18 ナギサが言うには厄病神
◇
「俺ってもしかして厄病神に憑かれてる?」
『それはあまりにも失礼じゃないか? 我が直々に会いに来たというのに。アリサやローランドだって、そなたほどは冷たくなかったよ』
「そう言われましても一年……いえ、この半年で三度目ですよ? 今まではこんなに頻繁に会いに来なかったではありませんか」
もう厄病神に憑かれてるとしか思えないんだけどー。俺に嫌われているのは知っているくせに、わざわざなんの用?
『そなたを祝いに来たのだよ』
「お祝い? なんの話です?」
『深真有栖、だったかな。そなたの最愛の者は。精霊王であるそなたに恋人が出来たのは初めてなのだから、親として祝わぬはずがなかろう?』
「結構ですよ。それに親と言えるほどの関係でもありません。あなた様の魔力の塊のようなものですからね、私は」
『それで言うなら、そなたが目に入れても痛くないほどに可愛がっている精霊も同じではないかな?』
「……っ、一緒にするな! お前は俺に愛情なんて抱いてないだろ。俺はあの子達のためなら命くらいいくらでもかけられる。それだけ大事にしている。だがお前は俺を道具としか思っていないんだ、良い加減俺の親を語るのはやめろ」
魔力上は親のような存在というだけであって、俺は親だとは思えない。俺如きいくらでも替えが効くと思っているであろうこの人と一緒にされるのは絶対に許せない。
俺はこの人と違って精霊を道具だなんて思わない。俺の配下であって仲間であって、なによりも大事な俺の子だからね。
『そんなに怒らなくても良いじゃないか。自分の荒い口調を聞かれるのは嫌なのではなかったかな?』
「お前相手に気にすることでもないだろ。俺にとってお前はどうでも良い存在なんだ。さっさと失せろ。金輪際俺の前に姿を現すな」
俺はあまり本気で怒ることがないんじゃないかなーって、自分で思うよ。だけど自分の大事なものを侮辱されてまで黙っていられるほど穏やかな心の持ち主でもないからねぇ。
アリス、家族、精霊、今なら一応友人も。俺にとって大事な人を傷付けたり侮辱する奴は絶対に許せない。
誰にでも譲れないものってあるでしょ? 趣味を馬鹿にされるとか、プライドを傷付けられるとか、怒る理由って人それぞれだよね。俺はそれが身内なんだよ。身内がそれに当てはまるってだけで、そんなにおかしなことを言っているわけでもないはず。
なのになんでかな。この人は、世界は笑ってる。まるで俺が言っていることがおかしいとでも言うように。
『ふふ、そなたといると笑い疲れるよ。良く我にそんな態度を取れるね。ある程度は見逃してきたが───身の程と言うものをわきまえた方が賢明だ。痛い目に合いたくなければな』
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