第七話 闇を超えるために
──まぶしい光。
瞼を開けた瞬間、視界が一気に現実へと戻ってきた。
「……っ、ここは……」
気づけば、俺はベッドの上に横たわっていた。
ボロボロの天井、ひび割れた壁。埃っぽい匂いが俺の脳を強制的に覚醒させる。
「……そうだ……俺はモルドスと……」
記憶がゆっくり戻ってくる。
意識を失っている間に見たあの水色の世界、エルミア、ゴッドアイ、属性……
あれは間違いなく夢ではない。
体を起こそうとした瞬間、全身に鈍い痛みが走った。
「いてっ!」
あまりの痛さに気絶しかけたそのとき、前のドアが開いた。
「あっ!!!!」
バラドは力が抜けたかのように手に持っていたバケツを落とし、急ぐように俺のところへ駆け寄ってきた。
「ライア!!! 生きててよかったよぉ!」
「いてぇぇぇ!!!」
俺の状態なんてお構いなく、勢いよく俺に飛びついてきた。
「俺まだ治ってない!!!」
「ごめんごめん。しばらく起きなかったものだから……」
涙を堪えながら言ってきた。
「……しばらくか……」
俺は爆弾のタイマーを見てみる。
──残り146日。おそらく、三日ほど生と死を彷徨っていたのだろう。
「この石は……なんだ!?」
バラドは俺のポケットに入ってた石に目を光らせて質問した。
「説明する前に食事しよう。もう四日は口に物を入れてない」
「よ、四日も!? 待ってて!!!」
……数分後。
「お待たせ! ノアール島名物、“暗黒シチュー”だよ!」
バラドが両手で湯気の立つ鍋を抱えて持ってきた。
「お、おい……見た目やばすぎんだろ!!」
「大丈夫! 名物だから!!」
言われるがままに、俺はシチューを口に運んだ。
「え、うま……」
見た目とは反して、とても優しい味がした。
口の中全体にシチューの甘みと、どこか懐かしい感じを思い出させる旨さだった。
「だろ? 暗黒シチューは体にとても良いんだぜ!」
バラドは得意げに胸を張る。
「ありがとう、バラド。」
体の芯まで温まり、疲れが取れたような感じがした。
──食事を終えて、俺はバラドに爆弾、共鳴石、そしてエルミアとの出来事をすべて話した。
話を聞いたバラドは、意外にも軽い反応だった。
「まじかよ! 色々苦労したんだな」
その言葉を受けて、俺は静かに息を吸い込んだ。
そして、決意を込めて言った。
「バラド……俺は、モルドスを倒しに行こうと思うんだ。」
「はあっ!? 正気か!? あのエルミアが“無理難題なクエストはない”とか言ってたの、まだ信じてんのかよぉ!!」
バラドは目をむき、手を振り回すように叫んだ。
「大丈夫……次は、ちゃんと“策略”がある。」
ライアの瞳には、リベンジの炎が燃え盛った。
「まず俺が初めにモルドスと戦う。奴の力を削ることに全力を注ぐ……
消耗したところで、バラドがトドメを刺してくれ」
俺は作戦を簡潔に言った。
「ざけんなぁ!! 正気かぁ!!」
バラドは頭を抱えながら暴れ回った。
「落ち着け! モルドスの“闇”に対抗できるやつは、お前の“光”しかいないんだ!」
「フッ……そう言うと思ったぜ」
バラドは調子が狂ったように、無駄にキメ顔を決めた。
「よし! バラド! 俺たち二人でモルドスをぶっ倒そう!!」
「余裕だぜ。」
戦闘モードに入ったバラド、覚悟を決めた俺。
負ける要素が見当たらなかった。
「よし、行くぞ!」
勢いよく外へ出ようとしたその瞬間──
「ちょっと! 宿泊費、払ってね!!」
宿の主人の怒鳴り声が響き渡った。
「……あっ。」
「……。」
俺らの動きがぴたりと止まる。
「ま、また今度払います!!!」
「逃げるなぁー!!!」
俺たちは宿を飛び出した。
決戦の地へ向かおうとする中、その第一歩が……まさかの宿代踏み倒しだった。
──モルドス邸。
静寂を切り裂くように、モルドスの低い声が響いた。
「フハハ……! また俺を倒そうとするか」
壁に埋め込まれた巨大モニターには、宿屋を飛び出したライアとバラドの姿が映っていた。
「お前らがどんな策を立てようとも、無駄だがな……」
余裕の笑みを浮かべながら、玉座に深く腰掛けていた。
──残り146日。モルドスの闇を、乗り越えることはできるのだろうか。




