プロローグ
「うーん。これはここで、今回は見送りだな」
俺はいつもの仕事を終わらせると空いた時間で家事をやる。
その後に趣味をする。
それが俺の日課だが、今日はいつも遅い妹の美優が早く帰ってきた。
「ただいま!」
「おかえり〜、どうしたんだ?美優」
「お兄ちゃん!今日はアレだよアレ!だから早く帰ってきたんだー!」
「そういえば今日だっけ…?楽しめよ~」
「うん!じゃあねぇ~」
「おーう。……はぁ、いいなぁ…。いや!ないものは仕方ない!今、あるものを楽しもう!…よし終わった!」
俺は頭を振ると、一旦頭の中からその考えを追い出して、家事に集中する。
家事が終わればゲームの時間だ!
気分を切り替えるために、今日は剣聖100連勝負をやろうとVR空間に移動すると先客がいた。
VR空間はフレンドのところにも行けるのだ。
「やぁやぁ!親友くん!実はね「あー疲れたな〜早く帰らないと妹も待ってるしな~!」待って待ってお願い〜!ここ、VR空間!ゲームしようとしてたでしょ〜!」
我が親友のアラマキが、VR空間のホームで変なことを言おうとするから、つい無視しようとした。
これも日頃の行いのせいだ。うん。
「何だよ。お前の場合やることが変だからな。あんまり聞きたくないんだけど?」
「親友くんにもいい話だって!ね!これ!」
そう言ってコミカルな動きで取り出したのは、最近発売された「あらゆる可能性を追求せよ!」が謳い文句のVRMMOだった。
「それって…「そう!今、話題の超絶人気沸騰中のあの!VRMMO!β版で話題を呼び!初回出荷分は見事売り切れ!次回の発売が待たれている!一世を風靡しているVRMMOだ~!」………自慢か?自慢だよな?煽ってるよなぁ?β版に応募して落ちて!正規版すらも抽選で落ちた!俺に対する煽りだよなお前!?」
「違うって!いい話って言ったでしょ!はい!これ!」
そうやって投げ渡されたのは話題に出てたあのVRMMOだった。
「本物かこれ?…本物だこれ!どうしたんだよこれ!」
データを見てみると本物だった。
これを俺に渡してどうするつもりなんだ?
「偶にでもいいから、一緒にこれで遊ぼうよ!それが見返りー!」
「これマジでどうやったんだよ?」
「実は私はβ版のテスターだったの!それでこれは抽選で当たったものなのだ!」
「なるほど、本当にありがとう。正直、煽られてるって思ったときはゲームでボコボコにしてやるつもりだったがこれは本当にありがたい。お前にしっかり感謝して遊ばせてもらうわ!」
「怖いこと言わないでよ〜!ちゃんと感謝してよ~?」
「おう!」
「じゃあ、キャラメイク頑張ってね~!」
そう言って我が親友はこのVR空間から消えていった。
「……っておい!これだけ渡しに来たのかよ!まあいいか。だけどこれをやるにはまず色々やることがあるな。一旦、ログアウトするか」
ログアウトしたあとは一旦、家族からの連絡が来てないかを見た。
その後、自分の頭の中に作っていた予定表を変えることにした。
「あのゲームができるってことは、今までのは一旦置いとくことになるな」
そうやって呟いたあと、VR空間に戻りキャラメイクを始める準備をした。
「ああ、楽しみだ。俺がどこまで行けるのか?世界がどこまで広がっているのか?本当に楽しみだ」
そうやって俺はデータ化されたVRMMO――Endlessly Possibility Online――を見て笑みをこぼした。