覚醒への道のり
バルトがBクラスになってからしばらく経った時に、毎年この時期に行われる恒例の
レベルアップコンテストがやってきた。
このコンテストは全校生徒が強制参加だったので、もちろんバルトも初めての参加となった。
ルールは簡単で、これから30日間でどれだけレベルアップができたかを三つの部門で
競い合うのだった。
一つ目は魔力量の数値の上昇度で競い合う魔力量部門、
二つ目は魔法レベルの数値の上昇度で競い合う魔法レベル部門、
三つ目はどのようなド派手な魔法を披露できるかをパフォーマンスする実技部門てあった。
コンテストの開始日に現状数値の魔力量と魔法レベルを確認するために、Cクラスから順に
魔法訓練室にて確認を行っていた。
Cクラスの生徒全員が魔法訓練室に集められて、一人ずつ順番に水晶の魔力測定機に
自分の魔力を流していくのであった。
「はい、次、」
と測定の教官が凄く偉そうな言い方で次の生徒を呼んだ。
「はい、ミウです。」
とその女生徒は自分の名前を告げてから測定器に近づいた。
背はやや低めだったが顔面偏差値は非常に高い生徒でCクラスのアイドル的な存在だった。
「では、ミウ、魔力を注ぎます。」
と言うと肩に力を入れて、いかにも魔力量の少ない生徒が絞り出すように顔を赤らめながら
踏ん張っているのが分かった。
「おー、すごい。」
と周囲の男子生徒たちが騒ぎ出した。
まだ魔力測定器の数値は表示されていなかったが、ミウの美形の顔が赤らんでめちゃくちゃ
可愛かったので、男子生徒たちがその姿を見て騒いでいるのだった。
「はい、そこの男子生徒たち、静かに、測定中は騒がない!」
と教官もそのことに気づいて不純な生徒たちに雷を落としたのだった。
「はい、ミウさん結果出ましたよ。」
と教官が水晶上部に数値が表示されていることに気が付かずにまだまだ力んでいたミウを
静止した。
そこには魔力量80、魔法レベル7と示されていた。
「はい、次、」
と測定の教官がまたもや凄く偉そうな言い方で次の生徒を呼んだ。
「はい、マヤです。」
と次の男子生徒はガタイが大きくて、とても厳つい顔だったので剣士を目指すべきなのでは
と思えるような見た目で運動偏差値が高そうだった。
「では、マヤ、魔力を注ぎます。」
と言うと上腕二頭筋に力を入れて、水晶を睨み付けて両手で絞めつけて殺ってしまうんじゃ
ないかと思わせるほどに力を込めて魔力を注いでいた。
「はい、マヤくん結果もう出ましたよ。水晶壊さないで下さいよ」
と教官が水晶上部に数値が表示されていることに気が付かずにまだまだ力んでいたマヤを
静止した。
教官もマヤをそのように見ていたようであった。
水晶上部には魔力量40、魔法レベル3と示されていた。
先ほどの美少女アイドルの半分ほどの魔法レベルと魔力量だった。
「まじかあ、毎日筋トレ欠かさずにやってるんだけどなあ。」
とマヤはポツリと愚痴った。
やはりこの生徒は何か勘違いしているようで、筋トレをいくら頑張っても筋肉が付くだけで
魔力のトレーニングの前に知力のトレーニングが必要な筋肉バカのようであった。
魔法レベルは、クラスによってだいたい決まっていて、
Cクラスは10未満、
Bクラスは100前後、
Aクラスは1000前後、
Sクラスは1000以上の人が多かった。
魔力量も、クラスによってだいたい決まっていて、
Cクラスが100前後、
Bクラスは1000前後、
Aクラスは10000前後、
Sクラスは10000以上がおよその見方だった。
Cクラスの全員の測定が終わったので、魔法訓練室に入れ替えでBクラスの全員が集められた。
「それではBクラスの魔力測定を始めます。
順に魔力測定機の前に来て水晶に自分の魔力を注いでください。
ではそちらから。」
と担当教官は席の左前に座っている者を指さした。
「はい、ワカ行きます。」
と元気に答えたBクラスのトップバッターは、元気が取り柄の快活な女の子だった。
この学校ではみんな12歳の自分の誕生日の翌日に入学して来るのだが、ワカはまだ幼さが
残った元気な女子生徒だった。
「はい、ワカ、魔力注ぎます。」
と元気いっぱいに声を出してから、魔力の注入を始めた。
こちらはCクラスとは違っていて魔力を注ぐのは慣れている様子で肩ひじ張らずに効率よく
涼しい顔で魔力を注いでいた。
「はい、できました。」
と言うと水晶上部に自分の測定結果が現れたのを見て魔力を注ぐのをストップした。
水晶上部には魔力量800、魔法レベル120と示されていた。
およそBクラスの範囲内の数値であったが、魔力量がやや不足しているようであった。
本人はそのことも予測していたようで、満足気な顔をしながら席に戻って行った。
その後は、順にBクラスの生徒たちがスムーズに行ったのであったが、
全員がBクラスの想定範囲内であったので、大きな違いは見られなかった。
「はい、次、」
と担当教官はとても偉そうな態度で次の生徒を呼んだ。
「はい、バルトです。」
と緊張しながらもやや大きめの声が出せた。
「では、バルト、魔力注ぎます。」
と言うと、水晶の測定機に魔力を注ぎ込んだ。
バルトも日々の学校での訓練と自主練の成果で、これまで苦手だった魔法にも多少の自信を
持てるようなレベルまで成長していたので、他の生徒たちに見劣りすることは無かった。
「はい、結果でました。」
とバルトは言うと魔力を注ぐのを止めた。
水晶上部には魔力量999、魔法レベル99と示されていた。
そこにはどういう意味なのか分からなかったが見えない壁でもあるような数値だったが
ほぼBクラスの平均的な数値だったので特に目立つこともない結果だった。
バルトは昔から魔法が苦手だったのでまあこんなものかと思った一方、
まだまだいけるはずだとも強く思った。
その後もAクラス、Sクラスの魔力測定がスムーズに実施されたようで、
特に他のクラスのトピックなどは噂になることはなかったのだった。
この測定会をもって、今日からコンテストは既に開始されているのだった。
バルトは今日の授業が終わると直ぐに自室に戻って早速、勝家を召喚した。
「召喚ーーーん。」
ともう何度も召喚していたので、すっかり慣れてしまっていたのだが、それでも召喚する際には
声に出して父に買ってもらった大事な杖を持って召喚を唱えることにしていた。
本当はしっかり召喚したい物をイメージすれば無詠唱でも召喚できるのが召喚士だった。
丸に二つ雁金の兜紋を付けた織田信長の腹心の部下で武術にも最も長けていた柴田勝家を
バルトが今日呼び出したのには理由があった。
「勝家さん、相談があるのですが。」
とバルトは召喚した勝家に問いかけた。
「何ですじゃ、将人殿、ではなかったバルト殿。」
と勝家は転生前のバルトのことも良く知っていたので、このような返事を返してくることが
よくあった。
「あの、今日から学校で魔力を上げるコンテストが始まったのですが、何か一カ月で魔力を
上げる方法を教えて頂けばなあと思って。」
とバルトはストレートに召喚したばかりの勝家に本題を持ちかけた。
「なるほど、そういうことですか。
それなら殿の部下にそういったことにも詳しい軍師がおりますじゃて、
一度殿に相談して参りますので。」
と勝家は言うと、一瞬で姿をくらましてしまった。
「えー、まだ全部話して無いんですが。。。」
と独り言を言う羽目になってしまったバルトがため息をついた。
すると、もう勝家の姿が元のように戻って現れた。
「バルト殿、お待たせしましたじゃ。」
と勝家は重そうな甲冑を着ているにも関わらず行動も動きも俊敏だった。
「何、もう行って帰って来たの?早すぎるって。」
とバルトは驚いて腰を抜かしそうになった。
「はいですじゃ、殿に相談しましたところ、友人の孫子という者に話をつけておくとのことでした。」
と勝家はすぐさま答えた。
「ソンシ?ですか?」
とバルトは頭にはてながいっぱいだったので、首を傾けながら無意識に眼球は上の方を向きながら
答えた。
「はい、大陸の春秋戦国時代の斉の国で活躍された高名な方とお聞きしております。
そうそう、孫子の兵法で有名とのことでしたので、将人も知っているだろうと
殿がおっしゃっておりました。」
と自信満々で勝家は答えた。
「ソンシ、って孫子のことですか。
なるほどもちろん知ってますが、ご先祖の織田信長公は海外の方ともお知り合いなのですね。」
と自身の先祖が予想外にも国際派だったので驚きを隠せなかった。
「あー、バルト様は冥府のことはあまりご存じ無さそうですじゃて、
少しご教授いたしますと、冥府の者たちは言葉ではなく思念で会話しとりますので、
外国の者でも言葉の壁はないですじゃ。
おのおの自分の意志でやりたいことを好きなようにやっているのが現世とは違って
おりますじゃて、私めも殿に仕えておりますのはそれが私めも殿も一番しっくりきて
心地良いからそうなっているというからくりですじゃて、
孫子殿も殿と友人になりたいと共に考えたのでそうなっただけのことですじゃ。」
とバルトは冥府がそんな世界であることを初めて勝家から教えてもらったのだった。
「分かった。
勝家さんありがとう。
ではお言葉に甘えて孫子様を呼んでみるよ。」
と感謝の言葉をバルトは勝家に伝えた。
「ではご武運を。」
と言うと勝家はあっという間に冥府に帰ってしまった。
行動が速いのはいつものことだった。
バルトは言われたとおりに孫子を呼び出すことにした。
本来であれば相当な魔法レベルが無ければ、こちらから一方的に呼び出すことができるような
人物では無かったが、冥府で事前に話がついているということは双方向のパスが簡単に
構築されるので、こちらの召喚士のレベルに関係なく呼び出すことができるということであった。
バルトは前世で学んだことのある「兵法」兵は詭道なりという言葉を思い出しながら、召喚を行った。
「召喚ーーーん。」
と小さな杖に力を込めてイメージを強くし声に出した。
すると歴史書で見た、あの中国のドラマに出てくるような衣装を纏った髭の豊かなおじさんが現れた。
「おっと、少しめまいがするのお。」
と言いながらおそらく孫子であろう人物がバルトの目の前に現れた。
「お呼びたてして申し訳ございません。私バルトと申します。」
と高名な偉人を丁寧な言葉でこちらの世界に迎え入れた。
「おー、そなたが冥王のご子孫であられるか。儂が孫武である。」
と中国服のおじさんが答えた。
「冥王?って信長公のことですか?」
とここはバルトらしくストレートに質問をぶつけた。
「いかにも、そうじゃが、お主聞いてなかったのか。」
とさも当然のことのように答えた。
「わっちゃー。勝家さんは殿って呼んでたのに、この人は冥王って呼んでるじゃん。
なにこれ?呼び方とかも自由なの?」
とここは口には出さずに心の中にしまって置くことにした。
「それと、孫武様とお呼びした方が良いでしょうか?孫子様でお呼びしましょうか?」
と二つ目の疑問を投げかけた。
「わしの名は孫武だが、孫子と呼ばれることが多いの。
子は敬称なんじゃが。
まあ孫子殿と呼ばれることが最近は多いから、まあ好きなように呼んでくれて構わないがの。」
と詳しく分かりやすく解説してくれた。
池上彰という人が、前世には分かりやすく解説してくれるテレビの人が居たが何となくその人を
思い出したバルトであった。
「分かりました。
では孫子殿と呼ばせて頂くことにしますが、早速ですが、お呼びしましたのは」
とバルトが話そうとすると、孫子は割り込んで入ってきた。
「皆迄話さずとももう聞いておるわい。
どうやって一カ月で魔力量と魔法レベルを上げるか、
それに魔法パフォーマンスをみんなに見せるのじゃろ。」
とバルトが伝えたいことは全て聞いているようだった。
しかも勝家に話して無い事まで知っている様だったので、恐らく冥府の何らかの力で
バルトの世界を見ることが出来ていたのだろうと推測された。
「はい、おっしゃる通りです。」
とだけバルトは返事をしてこの高名な軍師に100パーセントの信頼を預けたのだった。
「まずは、魔力量を上げるには、魔法を使用する、
お主なら召喚された者が魔法や武術を使用しても同義じゃが、
それの回数や頻度によって向上させることが出来る。
魔法レベルを上げるには、より高度な魔法を使えるようになる、
お主なら召喚された者がより高度な魔法や武術を使用して魔物や敵を倒すと同義じゃが、
それらが条件となる。
魔法パフォーマンスはと言えば、見た者をあっと驚かせる魔法を披露する。
たったこれだけのことじゃよ。わっはっは。」
と孫子は笑いながら答えた。
正直バルトは分かりやすくて理解し易かったが、笑っている孫子を見て「で?」と言いたくてたまらなかった。
「お主にやってもらうことは、毎日毎日、魔力の限界まで、
儂のところに召喚した武将や魔物を送ってくれるだけでいいのじゃ。
この近くの学校の演習でも使用しとるダンジョンに儂はずっと潜っておるでの、頼んだぞ。
じゃ、一度10日後のこの時刻に戻るとするからの。」
と今度は具体的にバルトがすべきことを伝えると、勝家と同じような感じで行ってしまった。
「天才と言われる人たちはどこか似ている気がする。
自分が伝えたいことを伝えるとこちらが理解する速度よりも早い速度で居なくなってしまう。」
と独り言を言って自分を励ますしかないのであった。
確かに、この方法ならば、魔力量の限界までバルトの魔法を酷使することで魔力量の向上が
期待できるし、更に召喚した武将や魔物、孫子のダンジョンでの活躍した分、しかも寝ずに
働いてくれた分までバルトに魔力量も魔法レベルも回収できるので、一石二鳥の方法で
効率は抜群に良かったのだった。
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