前、今の自分の顔、鏡で見てみろ。死にたくなるから」
そう言い置いて、他のメンバーは出て行った。
ふん!!!バカが!!!爆発しろ!!!漏れなく爆発しろ!!!
お前の母ちゃんでべそ!!!
そして、俺は携帯電話に出ることなく、味楽るミミカたんの声に酔いしれていた。