第三話 君が創造神!?
俺は叫び、勢いよく剣を振り下ろした。
だが、その刃が奴の胸に触れた瞬間────というものはなく、すぐさま俺は炎の番人を剣で切り裂いた。
「……やったか?」
炎の番人が断末魔のような咆哮を上げて崩れ落ちる。
全身を包んでいた炎が空気に溶け、残ったのは灰と、淡い光の粒だけだった。
【クエストクリア:第一の鍵を獲得】
終わったかと思ったら、また脳内に例の声が響いた。
「次はなんだよ!」
【レベルアップ 5 → 6】
【スキル《一撃必殺》を習得しました】
「……なんかヤベー技習得したし、レベルも上がったか。
てか、これまじのゲームじゃんか……」
もう苦笑いするしかなかった。
俺は足元に転がった鍵を拾い、世界を滅ぼす爆弾にカチャリと鍵をはめた。
「あと七個……。こんなの、やりたくねぇわ。」
悲痛な叫びを、魂を込めて高らかに謳いながら、俺は洞窟の外へと向かった。
洞窟を出ると、暑いはずのこの島が、なぜか涼しく感じた。
あの番人と戦っていたとき、きっと俺の体温が限界まで上がっていたのだろう。
「お疲れさま、ライア君!」
「……おまえはっ!」
緑色のロングヘアを風になびかせた少女が、まるで待っていたかのように立っていた。
「まずはクエストクリアおめでとう! 私のあげた共鳴石、役に立ったでしょ?」
緑髪の少女は、いたずらっぽく微笑んだ。
「この石は便利だけど……なぜ“鍵”のことを知っている!?
お前はいったい何者だ! クエストのことまで知っているのか!?」
怒鳴るようにまくし立てた。息継ぎも忘れて、俺は緑色のロングヘアの少女へ詰め寄った。
「ふふ、そんなに詰め寄らないで。びっくりしちゃうわ。」
俺が息を詰めると、少女は一歩前に出て、髪を耳にかけながら言った。
「じゃあ、自己紹介からしなきゃね。」
風が吹き、緑色の髪がふわりと揺れる。
その髪の隙間から、翠の瞳がまっすぐ俺を見つめた。
その瞳の奥には、どこか底知れない静けさがあった。
「──── 私は、エルミア。
この世界の──── 創造神よ。」
空気が一瞬、止まった。
「……創造神……?」
信じられるわけがない。
だが、目の前の少女の存在そのものが、“常識”という言葉を簡単に吹き飛ばすほどの圧を放っていた。
しかし、俺は引き下がらなかった。いや、引き下がるわけにはいかなかった。
「そ、創造神の件は置いといて、この共鳴石はなんだ? クエストと関係あるのか?」
エルミアは小さく首を傾げる。
「関係あるわ。というより……クエストを“起動”させる装置、って言ったほうがいいかしら?」
エルミアは軽く微笑み、俺の手の中の共鳴石を指さした。
「その石があれば、“鍵”の有無をすぐに察知できるの。それに──たとえばあなたの持ってるカバンだって、その中に入るわよ。」
「……は?」
「ふふっ、便利でしょ?」
エルミアは楽しげに微笑んだ。
まるで世界の理を語っているはずなのに、ただの小道具の説明をしているような軽さだった。
「ただし──」
一拍置いて、彼女はゆっくりと言葉を続ける。
「その石を放棄したり、無くしてしまったら……
ライア、あなたは消えてしまう。」
「な……なんだって?」
「言葉の通りよ。」
エルミアの声は淡々としていた。
何を言っているのか、正直わからない。
理屈なんて一つも理解できない。
けど──嘘じゃない。
それだけは、はっきりとわかった。
「エルミア……創造神なら、この爆弾は解除できないのか?」
俺は世界を滅ぼす爆弾を差し出しながら言った。
まだ創造神なのかは信じていない。
でも――もし本当に“神”が目の前にいるのなら、
クエストよりも何よりも、まずこの状況をどうにかしてほしいと思った。
「……」
エルミアは何も言わなかった。
ただ静かに俺を見つめていた。
やがて、彼女はそっと微笑んだ。
その笑顔は、どこか寂しげで、それでいて温かかった。
「あなたは────雑魚狩りしかしてない勇者なんだから、たまには強敵とも戦わなきゃ……ね?」
「はぁ!? そんなのごめんだよ!」
思わず言い返すが、もう遅かった。
エルミアの身体は光の粒に包まれ、静かに溶けるように消えていった。
「おい、待て! まだ話は──!」
遅かった。
────しばらくして、俺は爆弾の日数を確認した。
「残り……149日か。」
ため息が、自然と漏れた。
船に乗る前、ふと疑問が浮かんだ。
このヴォルカニック島には、人の気配がまるでなかった。
暑さのせいなのか……
あるいは──あの炎の番人のせいなのか……
答えの出ないまま、俺は船の入り口に足を踏み入れた
新たな島へ向けて。
世界を救うための旅は、まだ──ただの序章に過ぎなかった。




