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封魔5


『まず初めに…。俺の名前は“矢車千里”。死の破滅…貴方に名前はありますか?』


『名前はないな。死の破滅と呼ぶがいい』


『わかりました』


 そうして対話は緩やかに始まった。


『まず初めに貴方には破滅として動く意思はありますか?』


 勇者はすぐに話を切り込む。


 勇者にとって探り合いは難しかったようだ。


 死の破滅は気軽に答えた。


『“ない”』


『っ!それは本当ですか?』


『ああ』


 勇者は死の破滅に聞き返す。


 勇者にとって、いや勇者の仲間を含めた勇者一行にとってその答えは驚きを感じたらしい。


 勇者は話を続ける。


『なぜか聞いても?』


『ああ。私は人間が好きでね。その生活を見るのが好きなんだ』


『っ!じゃあ!じゃあなぜ協力してくれなかったんですか!?人間は破滅によって大幅に数を減らしました!それが少しでも減ったかもしれない!貴方が協力してくれれば!』


 勇者が激高すると死の破滅は端的に説明した。


『出来なかったんだよ』


『な!?』


『破滅はそれができないようになってるんだ』


『…』


 死の破滅は説明を続ける。


 破滅は世界に作られたこと。


 破滅とは世界の自傷行為だということ。


 世界に作られたことによって指示されたことをこなさなければ消えるか他の破滅に成り代わってしまうこと。


 大っぴらに人間に味方をすると人間の味方になり得る死の破滅が人間の敵になってしまっていたかもしれないこと。


 だから破滅としての仕事として死の領域を作ることで間を極力倒さないように破滅の仕事をしたこと。


 だから人類の破滅討伐手伝えなかったこと。


『そうだったですか…』


『そうすることで七つの破滅は六つの破滅になり、私が別の破滅になってしまったときよりも被害は少なくなってるはずだ』


『だから他の破滅は人類への攻撃が苛烈だったのですね』


『ああ。だが元の性格もあんなものだったと思うぞ』


『そうですか』


『勇者には苦労をかけたな。すまなかった』


『いえ…。なら今は大丈夫なのですか?』


『ああ。今は他の破滅の力を取り込んだからな』


『貴方も他の破滅と同じように力を増しているってことですか?』


『そうだ。この力で破滅の仕事を無視しているし、他の破滅に成り代わることもなくなった』


『なるほど。その力で貴方は何を為しますか?』


『そうだな…。先程も言ったが私は人間が好きだ。人間の営みを見たい』


『ですが、その破滅の力は人間の世界には大きすぎる』


『そうか…』


『ええ』


 勇者がそう言うと死の破滅はどうするか考え始めた。


 考えてる内にあることを思いついた。


 死の破滅は勇者に質問する。


『勇者よ。私の願いは先程も言ったように人間の営みを見たいというものだがお前には望みがあるのか?』


『望み…ですか?』


『ああ。その願いによってここまで破滅を倒してきたのではないか?』


『俺の願い…』


 死の破滅の問いに勇者は深く考えた。


 勇者の仲間た不安そうな顔で勇者を見る。


 勇者が口を開いた。


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