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トラップを解除させよ

次の日の昼、司令官邸前の広場に、ソムナリアとジュリアンが向かい合って立った直後に司令官邸の鐘が鳴った。

「試験場は分かるよね?」

ソムナリアが尋ねると、ジュリアンがはきはきと答える。

「はい。この司令部敷地内にある魔術試験場です。いくつか土壁に囲まれた小屋のようなものがあります。私は入ったことがありません」

「そうなんだ。じゃあ初めてだね。でも本当に単なる小屋だからね」

「ふふっ…そうなんですね」

ジュリアンがふきだした。

「場所は知ってるだろうけど、ついてきて」

ソムナリアがジュリアンに向かって確認した。

「はい!」

ジュリアンが元気に答えた。

南方軍基地の敷地にはあるが、やや離れたところに、土壁に囲まれた小屋のようなものが数棟立っている。その周りには周りに樹木はなく草原が広がっている。

「今日は、作業は小屋の外で行います」

ソムナリアが静かに言う。

「はい…?」

ジュリアンには、あまり合点がいかないようだ。

「うん。気持ちはわかるけど、小屋に光があまり入らないんだ。なので外で作業をするの」

「じゃあ…あの広場とかではダメなのですか?」

「爆発したときの被害を減らすためよ。広場だと通行人を巻き込むけど、小屋だと土壁で爆風がさえぎられるからね。犠牲者は私たちだけで十分」

ジュリアンは引きつった笑みを浮かべた。

「ソムナリアさんって…ときどきすごいことを言いますよね?」

「ん?これ普通よ?」

ソムナリアは意に介さずにジュリアンを置いて歩いて行き、その後ろをジュリアンが追いかけて行った。

小屋に到着すると、そこにはベルンハルトがいた。

「おう、作業台は用意しておいたぞ」

ベルンハルトは、小屋の中にあった作業台を外に出して、二人を待っていたのだ。

「ありがとうね。…ジュリアン、作業の前に、ちょっと小屋を見てみようか?」

言うが早いか、ソムナリアは小屋に入って、ジュリアンを手招きしている。ジュリアンは指示に従って小屋に入った。

「暗いですね…」

ジュリアンは小屋の中を見回しながらつぶやく。

「そう。細かい作業は難しいでしょう?ここ火気厳禁だしね」

ソムナリアが答えた。そして続けて尋ねた。

「あと、爆発の危険のある作業をする場合、建物の構造はどうなってる方がいいかな?」

ソムナリアの問いかけにジュリアンは間を置かず答えた。

「えっと…天井がなく、屋根が軽いこと、ですね。前後左右だけでなく上にも爆風が及ぶようにした方が、爆風を四散させられるからです」

「おー、えらい。理由は聞かなかったのに言ってくれるんだね」

嬉しそうに褒めるソムナリアの声に、ジュリアンは少し得意そうな表情を浮かべた。

「で、この、作業小屋がそうなってるのよね。あと床を見て」

床は漆喰のようなもので仕上げられていて、周囲に溝が切られている。

「この溝は?」

「マナの回収ですか?」

「そう。よくわかったね。ちなみに、なんで?」

「放っておくと危ないから…ですか?」

ソムナリアは微笑みながらうなずく。

「そう。このへんもよく分かってるんだね。えらいよ。でも放っておくと危ないだけじゃなくて、使いまわしたいっていうのもあるのよね」

「なるほど…」

「さて、外に出よっか?」

ソムナリアが外に出て、ジュリアンが続いた。

外に出ると、ソムナリアはすぐにベルンハルトに尋ねた。

「例の手紙は?」

ベルンハルトが自身のバックパックからケースを取り出し、その中からさらに手紙を取り出した。

「ほらよ」

「ありがとう。じゃあ、準備できたね。これから手紙のトラップ解除を始めます」

ソムナリアがジュリアンに言う。

「はい」

ジュリアンが緊張気味に、やや硬い声で答えた。

「緊張してる? この手紙、危険なトラップに見える?」

ソムナリアの問いかけに、ジュリアンは言葉を発さずにうなずいた。それは同意というより、相槌に近い。ジュリアンの様子を見た後、軽くため息をついて、ソムナリアは手紙を見つめつつ腕を組み、ゆっくりと話を続けた。

「このトラップ、大したことないと思うのよね」

「本当ですか?」

「マナが漏れてるくらいの、いい加減な造りだから。本気で暗殺する気なら、もっと厄介な仕掛けにしてるはず。これはね、不慣れな人には、ちょうどいい練習台になるの」

ジュリアンは少しだけ表情を和らげたが、まだ手紙から目を離そうとしない。

「ジュリアン、いちばんトラップを仕掛けたくなるのはどこだと思う?」

ソムナリアの問いに、ジュリアンはやや驚いたように彼女の顔を見たが、すぐに気づいたように手紙に視線を戻す。

「仕掛けたくなるところは…開けたくなるようなところ、ですね?」

ソムナリアは満足げにうなずいた。

「そう。具体的には、どの辺が考えられる?」

「そうですね…封蝋は確実に危ないですね」

「そう。そうなるよね」

ソムナリアはジュリアンの肩を軽く叩いた。

「それでいいよ。ちなみに、今のは意地悪問題」

「え? なんですかそれ?」

ジュリアンが戸惑って顔を覗き込むと、ソムナリアは口角を上げて笑みを見せた。

「これ、折りたたんだところ全部に仕掛けられてる可能性があるよ」

彼女は手紙の中央を指さす。

「まず、さっきジュリアンが言ってた封蝋。これはほぼ確実に仕掛けられてる」

続けて、左端を上から下へ指でなぞる。

「こういう谷折りになってるところ。ここにマナバッグとウェラバッグを仕込めば、折り目を広げたときにトリガーが引っかかる」

「そうですね…」

ソムナリアはさらに下端、右端、上端と、四辺を順に示していく。

「ここも、ここも、ここも、仕掛けがあり得るよね?」

「…はい」

「で、これをどうするかというと、全部外していく」

「めんどうですね」

ジュリアンの本音に、ソムナリアはどこか感傷を帯びたような、けれど柔らかい笑みを浮かべて言った。

「でもね、少しでも多くトラップを外せば、それだけ暗殺を防げる可能性が高くなる」

「暗殺…」

ジュリアンはその言葉に目を見開いた。重い現実が、初めて胸に落ちたようだった。

「逆に、トラップを作る側は、少しでも成功率を上げたくて仕掛ける。これは命のやり取りなんだよ」

眉をひそめたまま、ジュリアンは手紙を見つめ続けている。その様子を見て、ソムナリアはできるだけ優しい声で続けた。

「ここから少し行けば、もう戦場があるでしょ? ジュリアン、魔術士として前線に来てる以上、あなたも人を殺すことになる」

彼女はそっとジュリアンの肩に手を置いた。

「それが、魔術士。いいね?」

「はい…」

ジュリアンは力なくうなずいた。

「じゃあ、ここからはトラップ外しに集中しようね!」

ソムナリアが急に声のトーンを明るくし、勢いよく言った。

「は、はい!」

ジュリアンもつられるように、大きな声で応じた。

ソムナリアは笑顔でうなずいた。

「じゃあ、さっそくだけど…椅子が無いね」

「お、忘れてた!」

ベルンハルトが小屋に向かって駆け出した。

「ベルンハルト、椅子は、私はいらないからね!一脚でいいよ!」

「おう!」

ソムナリアはジュリアンの方を向いた。

「ごめんなさいね。私も忘れてた」

「いえ、いいです。僕も同じようなものでしたから…」

すぐにベルンハルトは椅子を持ってきた。

「ありがとう、作業はジュリアンがするから」

ベルンハルトは、ソムナリアに言われた通り、ジュリアンのすぐ近くに椅子を置いた。

「椅子に座るのは僕だけですか?」

ジュリアンが首を傾げた。ソムナリアも首を傾げた。

「作業は一人でするものよ?三人揃ってこの小さな手紙のトラップを外す?」

「あ…いえ、一人でいいです」

「ジュリアン、観念した?」

ソムナリアの言葉に、ジュリアンは驚いた。一人で危険作業を遂行しなければならなくなったことを認めたくなかったけれども、ようやくあきらめて作業をすることを決めたところだが、その心の動きを見つめられていたように感じた。

「はい…まあ、いちおう…」

「よし、じゃあ、座って」

ソムナリアはジュリアンの顔色は気に留めずに座らせ、彼の後ろに立った。

「まず、これを使おうか?」

マナ感知器を取り出した。一般の感知器は円形のものだが、これは斜め下に一方に中空の棒が突き出ている。

「これ知ってる?」

「はい。斜め下に伸びる棒の穴から入ったマナだけを感知するんですよね」

ジュリアンが自信をもって答え、ソムナリアがうなずいた。

「そう。よく知ってるね」

ジュリアンは、ソムナリアに褒められて悪い気がしていないようで、はにかんだ表情を見せた。ソムナリアはお構いなしに続ける。

「じゃあこれで封蝋を探ってみて」

「あ、はい」

ジュリアンは急いでマナ感知器を手に取り、封蝋付近のマナ流出が無いか探った。

「…あ、でてますね」

「でてるよね。封蝋は後にして、先に手紙の周りも探ってみようか」

「はい」

「じゃあ、周りも探って行って」

ジュリアンは、また感知器を動かしたり傾けたりして、手紙の周囲のマナを探っていった。

「あ、この隙間にマナがありますね」

ジュリアンがつぶやく。

「でしょ?中にマナが入ってるよね。奥にあるか手前にあるかは分からないけどね」

「え?この隙間の入口あたりにマナがあるんじゃないんですか?」

ソムナリアは首を傾げた。

「ん?…なんで分かるの?」

「え?だって感知器が反応してるすぐ近くにマナがあるのですよね?」

ソムナリアは納得したふうにうなずいた。

「あーなるほどね。言いたいことは分かったけど、それ違うよ」

「え?そうなんですか?」

「マナバッグはマナを通さないでしょ。手紙にマナバックと同じ素材を貼り付けたらどうなる?」

「通さないですよね」

「手紙の奥にマナを仕込んでても、隙間に出てくるよね?」

ジュリアンが「あ」と声を上げた。

「そうですね」

「だから、隙間付近か置くかは分からないの。とにかく中にマナがあるのが確定したよね」

ソムナリアはジュリアンの肩に手を置いた。

「長くなるよ?」

「はい…」

ジュリアンは神妙な表情でうなずいた。。

「でも、まずは…封蝋の除去から行こうか?さっそくだけど、どうやったら除去できる?」

「うーん…」

封蝋は折りたたんだ羊皮紙を留めるためのもので、溶かした蝋を留めるたいところに落として、印璽を捺してから、冷やし固めたものである。ナイフで削ぎ取ったりするが、そうすると、封蝋に仕込まれたトラップが発動するのが確実だ。

ジュリアンは封蝋の周囲を観察しつつ、口を開いた。

「僕なら…封蝋の周りを切り取ります。トラップらしいものはないですし」

「じゃあそうして」

ソムナリアは表情を変えずに言う。ジュリアンはうなずいて、封蝋の近くにナイフの刃を押し当てた。

「いいのかこれで…」

ベルンハルトが不思議そうな顔でソムナリアに小声で尋ねた。ソムナリアは腕を組んで立ったまま何も言わないが、ジュリアンからは目を離さない。ぎくしゃくしながらナイフを動かすジュリアンと、それを見守るソムナリア。ベルンハルトは二人を邪魔しないよう、離れたところから眺めることにした。

「ちょっと止まって」

半分が過ぎたあたりでソムナリアが声をかけた。ジュリアンが手を止め、顔を上げてソムナリアを見た。

「こっち見ないで。手紙を見てて」

「はい」

ジュリアンは言われた通りに、手紙に顔を向けた。

「封蝋は何のために付けてる?」

「折りたたんだ手紙が開かないようにするのと、誰がこの手紙の封をしたか分かるようにしてます」

「そうよね。封蝋の役割の一つに、手紙が開かないようにするのがあるんだよね?じゃあ封蝋を切り取ったらどうなる?」

「手紙が開きます。そうすると…トラップが発動する…ですか?」

「そう。正解だよ」

ソムナリアはジュリアンの頭を軽く叩いた。

「なので、封蝋を取り除いた後に重りを乗せようか?」

「先に乗せるのはダメですか?」

「不用意に力を与えたらダメだよ」

ソムナリアが諭した。

「そうですね…」

ジュリアンは手紙を見つめたまま軽くうなずいた。

「じゃあ重りを見つけてくるから、切り取りを進めてて」

「はい」

「それから、手紙が開かないように指で押さえてね」

「ベルンハルト、探すの手伝って」

「おう」

ソムナリアとベルンハルトは揃って小屋に入った。しばらく探して、結局、ソムナリアが分銅を見つけて持ってきた。

ソムナリアが戻ってきても、切り取り作業を終えるまで、もう少しかかりそうだった。

「順調に進んでるよね」

ソムナリアが声をかけた。

「ちょっとそこで止まってね。重りを乗せるね。動かないでね」

そう言うと、ソムナリアは、ジュリアンのすぐ右隣に立って、身体を屈めて手紙に腕を伸ばした。

ジュリアンがちらりと右隣を見ると、ソムナリアの顔がすぐ近くにあって、急いで顔の向きを戻した。

ソムナリアの指が、ジュリアンの手紙を押さえる指に及んだ。

「こっちの親指はしっかり押さえて。いい?」

そしてソムナリアの指は、ジュリアンの人差指に動いた。

「こっちの人差指は、手紙から離して」

ジュリアンが指を離すと、すぐに200グラム程度の分銅が置かれた。

「次に親指ね」

ジュリアンが親指を浮かせると、すぐに分銅が置かれた。

「これでいいね」

ソムナリアが立ち上がった。ジュリアンは、隣にあったソムナリアの顔が離れていくのを感じた。

「とりあえずこれで動かないけど、ジュリアン、これ、一人で作業してたら、できた?」

「あ…いえ…できなかったです」

ジュリアンはうなだれた。

「でも初めてだったら、普通はできないからね。うなだれるほどじゃないよ」

ソムナリアはジュリアンの肩にてを添えた。

「経験を積んで、気を付けなきゃいけない点を知っていけば、たぶんもっと慎重になれるよ」

「はい」

「こうやってミスするのも経験だよ?」

「はい」

「さ、続きをしよう!」

ソムナリアはジュリアンの肩を軽くニ度叩いてから離れた。

ジュリアンは一度深呼吸をして、再び封蝋外しに取りかかった。

しばらくすると、封蝋外しが概ね終わった。

「うん、いいね、きれいに切り取れたね」

ソムナリアは明るい声で言った。

「切り取れたのはいいけど、封蝋は絶対にひっぱらないでね」

ジュリアンが眉をしかめる。

「あの…まさか封蝋自体でなくて、今切り取った羊皮紙にもトラップ…ですか?」

「その可能性はあるでしょ?可能性がある以上、慎重に見ないといけないの」

ジュリアンの顔が曇った。

「これ、ずっと続くんですか?」

「そうだよ?」

ソムナリアは即答した。

「トラップ外しは、ずっとこんな調子だよ。トラップの可能性があると感じた必ず確認して、絶対大丈夫にならないと次に進まないようにするの。まずは、ゆっくり引っ張って。手ごたえがあったらすぐに止める。いい?」

「はい…」

「それから、魔術の力の源のマナが入った小袋が見えたらストップ。マナの発動を助けるウェラが入った小袋が見えてもストップ。糸とかみたいなトラップに使われてそうなものを見つけてもストップ。何が見えてもストップ。いい?でないと、大怪我するかもよ」

「はい…」

ジュリアンが封蝋を引き上げはじめた。封蝋の下にくっついている羊皮紙のさらに下に、ソムナリアが言った「トラップに使われてそうなもの」などがないかをこまめに確認しながら、ゆっくりと引き上げていく。

「ん-と。ちょっと止まって」

言われて、ジュリアンは手を止めた。ソムナリアがジュリアンの肩越しからではわかりにくいのか、ジュリアンの椅子のすぐとなりに立って、腰を曲げたり、頭を下げたり上げたりして、何度も確認した。その間、何度もソムナリアの髪がジュリアンの顔をかすめていた。ジュリアンは、困った表情をしたまま、手を動かさずにいた。

少しして、ソムナリアが「うん」とつぶやいた。

「ジュリアン、大丈夫だよ。その封蝋、ちょっと離して置いといて」

「はい」

ジュリアンは指示通りに、羊皮紙のはりついた封蝋を手紙から離れたところに置いた。

「ちゃんと離しておいてね。封蝋にマナバッグがあるはずだからね。他のトラップから誘爆したら困るでしょ?」

「そうですね。ちゃんと離しておかないといけませんね」

「じゃあ次、一番上の羊皮紙に行くよ」

「はい」


ソムナリアは、妖しげに微笑んだ。

「ここからが大変よ?」

「そうなんですか?」

ジュリアンが不安そうに尋ねる。

「やり方をまず言うね。折り目を少し開いて、マナバッグがないか、トラップを発動する糸とかがないかを確認する」

「はい」

「折り目を開くときは上から見て、確認のときは横から見ること。横から見ると、マナが暴発したときに目が損傷する場合があるから」

「はい…こわいですね」

「そりゃあ、今回のはともかく、手紙トラップって暗殺用だからね。少し開いて、見て、また少し開いて、を繰り返すの。えんえんと」

「はい…」

ジュリアンは困惑しているようだ。

「分からないかぁ…」

ソムナリアは腰に手を当てて首を傾げている。

「まあ、分からないよね。やってみたらわかるよ」

「はい。じゃあ始めていいですか?」

「始めて」

そう言うと、ソムナリアは小屋に向かった。

「ソムナリア、椅子か?」

ベルンハルトも小屋に向かいながら、ソムナリアに尋ねた。

「うん」

「じゃあ待ってな。俺が持ってくる」

ソムナリアは足を止めた。

「ありがとう」

すぐにベルンハルトは椅子を持ってきた。ソムナリアがそれに座る。すぐ隣に自分用の椅子を置いて腰かけた。

「ベルンハルト、寝てていいよ」

ソムナリアがジュリアンの方を見ながらつぶやいた。

「昼間っからか?」

「かなりかかるからね。こういう時はできるだけ楽をして、後のことに備えるのがいいと思う」

「ああ、そうだな」

ベルンハルトは目線を上げて、雲の動きを眺めることにした。

暖かい日差しの中で、ジュリアンは懸命に手紙トラップに取り組んでいるが、その後ろの二人は、小鳥の声を聞き、雲を眺めている。

「眠くなってきた…」

ソムナリアが呟いた。

「おい、本気かよ!?ジュリアンが一生懸命やってるのに寝るのか!?」

ベルンハルトが起こそうと肩を揺すりながら続ける。

「ソムナリア、お前は昨日は久々に安心して寝られるって言ってただろ?マナ感知器が作動してた理由が分かったからさ」

「うん…」

ソムナリアの目はいまにも閉じられそうだ。

「ジュリアンをちゃんと見てやらないと…」

「まあ、大丈夫だよ…」

「もし爆発したらどうするんだ?」

「まあ、大丈夫だよ…」

ソムナリアが「大丈夫」としか言わないことを不審に思って、ジュリアンには聞こえないように、ソムナリアに耳打ちした。

「もしかして、答が分かってるのか?」

ソムナリアは目を閉じて、うなずいた。

「眠いのは、昨日の夜に、あの手紙を全部調べたのか?」

再びソムナリアはうなずいた。

かこで突然ジュリアンが、手紙と戦いながら尋ねた。

「お二人とも、どうしたんですか?」

ベルンハルトが答える。

「あ、どうもしないよ。続けてて」

「はい…」

ジュリアンは集中していて、あまり気の無い返事を返した。

「こっちの話に気付いてないようだな」

ベルンハルトがさらに耳打ちをする。

「………くぅ」

ほぼ寝てしまったソムナリアを、ベルンハルトが肩を激しく揺さぶって起こした。

「とりあえず起きろ。このままだと椅子から転げ落ちるぞ。もう寝るなとは言わないから、どこかで寝ころぶんだぞ」

「うん…」

ソムナリアは、椅子から立って、すぐ近くの草むらに寝転んで、目を閉じた。

「すごいところで寝るんだよな…」

ベルンハルトは、感心とも皮肉とも取れることを言いつつ、気持ちよく眠るソムナリアを見た。

「まあ、ソムナリアが大丈夫って言うなら、大丈夫なんだろ」

ベルンハルトは再び雲を眺めることにした。

ジュリアンは、必死に手紙のトラップ外しに取り組んでいて、工具を手に取って、机に置いて、隙間を覗き込んで、また工具を手にとるのを延々と続けている。そのたびに、カチャン、カチャン、金属音が聞こえる。

少しはなれたところでは、ソムナリアが寝息をたてている。

近くの木から小鳥の鳴き声が聞こえたり、そよ風でやさしく梢が揺れる音が聞こえる。

ベルンハルトは、その中で「平和だな」と呟いた。

「ふう…」

大きなため息が机から聞こえてきた。ベルンハルトが目を遣ると、ジュリアンは自らの肩をさすりながら首を回していた。

「どうした?一つ目が終わったのか?」

ベルンハルトが椅子から立った。

「はい。一つ目の折り目が終わりました」

「あと…いち、に…あと三つあるからな。頑張れよ」

「はい!」

ジュリアンは、元気よく返事をしたあと、辺りを見回した。

「あの、ソムナリアさんは?」

「あー、寝てるよ」

ベルンハルトが指をさした先に、ソムナリアが寝息を立てている。時々、そよ風が彼女の髪を撫でていく。

「寝てていいんですか?」

ベルンハルトは、笑いながらジュリアンの背中を平手で叩いた。

「いいんだよ。お前のこと信用してるんじゃねえのか?」

「そうなんですか?」

「知らねえけど、そうなんじゃないかな」

ジュリアンは、自信をもった表情でうなずき、再び手紙に向き合った。

対して、ベルンハルトは自信の無い表情になっている。極力ジュリアンに見えないよう彼に背を向けている。

(実際は、最後の折り目までトラップがないだけなんだがな。言わない方がいいよな)

ベルンハルトも椅子に座った。

二つ目に差し掛かりジュリアンはトラップ調査のペースを上げていった。その間、ベルンハルトは空をぼんやり見つめ、ソムナリアは相変わらずすやすや眠っている。

「二つ目終わりました!」

ジュリアンが大声でベルンハルトに呼び掛ける。ベルンハルトは、この声をやや不愉快に感じたようだ。

「分かったよ。聞こえるから、もう少し声を抑えてくれ」

「あ、申し訳ありません」

ジュリアンは、申し訳なさそうに頭をすくめて、再び机に向かった。ベルンハルトが立ち上がり、ジュリアンの後ろまで歩を進めた。

「なあ、ジュリアン、二つ目は早くなったな」

「ありがとうございます。コツがつかめてきたようです」

ジュリアンは手紙から目を離さずに答えた。

「うるさくてもいいから、三つ目が終わっても、同じように教えてくれ」

「え、うるさくしていいんですか?」

「ああ、いいよ」

ベルンハルトは、うるさい声を許したのではない。三つ目が終わって四つ目に取り掛かるときにソムナリアを起こそうと思っていて、そのタイミングを逃さないためでしかない。

うしろめたさを感じながら、また椅子に座った。

そして、ジュリアンがもくもくと任務を遂行している間、ソムナリアは気持ちよさそうに眠っていた。ベルンハルトは、山を眺めて、影の付き方が変化していっているのを感じて、改めて「太陽って動いてるんだよな」と感心していた。

そのうち、ベルンハルトもうとうとし始めたころに、ジュリアンが叫んだ。

「三つ目終わりましたよ」

ジュリアンは、三回目だけあって、あまり肩をさすることもなく、平常よりやや大きめの声でベルンハルトに呼び掛けた。ベルンハルトは、そんなに大きな声ではなかったけれども不意打ちされたために、椅子から転げ落ちそうになったが、なんとか持ちこたえた。

「おう…終わったか…」

起き抜けの声で応えた。しかしここで、次は四つ目だと思い出した。

「そうだ、ソムナリアを…おい、起きろ」

「ん?なに?もう…!」

ソムナリアは、ベルンハルトに揺さぶられて、あからさまに不機嫌な表情で目を開けた。

「ジュリアンが四つ目に行くぞ」

「あ、そうか。ベルンハルト、ありがとう」

即座に引き締まった表情を見せつつ、立ち上がり、ジュリアンの後ろに立った。

「四つ目まで来た?」

「はい」

ジュリアンは封筒を覗き込みながら答えた。

「ここまでトラップは?」

ソムナリアがジュリアンに尋ねた。

「トラップはありませんでした」

「次もないことはないよ?分かるよね?」

やや低い声でソムナリアが言った。

ジュリアンがいつもと違うソムナリアの声に少し驚いて、振り返ろうとした。

「手紙から目を離さないで」

ソムナリアが注意する。

「あ、はい」

ジュリアンは机に向かいなおした。

「いい?こんどこそマナがあるのよ。十分に気を付けて処理しなさい」

「はいっ」

ジュリアンが手紙を見ながら応答した。

それから少しずつジュリアンが作業を進めたが、突然-

「ストップ」

ソムナリアが落ち着いているが早口で言った。ジュリアンが手を止める。

「手は動かさないでね。そのまま聞いて」

「はい」

ジュリアンは、手も動かさず、うなずいたりもせずに言った。

「何か見えるでしょ?」

「え?」

ジュリアンが覗こうとした。

「待って」

ソムナリアが静かに命じた。ジュリアンは動きを止めた。

「ちゃんと広げてから覗くのよ。こういう時こそ基本動作を大切にしなさい。いい?」

ジュリアンはうなずいた。

「はい」

「よし。じゃあ広げて…そう。それから覗いてみて」

「あ…ありますね」

「そう。それを取り除くの。できそう?」

ソムナリアに問われて、ジュリアンは黙り込んでしまった。

「できなさそうに思っちゃったかな?まあ初めてだからしょうがないんだけど、分からないかはといって、誰も許してくれないからね」

「はい…」

ジュリアンはうなずいた。さらにソムナリアが続ける。

「前線に出たら、だいたい魔術の専門家は自分一人しかいないからね。全員に期待されるよ。そのプレッシャーにも耐えないといけないの。戦場の魔術士はそういうお仕事。いい?」

「はい…」

ジュリアンはあまりよく分からないまま肯定した。

「まあ、今はトラップの外し方を考えようね」

「はい」

ジュリアンがうなずいたのを見て、ソムナリアは続ける。

「先に、中からマナが少しずつ出てることは言ったよね?」

「はい」

「ということは、ウェラが出たらすぐに火を噴いたりすることになるよね?」

「そうですね」

「ということは、トラップはどうなってる?」

ジュリアンはすぐさま口を開いた。

「何かをきっかけにしてウェラが出るのですね?」

「そう」

ソムナリアが満足そうにうなずいた。

「じゃあどうしようか?」

口許に少しだけ笑みを浮かべて、ソムナリアがたずねた。

ジュリアンは腕を組んで、首をひねった。

さっと強めの風が二人の髪をなでていった。ベルンハルトは、二人を眺めながらあくびをした。

しばらくして、ソムナリアが「分からない?」とたずねた。ジュリアンは、申し訳なさそうな表情でうなずいた。

「じゃあ、いちど原則論、はじめにやったことから思い起こしてみるといいかもよ?」

「原則論…ですか?」

「そう。マナとウェラがどうなったら反応する?」

「はい…えっと…マナとウェラが接触すると、反応します」

とまどいながらジュリアンは答えた。

「そう。ちょっととまどったよね?うん、当たり前すぎるものね」

ソムナリアがジュリアンの頭を撫でた。

「逆に言うと、どうなると反応しない?」

「ええっと…接触しなければ反応しません」

「だよね」

ソムナリアがうなずいた。そして続ける。

「そして、今、マナが漏れ出ているよね?絶対避けないといけないのは?」

「ウェラを漏らすことですね?」

「そう!その通り!」

「じゃあ、ウェラの入った袋があるから、それを取り除けばいいんですね?」

「と思うよね?違うよ?」

ソムナリアが意地悪な微笑を浮かべた。ジュリアンが驚愕の表情を見せた。ベルンハルトも、ソムナリアの言葉に驚いて「ほお」と声を出した。

何が間違ってるのか、まだ分かっていないジュリアンを見て、今にも吹き出しそうなぐらいまで込み上げているのをこらえていた。

ベルンハルトはそれを見て、苦笑しながら立ち上がった。

「なあソムナリア!意地が悪いな。ジュリアンが困ってるじゃないか」

近づいてくるベルンハルトに手を振って「困らせるつもりはないのよ」と言った。

「でも現に困ってるじゃないか?」

「まあ、結果的には困らせたんだけどね」

ソムナリアは、肩をすくめた。

「でもね、ウェラと接触させないようにしましょう、というのは魔術学校の教科書の話なの。それも必要なんだけど、それだけじゃダメなのよ」

ソムナリアが言った後、ベルンハルトが思ったままのことを言った。

「いや、困ったジュリアン君を見て、楽しそうな表情してたぞ」

図星をつかれたようで、ソムナリアは、苦笑しながらそっぽを向いた。

「まあ、魔術教室の入門者相手だったら、こんな話なんかできないだろうからな」

ベルンハルトのフォローに、ソムナリアは、そっぽを向くのをやめて、何度もうなずいた。

「そうなのよ。魔術教室のお仕事もいいけど、これぐらいの話ができた方が楽しいのよ」

「でも困らせるのは、そろそろやめた方がいいと思う」

「そうね」

ソムナリアがうなずいて。ジュリアンの方を向いて、優しく微笑んだ。

「ジュリアン、逆に考えてみて」

「え?逆ですか?」

ジュリアンには、まだ分からない。さらに頭を捻る。

「えっと…上下を逆に…じゃないですよね」

ジュリアンがソムナリアの顔を覗き込みながら訊ねて、笑いをこらえる表情でさがさらに歪んだので、間違えたことを言ったのを悟った。

「じやあ…ウェラ袋でなく、マナ袋を取り除くんですか?」

同じようにソムナリアの顔を覗き込みながら訪ねた。ソムナリアの眉が少し動き、口から「お」という声が少しだけ漏れ出た。これでジュリアンは確信した。

「そうなんですね?でも理屈がまだ分からないです…」

ジュリアンは、また腕を組んだ。ソムナリアは、それを見守っている。少しすると、ジュリアンが口を開いた。

「マナが漏れてるから、ウェラ袋の取り外しで潰したら反応するけど、マナ袋の取り外しでマナ袋を潰したとしても問題ないから…ですか?」

「うん、私の顔から逆方向に答を見つけたけど、その通りよ」

ソムナリアはうなずいた。その隣でベルンハルトは「余計なこと言うなよ…」とら聞こえないような小声で突っ込んだ。

「じゃあ、マナを取り除こうか?」

ソムナリアは間髪いれずに命じる。

「はい!」

ジュリアンも力強く答えた。

「じゃあ、まずはウェラ袋の位置を確認しよう。どこにあるか分かる?」

ジュリアンがピンセットで隙間を少し広げた。

「ちょっと止めて」

ソムナリアが止めさせて、すぐにジュリアンの顔のすぐ近くに顔を持っていき、手紙の中を覗き込んだ。ジュリアンは手を動かさないようにしていたが、さらに自分の顔をソムナリアの反対方向に向けるようにした。ベルンハルトは二人の後姿に目を遣り、そのまま凝視し始めた。

「ジュリアン、今日一日で、結構ピンセットさばきがうまくなったんじゃない?」

「ありがとうございます」

照れくさそうにジュリアンが言う。

「そのために止まってもらったんじゃなくて、中、どうなってるか見て」

せかされて、ソムナリアの顔の位置を気にしながら、手紙の中を覗き込んだ。

「はい、二連になってる袋のうち、手前がウェラで、奥の方がマナです」

ソムナリアの両方の口角が少し上がった。

「ちなみに、どうして手前がウェラだと思ったの?」

「マナ感知器で調べたら、手前はマナ袋ではなかったです」

「あ、先に調べちゃってたのか…それでいいよ、えらいよ」

ソムナリアはすぐ近くにあるジュリアンの頭に手を乗せて、軽く二度ほど叩いた。

「じゃあ、奥の袋が標的になるけど、気を付けることは?」

ソムナリアの質問に、ジュリアンは真意を測りかねていた。

「え?マナ袋は潰してもいいんですよね」

「マナはいくら出てもいいけど、ウェラと反応させたらダメだよね?手前のウェラ袋にトラップがあるのよ」

「あ…不用意にマナ袋を外そうと奥にまで器具を入れたら…手前のウェラ袋に仕掛けられてたトラップが作動するんですね?」

ジュリアンの説明にソムナリアがトラップに視線を固定したままうなずいた。

「そう。私たちは一つのことに注目しすぎると、他のことを忘れがちになるのよ。私も他人に言えるようなものじゃないけど。注意してね」

「はい」

ソムナリアが体を起こして、振り返って少し離れた。ベルンハルトは、ソムナリアに悟られないように二人から目線を反らせた。ソムナリアはベルンハルトの目線に気づかずに、ジュリアンの斜め後ろに立ち、彼の背中を軽く叩いた。

「よし。じゃあ、マナを取り除こう。どうやって取り除く?」

「え?マナ袋を取り除くんですよね?手前のウェラ袋をつぶさないように…」

ソムナリアが腕を組んで、意地悪そうな笑みを浮かべている。

「本当にそれが最善の方法かな?」

「え?違うんですか?」

「うん。違うよ」

ソムナリアは「もっと悩め」と言わんばかりの意地悪そうな笑みをたたえたまま立っている。ベルンハルトは二人の後姿を見ながら「もっと悩め」と思った。

「あの、すみません、分かりません」

ジュリアンが首を傾げたまま、あきらめた。

「投げ出すのが早いよ」

ソムナリアは腕を組んだまま動かない。視線はジュリアンに向けられたままだ。

たまらず、ジュリアンはベルンハルトの方に、助けを求めるつもりで目を遣ったが、ベルンハルトは全く違う方に視線を移した。

「あの…本当に分からないんです」

ジュリアンがおどおどと述べ、ソムナリアは微笑んだまま口を開いた。

「そんなに難しく考えないで。もう一度整理して考えて。今、ウェラはどうなってる?」

「袋に入って出てきません」

「マナは?」

「ウェラと同じで、袋に入っていて出てきません」

「ん?本当?」

ソムナリアは大げさに首をかしげて尋ねた。ジュリアンがあわてて訂正する。

「あ…えっと、少しずつ漏れ出てます」

「だよね。多分放置して置いたら、そのうちマナがなくなりそうだよね」

「そのまま待つんですか!?」

ジュリアンが驚きながらソムナリアに問いかけた。これには苦笑を禁じ得ない。

「司令官に一か月ぐらい待ってもらえるならそうしたけど、すぐにトラップ解除をしたかったから君にトラップ解除をまかせたんだよ?」

「あ…そうでしたね」

ジュリアンは、ばつが悪そうに頭を下げた。

「で、答は何だと思う?」

「袋を外さないんですよね?」

「少しずつ聞きだそうとしないの」

ソムナリアが困った表情で諭した。

「はい、すみません…」

ジュリアンは、手を止めたまま考え始めた。「マナを取り除くのは間違いない…」と呟いて首を傾げた。そして「でもマナ袋は外さない…」と呟きながら頭を横に振った。さらに「放置しないんだよな…」と呟いて、ため息をついた。

そして「あ!」と声を出した。

「マナ袋に残ってるマナを吸い出すんですね?」

ジュリアンが笑顔で尋ねた。ソムナリアはうなずいた。

「そう。その方向であってる。私は、マナ袋に穴を開けて、外から息を何度も吹き込んでマナを飛ばすといいかなと思うけどね」

「その方がよさそうですね。…はい。やってみます!」

ジュリアンは俄然やる気が出たような調子で言った。

「ちゃんと感知器で様子を見ながらやるのよ」

「はい!」

ジュリアンが、いちど額の汗をぬぐってから、最後の作業を始めた。ソムナリアはジュリアンのそばで作業を見つめている。ベルンハルトが椅子から立ち上がって、二人の後ろに立った。

「そろそろ終わりそうか?」

後ろからソムナリアに尋ねた。

「うん。終わりそう。思ったより早かったと思う。日没ぐらいまでかかるかなと思ってたから」

「ジュリアンは優秀なんだな。それで、トラップを外した後はどうするんだ?」

ベルンハルトに尋ねられたソムナリアは視線を動かさないまま口を開いた。

「この後は、ジュリアンに、この手紙と最初に外した封蝋とを、司令官邸に持って行かせるつもり。トラップが無くなった後は魔術士の仕事じゃないからね」

「ジュリアンに行かせるのか?」

「うん。司令官付魔術士なんだから」

「そうそう、そうだったな。昨日の話だよな。すっかり忘れてた」

ベルンハルトは苦笑した。

ほどなくして、マナの吐き出しを終えて、ジュリアンが達成感で笑みがこぼれる顔をソムナリアに向けた。

「無事にトラップ解除が完了しました!ソムナリアさんのおかげです。ありがとうございました!」

「えらかった。思ったより早かったし。ばっちりだったよ」

ソムナリアもつられて笑顔になって、ジュリアンの肩を叩いて、健闘をたたえた。ベルンハルトは二人から離れて、黙って無表情で二人を眺めていた。

その後、ソムナリアがジュリアンに司令官邸に持っていくように指示した。

「え?ソムナリアさんは行かないのですか?」

「もちろん行かない。後片付けがあるし。あなたは早く司令官に報告に行って」

「…はい」

あまり納得がいっていなかったが、ジュリアンは手紙と封蝋を持って試験場を立ち去った。

残された二人のうち、ソムナリアから話し始めた。

「さて、後片付けをしよう。終わったらごはんだね。おなかすいたー」

「ああ、さっさと終わらせよう」

ベルンハルトがようやく生気を取り戻した。


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