表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

修道院パンシリーズ

潮風と青いワンピース

作者: 福嶋莉佳
掲載日:2025/11/08

港町の朝は、潮とパンの香りが混じり合っていた。

通りには市場の声が響き、籠を抱えた人々が行き交う。


「ちょっと買いすぎちゃったかしら……」


「……まったく、だから言ったでしょう。ひとりで抱えるには多すぎますよ」


ルイは苦笑しながら、私の腕から野菜籠を取り上げた。

粉袋まで軽々と片腕で抱え上げる。


「パン屋のときもそうでしたよね。『今日は見るだけ』って言いながら、最後には両手いっぱい」


彼は首を傾げ、いたずらっぽく笑った。


「でも……そうやって楽しそうに選んでる顔、好きですよ」


少し頬が熱くなる。


「……ありがとう。でも、ルイと一緒だから楽しいのよ?」


ルイはその言葉に、ふっと表情をゆるめた。


「今日一日くらい、腕がちぎれても本望ですね」


軽口を返しながら歩いていたそのとき――

風に揺れる布地が視界の端をかすめた。


通りの服屋の軒先に、淡い青のワンピースが吊るされている。

潮の光を受けて、波のように布が揺れた。


「……素敵ね」


私は思わず足を止めた。


実家にいた頃は、ロゼッタや母のお下がりばかり。

新しい服を買ってもらったことなんて、一度もなかった。

でも――今は違う。自分の力で稼いで、自分のために選べる


「買っちゃおうかな」


ルイが私を見て、静かに笑う。


「いいと思います。サラさんが“自分のために”選ぶのなら、どんな服だって特別になりますよ」


そして、一歩店に入ると、ためらいもなく店主に声をかけた。


「すみません。その青いワンピースを、包んでください」


「え……ちょ、ちょっとルイ!?」


「パン屋を開いてから、ずっと頑張ってきたご褒美です。

今日くらい、俺に贈らせてください」


潮風の中で、彼の声がやさしく響く。

白い布がたたまれ、リボンで結ばれる音がした。


その音が、私の胸の奥で、小さく弾んだ。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

ブクマや感想・評価など頂けたら、励みになります!

◆現在のメイン連載はこちら↓

『転生姫はお飾り正妃候補?愛されないので自力で幸せ掴みます』※ざまぁ系ではありません

→https://ncode.syosetu.com/n5770ky/

◆Twitterでも更新情報や裏話を流してます!

→ @serena_narou

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんともない日常の後日談ですけど、それが一番です。幸せが伝わってきます。
うーん。良いんだけど、もう少しボリュームが欲しい。 後日談で、おまけだから仕方ないのかな。
 他店でのパン屋巡りならびに研究含め、窮屈な実家暮らしから熱心に仕事などに励む人への、行動力あるルイさんからの贈り物。読んでて心があたたまるお話でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ