卑屈少女と革命男児
20XX年この世界は…否、この国は狂っていると俺は考える。
俺の住む国は数十年前とある一つの制度制定で劇的なまでの成長と確変に成功した
制度の名は『高度義務教育制度』と言って簡単に言えば昔の義務教育制度を徹底的に強化すると言うものだ
子供の頃から過酷なまでの学習と運動を強いて、生徒に目に見える評価を与え否が応でも全生徒の実力を向上させる
凄く…合理的だ
結果その制度が正式に実行されてからの学生の実力問題は一目瞭然に変貌を遂げ、昔よりも圧倒的に
生徒の学力が上がり運動能力も向上『高度義務教育制度』は大成功に思えた…だけど。
それは表の結果であり、その裏ではまた闇がうごめていてる。
『高度義務教育制度』は学生の気持ちやペースを配慮せず強制的に『行動』強いる制度、それ故にそんな過酷な毎日へ
ついていくことのできない生徒は当然出てきて、最後までついていけなかった生徒は噂だと退学、もっと悪い話では
処分される…なんて、言われている……
第一話『卑屈少女と革命男児』
「う…うぅ…やっぱりこんなの、何かの間違いだって…」
「はぁ?今更何を気の抜けたこと言ってんのよ、私の姉なら姉らしく
どっしり構えてお姉ちゃんらしくしてよ。」
「だ…だけど〜。」
桜咲き散っていく空が晴天な今日この頃、私こと神崎紫苑は物凄く
立派な学園の前で、妹に謙っていた。
というのも実は今日、私が高校に入学する入学式の日で今は自己肯定感の
高い妹、神崎真里に学園の校門前まで付き添ってもらっていたの…だが
どうにも私はこの学園へ入学することに、受け入れがたい
気持ちを抱えていた…だって
「私なんかがS ランクの…最高峰の学園にだなんて信じられないって!」
「それはまあ…そうね」
「…ほらぁ」
明らかに私はこれから、自分の実力に見合わない学園へ入学させられ
そうになっていたからである。
この世界には『高度義務教育制度』という制度が存在し、私達学生は
過酷な学習、運動を強いられ、その総合評価でランクをつけられる。
ランクは上から言うと最高峰のS、優秀なA、平均的なB、最底辺のF
と存在していて、高校は中学生の時のランクによって自分と同じランクの学園へ進学となる…なのに。
え?それじゃあ私がランクSの最高峰の学園へ通うことになったのは、
私が中学生時代ランクSだったからじゃないの?と思う人もいるかもしれない、けどそこが一番の問題なのだ、だって私は
「あれ?だけどそういえばお姉ちゃんの中学生時代のランクって」
「…私もそこが気になってた、私…中学校はAランクだったよ。」
中学生時代…一度もBに落ちる事はなく、Sになったこともないずっと
Aランクの人間だったからだ…だから怖いのだ。
最高峰と言われる学園への入学は嬉しい…けどもしこれが何かの
手違いなら私は、物凄く恥ずかしい目に遭うと思ったから。
「あぁもし学園の教師とかに誰ですか?とか言われたら私絶対立ち直れないよぉ!」
「し…しっかりしなよお姉ちゃん!」
あぁほんと…家に帰って布団に包まりたい……
♦︎
だらだらと妹へ入学式に出たくない理由を語っていたら入学式の
集合時刻は刻一刻と迫り、ついに私は妹に逃げられ渋々学園の
体育館へと来ていた。
「うぅ…真梨め私のことを置いて帰るなんて…まぁ、いいや。」
どうにか気分を上げようと周りを一瞥してみると私と同じように
中学の制服を来ている生徒達や、体育館入り口の席の方には
入学生の親や兄弟などが賑やかにしているのが目に入る。
だけど…やはりここは最高峰の学園だ
見ているだけでわかる…別ランクとの圧倒的な差
Sランクという称号は、各中学校の総合評価が一番高いトップ5人
に与えられる称号だと言われている、だから皆頭がいいんだ。
楽しそうに会話しているが皆周りに配慮し絶妙な声量、距離感での会話
どんな些細な行動、仕草にも意味があるように思える、その風格
(私は…本当にこの学園へ入学するべき人間なの?)
そんな劣等感が、脳裏によぎる
いやだめだ、考えすぎるな、
自分に言い聞かせて宥める。
と、そうして私が自分の席に座って、深く深呼吸した…その時。
「皆さん!俺へ少しお時間をくれませんか!」
「…っうぇ!」
突然スピーカーから聞こえてきた大音量にで、深呼吸中
だった私は咽せてしまう。
何事かと体育館の雛壇へ視線を向けると、そこには
「少し…俺の話…いや、俺の夢を聞いてはくれませんか?」
当たり前だが見たことのない、中学校の学ランをきた明らかに入学生
の青年が1人マイクを持って雛壇に1人立っていた。
突然の出来事に体育館にいる全員が彼1人に、釘付けになってしまう。
「正直に言います!この国は…狂ってる!」
「は…はぁ?」
「俺達学生は生まれた時から何の疑問もなく耐え抜いてきた高度義務教育制度、俺は中学生時代の三年間見てきました、そして皆さんも見てきたはずです、この国の実態を!」
そうだ…私は、私達は理解していた。
中学生時代どれだけSランク生徒が優遇され、どれだけFランク生徒が
最悪な待遇を受けていたのか…全て、数ヶ月前まで。
だからこそ私達は、彼の語りに魅入られて、話に惹かれて
しまったのかもしれない。
「高度な義務教育を強いてついてこれない人間は排除し、Fランク
生徒はまるでゴミのように扱われる…まぁ。」
「正直こんな事を最高峰の学園に通う、皆さんの前で言っても
何も響く事はないのかもしれません…皆さんは、勝ち組だ。」
…そんな事…ない
「ただ…別にこれは皆さんへ何かを協力を仰ぐ演説でもなければ、
応援をしてほしいという褒められたがりでもない…これは
俺がこの高度義務教育制度という倫理に反する、狂った制度をぶち壊すという…宣戦布告だ…」
「宣戦…布告。」
私が彼の言葉を反芻した、その刹那
「今だ!取り押さえろー!」
「…っうぐ!」
突然名演説を繰り広げた彼は演説開始から数分で警備員に抑えられ、
マイクをとりあげられる…だけど、青年は警備員数名を振り解き
マイクを奪い取って
「俺は!この国を絶対に変えてみせる!これは国への宣戦布告だ!俺の名は!…水瀬!水瀬輝!っぐ!」
「君!いい加減にしろ!」
最後に…意気込みと自分の名前を述べてから、今度は完全
に取り押さえられてしまった。
演説を聞いた人はそれから数分間は黙り込んで今の状況に呆気に取られていた、でも
それからすぐに皆、それぞれ話を再開させ、その話題にはきっと皆彼のことを話したとおもう。
「水瀬輝…か。」
そしてこれが自分に自信をもてない私…神崎紫苑と後に『伝説の総大将』
と呼ばれる彼…水瀬輝との初めての出会いだった。




