67 本当の最強は
「ねぇ……聞きたいことがあるんだけど、精霊王って本当にこれ以上の仕事はないの? みんなが知っていて俺が知らないことはほとんどないけど、記憶が欠けてる可能性があるし……」
「き、聞いたこと……ない」
「おれも聞いたことないな!」
ウンディーネやシルフも同じように頷く。課外授業の話の前に考えていたことを聞いてみたんだけど、やっぱりみんなも知らないかぁ……
「アリサ様やローランド様の代に生きていた精霊はもういないしねぇ……何か引っかかるんだけどなー」
精霊王は実質全種族のトップみたいなものだけど、何の意味もなく強いだけの生き物をこの世界に生み出したりするかな、普通。世界が俺達精霊を創って、その精霊の王を最強にしたのには何かしら理由があると思うんだよ。この異次元の強さが世界にとっては必要ってことだよね。それなのに仕事は他種族と恐らくあまり変わらない。特別な仕事や役割がないとおかしくない?
普通に考えれば何か裏があるとしか思えない。精霊王って欠点も弱点もないに等しいんだよ。俺は俺は転生者だから弱点があるけどさー……
そう考えたらアリサ様やローランド様、あのお二人はこの世界にとって異質な存在なんだよ。何の意味もなく、文字通り最強な生き物がいたら世界は崩壊する。その人が暴走したら誰にも止められないのだから。
……世界がそんな簡単なことも分かってないとは、とてもじゃないけど思えない。
◇
『本当の最強はそなただけだよ、ナギサ。転生前だってそなたは異端児だった。我はいつも同じ強さを持つ精霊王しか創らない。そこからどれだけ力を伸ばすかは本人の努力次第。アリサやローランドは生まれ持った力をそれ以上に伸ばすことは出来なかった。『本当の最強』と言っても、そなたは努力の天才で天性の才能があるわけではない。唯一他と違うのは学ぶことを楽しみ、喜び、努力を苦と思わないその心だ』
世界が直接会話をすることが出来るのは精霊王のみ。それは世界と直接の繋がりがあるのは精霊王だけだから。世界と繋がっているので、精霊王の考えていることは常時世界にも伝わっている。
ただ、ナギサは心を完全に『無』に出来るため、ナギサが嫌なら思考を読むことは出来ない。つまりナギサから伝わってくるのは知られても問題ないと判断した内容だけだ。
『精霊王には特別な役割があるのだと自力で気付いたのは、この世界が出来て以来そなただけ。普通なら長い間伝え続けられている情報を信じるからな。どこをどう取ってもそなたは異常だ。どんな生き物にも弱点と言うものはある。転生前のそなたはすでに化け物以外の何物でもなかった。……転生したらしたでそれに拍車がかかり、化け物の範疇に収まらなくなった。……が、少しでも弱点が出来ただけまだマシだね』
優秀である程常人の気持ちは理解し辛くなるもの。だけどナギサは違う。生まれながらの天才ではないからこそ、常人の気持ちも理解できる。だからこそ───
『──そなたほど、残酷な者は……いない』
◇
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