25 イチャイチャ
◇
「王様、もう帰ってたんだね。アリス様とイチャイチャしてたの?」
「イチャイチャって……ミサ、君はどこでそんな言葉覚えたのかなぁ? 俺はそんな子に育てた覚えはありません」
「王様に育てられた覚えもありません。だって王様、わたしを生み出す時にアリス様を想像してたでしょ? 他の皆と違って前の王様の記憶が多いんだよね。特にアリス様に関する情報が。二人は恋人同士だったのでしょう? それに、『イチャイチャ』くらい普通だよ」
「バレてた?」
「バレバレだよ。王様がどれだけアリス様を愛しているかすごく良く分かった。わたしの名前だってアリス様の名字から取ったんだよね」
わぁお。全部バレてるんだね、やばー。だって言い訳させてほしいんだけど、あの時の俺はアリスが転生してるって知らなかったんだよ。だってそうでしょ? 普通は自分の恋人が同じように転生してくるとは思わなくない? そんな都合の良いこと中々ないよ。
名前もアリスって名前にしたら余計に辛くなっちゃうかもしれないと思って、わざわざ深真の方から取ったんだよ。
何に対して言い訳してるのか自分でも分からないんだけど、愛が重いのは自覚してるから放っておいてほしいかなぁ……
「それでどうなの? アリス様とイチャイチャしたの?」
「俺のそういう話って聞きたいものなの? なんの面白みもないと思うんだけどー」
「面白いよ。だって王様、すっごくモテるのに女の子に興味なさそうだもん。それなのにアリス様相手となれば別人のように甘々だよ?」
「そんなことないでしょ。まあイチャイチャしてないよー。ただお話ししてきただけ」
ほんとに話をしてただけだからそう言ったのに、なぜか『なるほど。つまり王様はアリス様とイチャイチャしてきたんだね!』と言われた。
なにがなるほどなのか、俺には全然分からないんですけどー。
「あー! ナギサ様、みーつけたっ!」
「え、ちょっ! ごめんミサ、俺はもう行くよー!」
完全に忘れてたよ。俺は精霊達に追われてたんだよねぇ。それで隠れていたのに、ルーに騒動のことで王都まで駆り出されて、イライラしたから癒されるためにアリスのところに行ったんだ。俺はまだ逃げている途中だったのに油断してたよ。
「あら……王様行っちゃった。もっとお話ししたかったのに残念だね。まあいっか」
ナギサが去って行った後、その場に残されたミサは小さく呟いた。残念だと言うミサの目は言葉とは裏腹に、怪し気な歓喜が浮かんでいたが、その場にいた精霊は誰一人として気付かなかった。
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