69 新たに生み出される精霊
精霊王としては久しぶりに、渚としては初めて精霊を生もうか。俺のやらなければならないことがはっきりした今がちょうど良い。今まで通り自由でいるつもりだよー。だけど、これが精霊王の仕事だって言うのならたまに、たまーになら精霊王の役割を果たしても良いかなぁ。さすがに常にやり続けろとまでは言われないでしょ。
俺の側近的な立場にはルーがいる。もう一人くらい側近がいても良いだろうから水の中位精霊を側近二人目として作ろっかな。裏の仕事を任せるつもりだから、俺や他の精霊と関わることはほとんどないだろうけど。
両手を胸の前に差し出して一人の女の子をイメージする。性格や容姿までは決められないけど性別やイメージ程度なら決められる。俺がイメージすると同時に、透き通った水の魔力が元になった一人の女の子が生まれた。水の精霊らしく青色の髪と瞳を持った可愛らしい子。
「はじめまして、俺はナギサだよ。君の名前は……ミサ。ミサにしよう」
「こんにちは! あ、今はこんばんは、かな? 王様、これからよろしくね」
「……うん、よろしくね。これから君には俺の側近的な立場になってもらうよ。ルー」
「はい」
似てる………じゃなかった。禁書室の中で精霊を生んで中を見られては困るから、一応私室に転移してから彼女を生み出した。ミサと言う名を付けたのにはちゃんと理由がある。女の子にしたのにもね。
「ルー、この子はミサ。たった今俺が作った子だよ。君と同じく側近みたいな立ち位置にするけど、主に裏の仕事を任せるからあまり関わることはないと思う。だけど仲良くしてね」
「分かりました。ルーと申します。よろしくお願いしますね」
「王様からの記憶であなたのことは知ってるよ。ミサです。よろしくね」
うん、相性は悪くなさそう。これなら大丈夫かなー?
「それじゃあ、あとは好きに過ごしてね。ルーも急に呼び出してごめんね。……リーと一緒にいたんでしょ? 呼び出しておいてこんなこと言うのも何だけど、早く戻ってあげて」
大人の姿だもんね。ちょっと申し訳ない。そう思って伝えると、『では遠慮なく』と一言だけ残して下がっていった。ミサも一緒に出て行ったし、今日の内に彼女の存在は周知されるだろうね。精霊は情報が早いからさー。
「……ちょっと、びっくりしたな。たしかにそういう風にイメージしたけど、容姿や性格はともかく話し方がそっくり………やっぱ辛いね。ずっと一緒だったからさー。俺はもう死んでしまったんだし、どんなに辛くても元の世界に戻ることは出来ないんだけど。でも一番の心残りかな」
家族に会えなくなるのは寂しいものだよ。家族が大事だったから。俺は身内には心からの愛を注ぐ主義なんだよね。だから突然会えなくなれば一年経っても引きずってしまう。
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