65 頼りすぎ
さっきまでの騒ぎとは一転、会場はシンと静まり返った。突然の俺の登場に驚いたのかなー? あと、少しだけ圧を掛けたから?
「ナ、ナギサ……様」
辛うじてそれだけ言うとジェソンさん……国王陛下も黙り込んだ。俺は別にこの状況をどうにかしようと思って出て来ただけなんだけどねぇ。そんなに過剰に反応しなくても良いんじゃない?
「ねぇ、ここにいる全員、何で誰も魔法が使えなかったかちゃんと理解してる? あ、心配しなくても君達に危害を加えるつもりはないよ? ただ忠告しておこうと思ってね」
「パニックになっていた、精神が落ち着いていなかったからですか?」
「そうだよ。理由はあと二つある」
王弟殿下、ジェフリーさんだったかな。やっぱりこの人はちゃんとしているみたいだねぇ。
「魔法は精霊の力。祝福でも契約でもその力は精霊のもの何だから、精霊以外が練習もなく使えるはずがない。理由の一つはそれ。二つ目は今回のことを戒めにしてもらおうと思ったんだよ」
「戒め……?」
「うん、戒め。君達は精霊の力に頼り過ぎなんだよ。精霊がこの国から離れたら一瞬で侵略されるくらいにはね。今のように不測の事態が起こっても、すぐに対処したり何かあった時のために対策をしておいたり。人族に限らず、精霊の力を借りているエルフ族や魔族にも言えることだよ。もっと自分達の力で国を発展させるべき。今日のことは偶然だったけど、いずれ同じようなことを体験してもらおうと思っていたから、俺達精霊は消火や被害を抑えるための手助けをしなかったんだよ」
「…………」
「精霊に頼るなとは言わない。同じ国で暮らしているのだから助け合って生きた方が楽だから。でも頼り過ぎるのではなく、自分達の力で何かをするということをそろそろ覚えな。まだ俺達はこの国から離れない。チャンスはあげるけど、あまりに変化がないようなら考え直すからね? ………俺が言いたかったのはそれだけだよ」
クレアちゃんに言ったのと同じようなことを告げると、会場内には重々しい空気が流れた。時間的に夜会はお開きだろうし、そろそろ帰ろうかな。
「俺はもう帰るよ。俺は王族だけに言ったわけではないからね? 何をするにしても、『変化』を望むなら一人一人が意識を変えないと意味がない。成長するための手助けなら喜んでしてあげる。その時面倒でも後々俺達の利に繋がることもあるからさ」
じゃあね、といつも通り手を振って退場する……と見せかけてナイジェルの姿になり、バレないようにクレアちゃん達の所へ戻った。これでも一応今は男爵令息ですからね。先に退場しちゃうと後が怖い。
少しの間何かを考えこんでいたようだけど、王弟殿下に声を掛けられて我に返ったジェソンさんはお開きの言葉を口にした。
「ナイジェル……あんた派手にやりすぎじゃないのかい?」
「何のことでしょう? 私はずっとここで大人しくしておりましたよ。それにしても精霊王様は帰るのが早いですね。大精霊様たちだってまだいらっしゃるのに」
「君の特技は惚けることなんだね。良く分かったよ」
「心外ですねぇ」
口調が少し戻っているよ、と指摘されたので気のせいだと返しておいた。他に誰も見ていないんだから少しくらい大丈夫だよ。
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