16 精霊王の祝福を
◇
ついさっきまで俺をからかって遊んでいたくせに、少し顔を近付けただけで狼狽えるアリスは、それはもう可愛い。元々エリオットくん達が言うには国全体で有名らしいアリスの美貌だけど、やっぱり身内の前だと少し態度も違う。気を許してくれているのが分かって嬉しいんだよねぇ。
「……あ。アリス、ちょっと目を瞑って」
「え? う、うん」
アリスがこの世界にいるのなら絶対にしておきたいことがある。アリスって女性の平均身長くらいだと思うんだけど、俺からすると大分背が低いからキスをするにはちょうど良いんだよね。
「ナギサ? え……っ! なな、な、な……!」
「ん? なんて?」
「なんでキスするの!?」
「え、嫌だった? それはさすがに傷付くんだけど」
恋人なのにキスを拒まれるとか、ショック以外の何物でもなくない? っていうか、そんなに慌てること? 口付けくらいもう何度もしたことあるんだけど……
「嫌ではないよ!? でも、え、なんで今?」
「んー……ただのキスじゃないよ? アリスってさ、今世は大精霊と人間のハーフなんだから魔力持ってるよね? 俺の魔力を感じなかった?」
「まりょ……あ、たしかに。これがナギサの魔力なの? なんだかすごく温かくて神聖な感じがする」
「祝福したんだよー。これで君になにかあればすぐに分かるし、練習すればアリスは全属性の魔法が使えるよ」
……あ。そういえばセインくんとランスロットくんは二人がハーフだってこと、知ってたっけ? エリオットくんに視線を送ると、『問題ない』と頷いていた。暇だったのか、二人は話に夢中になっているから聞いてなかったみたい。あれ、でも彼の家のカフェに行った時、エルサちゃんとこの話をしたから知ってるのかな? 言及されたことないし、そっちも聞いてなかったのかもしれないけど今後は気を付けよ。セインくん達なら大丈夫だろうけど、他の人に聞かれると騒がれそうなので、一応小声で喋ることにした。
「全属性! それって、転移魔法とかあるの? 魔法がある世界の物語だと定番じゃない?」
「あるよー。転移魔法は地水火風どの属性にも当てはまらない無属性。俺か、俺のパートナーしか使えない魔法だよ」
「わあ! 嬉しい、時間がある時で良いから魔法の使い方を教えてほしいな」
「いーよ。エリオットくんとアリスって、シルフから魔法の使い方を教わったりした? 風魔法なら使えるはずだけど」
純血の精霊ではないから自由自在とまではいかないかもしれないけど、親の一人が大精霊ならかなり自由が利く方なんじゃないかな? ちゃんと練習すれば結構強くなると思うな。
難しくはあると思うんだけど、二人とも器用だからそこは問題ないだろうし、ちょっとでも魔法を使ったことがあるのなら俺が教える時も楽なんじゃないかな。
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