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雑魚狩りに特化した俺は鍵集めがメインのはずなのに創造神にクエストを押し付けられた件  作者: 如月 煉司
創造神エルミア編

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第十三話 神すら恐れる島

霧の中から現れた“幻の島”は、まるで月の欠片がそのまま地上に落ちたようだった。

淡く光る水面の上に、白銀の塔と透き通る森が浮かんでいる。

波が静かに打ち寄せ、音すらも神聖に思えた。


「……これが、ルナミラージュ島……」

俺は言葉を失っていた。

どこか現実味がない。

まるで夢の中に足を踏み入れたような感覚だった。


「おいライア、足元に気をつけろ。なんか……この光の道、揺れてねぇか?」

バラドの言葉に顔を向けると、確かに海の上に伸びる“道”が淡く波打っていた。

光が呼吸するように脈打ち、踏み出すたびに波紋が広がる。


「たぶん、島が認めてるんだろ……俺たちを」


「島が……認める?」

バラドは眉をひそめたが、それ以上は何も言わなかった。

彼もまた、この異様な光景に圧倒されているのだろう。


足を進めるたび、周囲の霧が少しずつ晴れていく。

やがて光の道の先に、白い砂浜と銀色の森が姿を現した。


風が吹いた。

潮の匂いと共に、どこか懐かしい香りが漂ってくる。

――そう、あれはエルミアに会ったときの香りだ。


「……エルミア」

思わず呟いたその名に、胸元の共鳴石が一瞬だけ淡く光った。

まるで、彼女が「見ている」とでも言いたげに。


「ようやく、着いたな」

バラドが息を吐き、船を振り返る。

だが、もうそこには船影はなかった。

さっきまでいたはずの帆船は、霧の中に溶けるように消えていた。


「……帰り道、なくなったっぽいな」

「いつも通りだろ」

「それもそうだな」


二人で苦笑する。

だがその笑いも、長くは続かなかった。


森の奥から、鈴のような音が響いた。

透き通るような音色――だが、そこに微かに“呼び声”のような響きが混じっている。


「……聞こえたか?」

「ああ。どうやら歓迎ってわけじゃなさそうだな」


俺たちは剣を構え、ゆっくりと森の中へと踏み込んだ。


ルナミラージュ島――

そこは、月光と幻影が交わる“神の残した楽園”。

けれど、この島が秘める真の姿を、俺たちはまだ知らなかった。


森の奥へと進むと、光が一層強くなった。

木々の葉が月光を受けて淡く輝き、空気そのものがゆらめいている。

風も、音も、時間すら止まったような――そんな感覚。


「……バラド、今の空気、感じるか?」

「ああ……なんか、胸の奥がざわつく」


次の瞬間、視界が一気に開けた。

霧が晴れ、そこには静寂の湖が広がっていた。

水面は鏡のように月を映し、その中央にひとりの女性が立っていた。


長い白銀の髪が風に揺れ、淡い光がその身体を包んでいる。

まるで“月”そのものが人の形をとったかのようだった。


「……エルミア……?」

声が震えた。

けれど、その姿は、確かにあのときと同じ――創造神、エルミア。


「久しぶりね、ライア」

柔らかな声が風に溶けたた。

この場所、この空気、彼女の存在。すべてが現実のようで、どこか夢のようでもある。


エルミアは静かに目を閉じたまま、湖の水面を見つめていた。

その視線の先に、モルドスの面影がかすかに揺れている気がした。


「……まさか、あのモルドスを倒すなんてね」

「俺もびっくりだ。良くて引き分けって言われたからね」


「お、おいライア……お前、まさか……!」


振り向くと、霧の中からバラドが現れ、ぽかんと口を開けていた。

「これが……エルミア、なのか?」


エルミアは静かに頷いた。

その瞬間、湖の光が少し強くなり、彼女の髪が月光のように揺れた。


「あなたがバラドね」

「お、おう……創造神ってのは、もっとこう……雷とか落とすタイプかと思ってたぜ」

バラドの率直すぎる言葉に、思わず笑いそうになる。


「ふふ……そういう神もいるわ。でも、私は“創る者”。壊すのは、好きじゃないの」


エルミアの微笑みは、月の光のように柔らかかった。


けれど、俺の中には一つの疑問が残っていた。


「……なあ、エルミア。この島――ルナミラージュって、一体何なんだ?」


その問いに、エルミアは少しだけ目を伏せた。

「この島は、“記憶の断層”。世界の記録と、神の夢が交わる場所よ」


「記憶の……断層?」

バラドが眉をひそめる。


「ここでは、過去と未来、現実と幻が混ざり合う。

 人の心が迷えば、幻が形を取り、真実を隠す……。だから“ルナミラージュ”――月の幻の名がついたの」


湖面に反射する月が、まるで二重に重なって見える。

一つは現実の月、もう一つは水に映る幻。

その境界こそが、この島の正体なのだと、直感で理解した。


「つまり、ここは……夢と現の狭間ってわけか」

「そう。けれど、あなたがここに来たのは偶然じゃないわ、ライア」


「じゃあ……エルミア、君が俺たちをこの島に連れてきたのか?」


 エルミアは静かに目を閉じ、湖面に視線を落とした。

 水面がわずかに揺れ、彼女の姿が波のように歪む。


「……そう。正確には、“この島があなたを呼んだ”の」


「島が……呼んだ?」

俺は思わず聞き返した。


エルミアは静かに目を伏せ、湖面を見つめる。

月光が彼女を包み、幻想的な光がゆらめいた。


「この島には――神の私ですら、手を出せない存在がいるの」

「……神でも倒せない相手、だと?」

「ええ。だからこそ、あなたがここに導かれたのよ、ライア」


静寂が満ち、風が止まる。

まるで、世界そのものが次の言葉を待っているかのようだった。


「ライア……今から、あなたに“倒してほしい相手”がいる」


その瞬間、空気が震えた。

湖の奥――何かが、目を覚ましたような気配がした。

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