11 愛する彼女と
「それで……有栖、君は? 有栖は、楽しい人生を送ることができた?」
「……もちろんだよ。もっと渚と一緒にいたかったけど、それでも満足だったよ」
「そっか、それなら俺も嬉しい。……あ、ごめん」
今になって気付いたけど、俺は有栖を抱きしめてしまっていた。今はもう恋人ではないのに……
「一応聞いておくよ。俺に気を遣ったりしなくて良いから。俺のことはもう好きじゃない、よね……? 有栖が嫌なら俺はもう、」
「なんでそう思うの? 私、そんなこと一言も言ってないよ。勝手に決めつけないで。私はずっと渚だけが好きだよ。好きで、大好きで仕方なかった。なのに急に会えなくなったのよ? この世界で私が最初にナギサを見つけたのは春の試験結果発表の日。渚は気付いていなかったみたいだけど、私はその時から渚のことを知ってたよ。いつ気付くかなって思っていたんだけど、待ちくたびれちゃって」
春の試験結果発表の日……それって、俺が筆記だけ受けた試験だよね? 気付かなかった。知らなかった。なんであの時俺は……
「……ほんと? 本当に、俺のこと、まだ……」
「大好きだよ。渚こそ好きじゃないなら無理しなくて良いからね」
「大好きに、決まってるでしょ……! 有栖の方こそ、俺がどれだけ君のことを好きか知ってるくせにそんなこと言うんだ? 恋心を自覚した前世から、転生した今までずっと俺の頭の中には有栖がいた。この指輪だって、有栖のことを思い出すから何度も外そうと思った。だけど無理だった。俺は有栖が好きで、大事で、本当に……っ、愛してるんだよ」
「もう……冗談だよ。渚が私のこと大好きなことくらい分かってる。だからそんなに泣かないで?」
それは無理な相談だよ、有栖。有栖が思っている何倍も、俺は君のことを愛しているんだからね。だから、泣かないなんて無理なんだよ。
別にさぁ……俺だって泣きたくて泣いてるわけじゃないんだよー? でも、ずっとずっと会いたくて仕方なかった人だから。彼女の夢を見て、起きた時に全て夢だったのかと絶望して……それを毎日のように繰り返していた。だからこうして顔を見れただけでも幸せで涙が止まらない。情けないことこの上ないけど。ほんとにもう歳かもしれない……絶対涙腺緩んでる……
「でもさ、有栖だって泣いてるじゃん?」
「……気のせい」
「好きだよ、有栖。本当に。今度は絶対に離れないから」
「うん……」
私も、有栖はそう返してくれた。長く恋焦がれていて、でも会えないのだと、そう思う度に絶望して。だからこれは俺にとって都合の良い、ただの夢なんじゃないかって思ってしまう。
そんな俺の想いを感じ取ったのか分からないけど、有栖は必死に涙を堪えながら俺と目を合わせてくる。
「ゆめ、なんかじゃ……ないからね……!」
「ふふ、知ってる」
感動の再会……かは分からないけど、いつまでもこんな顔を見せてはいられない。俺らの傍には友人達がいる。さすがに忘れてはいないよ。空気を読んであまりこちらを見ないようにはしてくれているけれど。
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